表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/216

第030話 オーケー


 アデーレを勧誘してから数日が経ち、役所からの緊急依頼であるマナポーション作りも残り数個になっていた。

 そして、昼休憩になったので3人と1匹でエーリカが作ってくれた昼食の弁当を食べる。


「やればできるもんだねー」

「本当ですね。これもジークさんのおかげです」


 2人が木箱に入っている四十数個のマナポーションを見ながら頷いた。


「それはお前達の努力の結果だ。というよりも、お前らの実力ならそれくらいはできる」


 これが生まれ変わった俺のセリフ。


「最初に浮かんだのは?」


 レオノーラが聞いてくる。


「できて当たり前。それができないなら10級を返上してこい……どうだ? 最低だろ?」

「うーん、確かに言葉は強いねー」

「ですねー。でもまあ、事実なんでしょうね」


 俺達が何をしているのかというと、弟子2人が俺の人格矯正を手伝ってくれると言ったのでどう思うかを確認してもらっているのだ。


「そもそも同僚やクラスメイトとはあまりしゃべらなかったから実際に言葉には出していないと思う。でも、こう思っており、それを態度に出していたんだと思うんだ」

「まあ、直した方がいいとは思うね」

「ジークさんが変わろうと頑張っておられることを知っていますし、根は優しくて良い人であることを知っているので流せますが、初対面でそれを言われたらちょっと身構える人は多いかもしれませんね」


 いやー……エーリカは大丈夫かね?


「やっぱりアデーレが来る前に直すか……」


 昼食を食べ終えたので昨日買ってきた本を読む。


「聞く姿勢が大事か……『へー』……『すごいなー』……『それどこで買ったの?』……『俺も興味があるんだよね』……『今度案内してよ』」


 こんなん言うの?


「あ、あのー、それ何ですか?」


 エーリカは読んでいる本を見ながら聞いてくる。


「昨日、参考になるかもと思って、本屋で買ったんだよ。店員におすすめされた」

「へー……あ、あの、タイトル的になんか方向性が違う気がしますけど……」


 タイトルは【仲良くなれる 女性とのしゃべり方】と書いてある。


「そうか? 店員に同僚と上手くしゃべりたいと言ったらおすすめされたぞ」

「なんで女性に限定しているんですか?」

「お前ら女じゃん」


 もちろん、アデーレも女。


「ジーク君、それナンパとか女性の口説き方の本じゃない?」

「そうなのか?」

「女性と限定している時点でそうだよ。店員さんはジーク君が職場に好きな人がいると思って勧めたんじゃないかな?」


 なるほど。

 えーっと……


「へー……レオノーラはすごいなー」

「実践しなくていいよ……」

「うーん……」


 パラパラと本をめくり、読んでいく。


「いきなり告白してはいけません。告白はいわば最終確認にすぎないのでそこまでにどれだけの関係性を築くのが重要なのです。だから先に身体の関係を持っても問題ないで……ダメだこれ」


 マジでナンパ本だわ。


「ジークさんは読まない方がいいと思いますよ」


 エーリカが困った顔で首を横に振る。


「見せて、見せて」

「ほれ」


 立ち上がってレオノーラに本を渡した。


「ほーん……」


 レオノーラが本を読みこむ。


「やっぱりヘレンに頼るか」

「そうですよ。私に任せておいてください。男性はやはり自信と清潔感、そして、ふいに見せる優しさが大事なのです。自信満々でかっこいいジーク様に足りないのは優しさです。ぶっきらぼうでも構わないのでちょっとしたことで優しさを見せればコロッと落ちますよ。要はギャップです、ギャップ」


 うーん、ヘレンの言っていることもちょっと違う気がするなー。


「それ、お前の好みじゃない?」

「女性は皆、そうですよ!」

「と言ってるが?」


 エーリカを見る。


「うーん、まあ、一概にはそうとは言えませんが、否定もできませんね……私は引っ張ってくれる人が良いです。ちょっと鈍いんで」


 確かに鈍いな。


「エーリカは問題ないな。俺リーダーだし」


 引っ張っている。


「頼りになりますねー」


 うんうん。


「レオノーラはどうだー?」

「ジーク君、この前、部屋に上げたけど、そういうことじゃないからね」


 ん?


「何を言ってんだ?」

「いや、この本によると、家に上げた女性はオーケーと……」


 嫌な本だな。


「その場にはエーリカもいただろうが。というか、その本、捨てろ」


 自分で買っておいてなんだが、良くない本だわ。


「本好きには本を捨てることはできないよ。せっかくだから置いておこう。何かの役に立つかもしれない」


 レオノーラはそう言って立ち上がり、錬金術関係の本や材料などが書かれた本が収納されている神聖な本棚にナンパ本をしまった。


「それが役に立つ日が来るとは思えんがな」

「そんなのわからないじゃないか。良いことも書いてあったよ? とにかく褒めろってさ。これは男女関係なく良いでしょ」


 褒めるか……

 確かに良いかもしれない。

 褒めて伸ばすという言葉もあるくらいだし。


「確かにな。レオノーラは本当に賢いわ。だから勉強しろ。試験までひと月だぞ」

「わかってるよ……本当に微妙なラインなんだよなー。夕食後に教えて」

「そうだな」


 アデーレに結構な啖呵を切ったし、落ちられたら困るわ。


「あの、私も錬金反応のところが……」


 エーリカは十分に受かると思うんだけどなー。


「いいぞ」


 まあ、やる気をそぐわけにはいかないし、あれだけ飯をごちそうになっているから断るという選択肢はない。

 というか、勉強もエーリカの部屋だしな。

 オーケー、オーケー…………これを口に出したらダメなことは俺でもわかるな。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

【次にくるライトノベル大賞2025 エントリー】
https://x.gd/OSPb9
― 新着の感想 ―
ヘレンさん、いいですね。あのギャップ論、ご自分の現状でしょうに。完全な善意と、普段とのギャップを存分に味わえてるのですから、とっくに堕ちているはずですが…ククク、この鈍感さんは気づけるのでしょうかねぇ…
[一言] ハーレムの様でハーレムじゃないこの感じ…… 良いな
[一言] 下心を持って近づいてくる男の行動パターンが書かれた本と思えば女性にこそ有益かも……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ