表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/216

第029話 うーん……


 翌日、支部に出勤した俺は2階のフロアにいるエーリカ、レオノーラに挨拶をするとすぐに1階に降りた。

 そして、受付内にある扉をノックする。


「ジークヴァルトです」

『おー、入れ』


 中から声が聞こえたので扉を開け、中に入った。


「おはようございます、支部長」


 デスクで新聞を読んでいる支部長に挨拶をする。


「おー、おはよう。朝からどうした?」


 支部長がそう聞きながら新聞を畳んだ。


「実は昨日、王都にいる友人に電話をしまして、その際にウチに来てほしいと頼んだら了承をもらえました」

「錬金術師か?」

「はい。アデーレ・フォン・ヨードルです。私の同級生であり、本部に勤めている9級の国家錬金術師になります」

「貴族か……ヨードルと言えば西部の貴族で軍部に影響力を持っている家だぞ」


 そうなのか?

 貴族のことはあまり知らないんだよな。

 さすがにアウグストのところみたいな大貴族はわかるが、他は興味がないし、知ってても役に立たないから知らない。


「王都の魔法学校は半分以上は貴族ですからね」

「王都の魔法学校を卒業し、本部に就職か……よく了承してくれたな」


 やっぱりそう思うよなー……

 十分に勝ち組だ。


「ダメ元で聞いたのですが、了承をもらえました」

「うーん……クラスメイトだったな? 何だ? 彼女か?」

「いえ、そういうロマンスは一切ありません。友人とは言いましたが、かなり微妙なレベルです。ただ、レオノーラとは昔からの友人のようですね」

「まあ、あいつも貴族だしな。そのアデーレとやらは使える奴か?」


 知らねー。

 本部で一緒に仕事をすることもなかったし、学校では同じ実習班だったが、眼中になかった。

 アデーレの名誉のために言うが、アデーレが眼中になかったというより、学校の生徒全員が眼中になかったのだ。

 だって、あいつら、資格の一つも取れないバカばっかりだったし。


「申し訳ありませんが、アデーレの実力はわかりません。ですが、9級なら一定の実力はあるかと思います」

「そうか……まあ、理由はわからんが、人手不足なウチにとっては朗報だ。ジーク、指導はもちろん、上手くやれよ」


 そこなんだよなー……


「支部長、この支部を建て替え、もしくは、リフォームする気はないですか?」

「ん? なんでだ? 新しいというほどではないが、そんなに古い建物ではないだろう?」


 確かに人の気配がないからさびれているように見えるが、そこまでボロボロなわけではない。


「いえ、やはり個人のアトリエが必要なような気がします。王都の本部ではそれぞれ個人のアトリエがあり、そこで働きます」

「個人のスペースを取れるほどの広さはないぞ。それにこれから人を増やす予定でどれだけ増えるかもわからん状況だ。建て替え、リフォームは時期尚早に思える」


 俺もそう思う。


「支部長、私はそのうち主に人間関係で問題を起こしそうなのです。隔離すべきかと……」

「自分で言うか? その辺りのことはお前らで話し合え。仕切りでも使って個人のスペースを作るなりなんなりしろ」

「ちなみにですが、私がそれを提案した場合、上の2人はどう思いますかね?」


 もちろん、2階でマナポーションを作っているエーリカとレオノーラ。


「知らん。だが、俺は『めんどくせー奴だな』とか『感じ悪い奴だな』って思うな」

「そうですか……参考になります。では、仕事に戻ります。失礼しました」


 そう言って、支部長室を出た。


「やっぱりダメ?」


 ヘレンに聞いてみる。


「ダメですね」

「そっか」


 やっぱりなーと思いつつ、2階に上がって席につき、魔剣作りを始めた。


「なあ、アデーレがここに来たら席はそこか?」


 レオノーラの隣であり、俺の正面の空席を見ながら聞く。


「そこじゃないですかね?」

「アデーレの希望もあるだろうけど、順当に行けばそうだね」


 そうなるよな……

 俺の正面か……


「顔を上げたらめっちゃ目が合うな」

「嫌なのかい?」

「すぐにさっと目を逸らしそうだわ。嫌な感じじゃない?」

「好きな子を見れない子供って感じがして微笑ましいよ」


 レオノーラがそう言いながら笑う。


「それはそれで嫌だな……」

「ジークさん、女性の目が見られないんですか? 普通に見てません?」

「見てるよね」


 お前らは見れるわい。


「いや、思春期のやつじゃなくて、アデーレには罪悪感やらなんやらあるし、距離感が掴めそうにないんだよ」

「普通で良いと思うけど……」


 普通って何だ?


「普通じゃない奴にそういうこと言うな」

「悲しい師匠だ……」

「あの、今のうちに席を替わりましょうか?」


 エーリカが提案してくる。

 エーリカと替われば正面がレオノーラになるから大丈夫な気がする。


「ヘレン、どう思う?」

「それは逃げな気がします。結局は4人しかいない職場であることは変わりませんし、さっさと普通に接するべきでしょう」


 確かに長々とぎくしゃくするのはマズい。

 4人しかいないから協力しないといけないし、他の2人には普通なのにアデーレだけに態度が違うの良くない。

 何しろ、俺はこの班のリーダーなのだから。


「普通って何だ?」

「エーリカさんやレオノーラさんにはちゃんとできてますよ。同じように接すればいいのです」

「わかった。席はこのままでいこう」


 あと2週間あるし、考えておくか。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

【次にくるライトノベル大賞2025 エントリー】
https://x.gd/OSPb9
― 新着の感想 ―
底辺バカ学校で向上心がない生徒ばっかり、ということはなさそうだし、そのうえで誰も資格を一つも取れないのなら本当に例外で並ぶもののない能力なんだな……
[一言] なんだかメンヘラー職場復帰のためのリワークプログラムでグループディスカッションしてるみたい 傍から見ると馬鹿馬鹿しいようだけど本気で人格矯正したい意志を感じる
[良い点] 「支部長、私はそのうち主に人間関係で問題を起こしそうなのです。隔離すべきかと……」 「自分で言うか?」 「普通で良いと思うけど……」 「普通じゃない奴にそういうこと言うな」 この二か所…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ