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簡単なお話

作者: P4rn0s
掲載日:2026/01/31

誰に頼まれたわけでもない。

背中を押した人間も、保証してくれた人間もいない。

それなのに彼らは、上京した理由を「仕方なく」みたいな顔で語る。


人が冷たい、と言う。

物価が高い、と言う。

空気が悪い、家賃が高い、水がまずい、疲れる、孤独だ、と続く。


じゃあ何で来たんだよ、と思う。

誰かに拉致されたわけでも、仕事を奪われたわけでもない。

「東京に行けば何か変わる気がした」

その曖昧で無責任な期待を、自分で荷造りして、新幹線に乗せただけだ。


東京は優しくない。

それは最初から分かっていたはずだ。

分かっていた“つもり”だった、が正しいのかもしれない。


この街は、努力すれば報われる場所じゃない。

努力しても埋もれる場所だ。

向いている人間だけが、何事もなかった顔で立っている場所だ。


それを、後出しで文句を言う。

「こんなはずじゃなかった」

その一言で、選択の責任を街に押し付ける。


田舎が悪いわけじゃない。

畑を耕す人生が劣っているわけでもない。

ただ、自分で選んだ場所を憎むほど、格好悪いことはない。


帰ればいい。

土の匂いのする場所に。

夜がちゃんと暗くて、星が見えて、コンビニが二十時で閉まる町に。


それを「逃げ」だと言うなら、

東京で愚痴を垂れ流しながら生きるのは何なんだ。


この街は冷たい。

でもそれは、誰にでも等しく冷たい。

期待を持ち込んだ人間だけが、勝手に凍えている。


私は今日も、無言の人波を避けながら歩く。

誰も慰めてくれない代わりに、誰も責任を取ってくれない自由の中を。


それが嫌なら、最初から来なければよかった。

それだけの話だ。

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