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月夜のなか朱塗りの門を見上げると、三羽の鴉がとまっていた。
「なぜ、門を開けたんだ?」
鴉たちは目を開けると、つまらなそうに答えた。
「脅された」
「子どもに訊くがいい」
「あの龍の子どもだ」
「じゃあ、なぜまだ開けたままなんだ?」
あの少女を部屋まで送って、戻ってきた。
月は傾きかけ、それなりに時間は経っているのに、門は開いたままだった。
「眠い」
「どうせ、誰も通らん」
「いや、通れん」
あぁ。そうだ。
この門の先には、橋があるだけ。
この郷の住民は誰一人、橋を渡れない。
…住民なら。
「門が開いていると、向こうからも、橋が見えてしまう。…彼女以外に客はいらない。早く、門を閉めるように」
「全く」
「鴉使いが荒い」
「眠い」
ぶつくさ文句を言いながらも、門の扉がゆっくりと動く。
大きな扉は、音も立てず静かに閉まった。
鴉たちも目を瞑ったまま。
「おやすみ」
特に返事は期待していなかったが、去り際、カァと一羽だけが返事をくれた。




