秋の収穫と味わいを共に
季節は秋
芸術の秋、読書の秋といろいろあるが、
料理と食事が好きな私にとっては
やはり実りの秋である。
今日も私は普段通り未明に起きて、
町中を散歩している。
「う〜〜ん!」
「やっぱり空気が清々しいね〜」
「人もほとんどいないし静かだし、
新しい発見があることもあるしね〜」
今年にこの区に引っ越してきて、
周辺の事を知っておこうと初めた散歩だが、
これが自分にあっており今では習慣となった。
おかげでスーパーや銀行、郵便局の
場所なども分かり、区役所での住所変更や
住民票の取得などもスムーズに行えた。
「いや〜、
やっぱなんでもやってみるもんだね〜」
「早起きが身について体の調子もいいし、
風邪の一つもしなくなったな〜」
「健康になって美容にもいいんじゃない?」
「まぁ、それは普段のスキンケアを
怠らないってのもあるけどね」
「クレンジング一つでも正しい方法で
行わないと効果も出ないしね」
そう言いながら散歩を続ける。
ちなみに散歩コースは決めておらず、
気まぐれで歩いている。
「横道一本入るだけで雰囲気も変わるよね」
「居酒屋さんが連なってたり、
ぽつんとコンビニがあったり……」
「お! 大きい書店
次回リサーチしておこうかな」
「牛丼屋さんの新作メニューか……ふむふむ」
「これなら……自分流で作ってみよう」
新しい発見ができた事に嬉しくなり、
気まぐれで道を歩き、気分良く帰路についた。
「ただいま〜」
マンションの一室の扉を開けて
帰宅の挨拶を告げる。
「って誰も居ないんだけどね フフ」
一人暮らしなので自分以外居ないことは
分かっているが、挨拶はきちんとすることを
教育されて育ったので自然と口に出る。
靴を揃えて脱ぐとポーチを片付ける。
「さ〜て、まずは手洗いうがいっと……」
シンクで手を洗ってハンドソープで
爪を含めた手全体を綺麗に洗っていく。
そしてうがいを済ませるとベッドに戻る。
「さ〜て、この間購入した小説読もう」
ブックカバーがついたままの小説を
手にとってページを開く。
「実はこの小説、料理初心者の女の子を
主人公に書かれてるみたいなんだよね」
小説の裏側のあらすじの文章から
そうだろうとの推測である。
「まぁ、私も人に出す料理作ったことないし
家庭料理だけだから初心者かもね」
そんなことを考えながら読み進めていく。
「ゆで卵の殻を剥いたら白身が
ついていくのはよくあるな」
「レシピでの適量やお好みがわからないか」
「まぁ、私も目分量だからね」
「計って作ったことないし」
小説の文章に共感しながらも、
そこは匙加減じゃない?っと
自分の考えを入れながら読んでいく。
「自分が美味しいと思えるものが
作れたらいいか……」
「うん、それが外食にはない、
家庭料理の醍醐味だしね」
時折「ふふ」と笑いながら
小説は終盤に差し掛かっていく。
「母親に自分の料理を美味しいと認めさせて
自分も自立した1人の人間だと
認めさせられたね」
「料理で親に自分を認めさせる……」
「それって親孝行の一つの完成形じゃない?」
「人によるけど、負けたくないから
子供の料理よりも更に美味しく
作ろうとする」
「そして子供はそれよりも
更に美味しく作ろうとする」
「益々料理が上達する」
「それはそれでいいことだね」
料理バトル漫画みたいに
料理を点数稼ぎの道具としか思わず、
勝てればなんでもいいなんてことに
ならないならね。
小説を読み終えてごろんと横になる。
「この小説は良かったな〜」
「私もゆで卵作るときは安全ピンとかで
穴開けてから茹でよう」
「マカロニサラダも作りたいからね」
「まぁ、今日作るのは違うけど」
「さ〜て、買い物行くか!」
ベッドから起き上がり、
エコバッグなどを準備して
近くのスーパーへと向かった。
スーパー店内
私は買い物かご片手に青果売り場へ向かう。
「買うものは大体決めてあるんだけど……」
「お〜あったあった」
「ほう! 大袋があるじゃん」
茄子とピーマンの大袋を見つける。
「主役は茄子だけどピーマンも
大袋で頂いちゃおう」
茄子とピーマンの大袋をかごに入れる。
「次は〜」
「3本入りの袋の人参」
「人参の赤があると一気に華やかになるね」
人参の袋をかごに入れる。
そして私は缶詰売り場へと向かう。
「やっぱり色々種類があるね〜」
「まぁ、シンプルなのにしてっと」
「さばの味噌煮缶……」
「そのままでも美味しいけど、
これを調理に使うのは初めてだな」
「茄子の味噌炒め作って食べた時に
思いついたんだよな〜」
「思いついたんなら作らないとね」
さばの味噌煮缶をかごに入れる。
「きざみネギは家にあるし、
じゃあ後はお酒〜」
そう言いながらお酒売り場へと向かう。
「ん〜と……」
「酸化防止剤無添加の赤ワインも
いくつか種類があるね〜」
「まぁ、今回は普段通りの赤ワインで」
「年末年始なら違う赤ワインにするかもね」
「さ〜て、これで買い忘れはないかな?」
かごの中に茄子、ピーマン、さばの味噌煮缶、
赤ワインが入っているのを確認して、
一つうなずきセルフレジに向かう。
「セルフレジ嫌って人もいるけど
数点ぐらいの買い物なら
セルフレジのほうがいいと思うな」
「買い忘れ防止も防げるし、
有人レジに並ぶほうが理解できない」
「そもそも並ぶなんて行為が理解できない」
「人が居ない時に行けばいいだけなのに」
セルフレジで支払いを済ませて、
お酒値引きのクーポン券を受け取って
気分よく帰路についた。
自宅についた私は早速購入した食料品を
冷蔵庫に入れていく。
ちなみに冷蔵庫は入居時についていた、
ミニ冷蔵庫のみである。
入居当時はもう1台冷蔵庫を買おうかと
考えていたが、暮らしていくうちに
ミニ冷蔵庫のみで行けるようになった。
冷蔵庫に入れ終えた私は水を飲んで一息つく。
「ふう、買い物も終わったし、
小説も読めたしいい日だな」
「まだ作るには早いし、もう一回読もう」
そしてベッドに横になり、
もう一度最初から読み始めた。
読み終えて「う〜〜ん!」と伸びをする。
「うんうん、やっぱりいい内容だね」
「文章としても面白いし、
自炊する私も勉強になるし」
「さ〜て、作るか!」
水で喉を潤してからキッチンへと向かう。
「まずは野菜の下ごしらえ〜」
冷蔵庫から茄子、ピーマン、人参を取り出す。
「茄子はヘタごと乱切り」
「ピーマンは縦に細切り」
「人参は皮を向かずに細切り」
「ヘタや皮を捨てちゃうと丸ごと
栄養素を捨てちゃうことになるしね」
「ポテトサラダも皮付きで作るしね」
野菜を切り終えたら包丁を洗って片付ける。
「フライパンに油を引いて温めて〜」
「まずは人参から炒めていく」
「その後茄子とピーマンを投入」
「そしてさばの味噌煮缶の鯖を加えて炒める」
「炒めたら味噌煮の煮汁を加えて〜」
「きざみネギを散らしたら完成」
「味噌煮缶の味付けだけだけど、
物足りないなら醤油加えてもあり」
「辛味を足してもいいかもね」
完成した料理を皿に移して
赤ワインとグラスを用意する。
大袋だと作り置きができるので
一人暮らしには重宝している。
料理とワインを並べれば
テーブルセッティングの完了である。
「いただきます」
手を合わせて食前の挨拶を告げる。
「まぁ、まずは焦らず赤ワインを……」
赤ワインを口に含む。
「ふぅ……やっぱりいいね」
「毎回飲んでる馴染みの味は安心できるね」
「他にも無添加ワインの種類があるし、
気分で飲み比べてみてもいいかもね」
「ふふ」と笑いワインを飲む。
「さて、今日のメインディッシュ……」
茄子をつまんで口に運ぶ。
「うんうん、とろっとした食感と
味噌の濃い味がよくあってる」
「茄子と味噌ってやっぱり相性いいな」
「それにピーマンもね」
「ピーマンは油で調理するといいって聞くし
細切りにしてもきちんと苦味がある」
「私の中で茄子とピーマンって
セットみたいなイメージなんだよな」
「そしてもちろん人参も」
「油との相性は言うまでもなく、
茄子とピーマンとも調和してる」
「それぞれ単品もいいし、
あわせて食べるとまた違う良さがある」
茄子とピーマンを共に食べて確信する。
そして鯖をほぐして口に運ぶ。
「うん、うん」
「鯖はそもそも美味しい魚だし、
味噌煮はなんだかほっとするんだよね」
「缶詰は加工品だから手づくりの
さばの味噌煮とは違うんだろうけど」
「さばの味噌煮単体で作ってみるか」
「せっかくの秋なんだから、
野菜も魚も味わい尽くさないと」
私は心の作りたい料理リストに
さばの味噌煮を追加した。
「茄子もピーマンも人参も年中売ってるけど
秋茄子はこの時期だけだよね……たぶん」
後で調べてみるとして今は食事を堪能しよう。
「このオリジナル料理は大成功!」
「次はコチュジャンとか辛味を
加えてみてもいいかも」
「ますます赤ワインとの
相性も良くなるかもね」
今よりも良くする方法を考えながら、
秋の収穫に感謝して秋の味覚を堪能していく。
そしてこの先も、
春の夜桜、夏の星空、秋の満月、冬の雪化粧と
四季折々の移り変わる景色と芸術、
音楽や食を五感全てで味わい尽くしていく……