第287話 本物に決まってるだろ
「あんた、すげーな。太刀筋がまったく見えなかったぜ」
デニスも支部長を称賛する。
「軍人ならばこれくらい普通だ」
「ぜってーそんなことないぜ」
俺もそう思う。
あの優男と朗らか女のカップルは無理だろ。
「デニス、先を急ごう。あんな魔物がいるのでは危ない」
町長はちょっとビビったようだ。
「そうですね。行きましょう……行けるか?」
デニスが俺達を見てくる。
「行ける」
「大丈夫です」
「早く帰りたいです」
俺達も立ち上がった。
「よし、こっちだ。本当にあと少しだから頑張れ」
俺達はデニスを先頭に再び、山を登りだす。
そして、数十分くらい歩くと、デニスが立ち止まった。
「休憩か?」
助かる。
「いや、到着だ。この辺が怪しいって踏んでんだ」
あ、着いたのか。
本当に助かる。
「なんでわかるんですかー?」
エーリカが聞く。
「土の色が変わっているからだ」
そう言われて、地面を見ると、確かに向こう側とここでは少し色が違う。
こちらの方が褐色土なのだ。
「鉄の成分で色が変わっているわけだな?」
「ああ。その可能性が高い。まあ、外れることも多いんだが」
ふむ……
「この辺は木が少ないな」
鉄の成分が強いと植物が育ちにくいのだ。
「ああ、そうだな。それも理由の一つだ。そういうわけで頼むぜ」
「わかった」
頷くと、空間魔法から探知機を取り出し、スイッチを押す。
そして、地面に向けたのだが、にゃーっという可愛い声が鳴った。
「確か、鳴き声の数で距離がわかるんだったな?」
「ああ。鳴き声は1つだった。浅いところにあるな。先に言っておくが、それが鉱脈かどうかは知らんぞ」
念押し。
「地形的にも鉱脈の可能性が非常に高い。町長、どうしますか?」
「そうだな……他の場所は?」
「もっと奥です。錬金術師連中は論外ですが、さすがに町長もきついでしょう」
論外でいいです。
「そうか……とりあえず、戻ろう。坑道の方がどうなったのかが気になる」
「そうですね。おい、帰るぞ。降りは楽だが、コケないように注意だからな」
デニスが注意してくる。
「わかってるよ」
「気を付けまーす」
「そうします……」
俺達は来た道を引き返し、山を降りていく。
デニスが言ったように帰りは楽だったが、何度かコケそうになったし、実際に体勢を崩したエーリカを支えたりもした。
そんなこんなでなんとか下山し、道に戻ると、1人の鉱夫がこちらに走ってきた。
よく見ると、坑道で穴を掘っていた1人だ。
「親方! 鉄鉱石が出ましたぜ!」
鉱夫がそう報告すると、全員が俺を見てきた。
「当たり前だろ。俺は失敗しない」
音量は失敗したけど。
「そうかい……ご苦労だった。仕事に戻ってくれ」
「うっす!」
デニスがねぎらうと、鉱夫が戻っていった。
「町長、どうするんです? 本物っぽいですぜ」
本物だっての。
「そのようだな……ジーク君、この機械を少し貸してくれないか? 他の山を張っている場所とやらも確認したい」
町長が聞いてくる。
「どうぞ。ついてこいって言われても嫌ですし……」
「私もちょっと疲れたな。デニス、そういうわけだから探知機を使い、他の場所も確認してくれ。それと絶対に紛失はするなよ」
また作ればいいんだけどな。
「わかりやした。すぐにでも確認に行きます。それとさっきの鉱脈はどうします? 露天掘りを始めてもいいですが、人手が足りませんぜ?」
「それは帰って、早急に協議をする。なるべく早く緊急予算を組もう。そのつもりでいてくれ」
「了解です」
デニスが頷いた。
「じゃあ、これな」
デニスに探知機を渡す。
「確かに預かったぞ」
「早めに鉄鉱石と銅鉱石を頼むぞ」
「ああ」
デニスが深く頷いた。
「町長、それでは戻りましょうか」
「そうだね」
俺達は町に戻ることにし、歩いていく。
そして、ようやく町に戻ってくると、ほっとした気持ちになった。
「ジーク、俺は町長と話があるからお前達は先に戻っておけ」
「わかりました」
頷くと、支部長と町長が歩いていく。
「私達も帰りましょう」
「そうだな」
「疲れましたよー」
俺達も歩いていき、支部に戻った。
そして、アデーレが淹れてくれたお茶を飲み、一息つく。
「どうだった?」
アデーレが聞いてくる。
「疲れました」
「もう山はいいです……」
「しんどい」
楽しかったという言葉は出ない。
「でしょうね。山出身の私が言うのも何だけど、山登りなんて辛いだけよ」
「人は平地を歩くものだよー」
貴族令嬢2人がうんうんと頷く。
「ついていかなくて良かったー……」
「ですよね」
チビ2人も頷いた。
「それでジーク君、例の機械はどうだったのー?」
レオノーラが聞いてくる。
「ちゃんと作動したし、掘ったら鉄鉱石が出てきたらしいぞ。もう少し精査してみるってことで貸し出した」
「へー……本当にすごい機械を作ったね。表彰ものじゃない?」
「いや、それどころか、陛下に呼び出されて、勲章でももらえるんじゃない? ちょうど来月に王都に行くわけだし」
アデーレ、フラグを立てるな。
もう陛下からの依頼はないし、関わることもないんだ。
「多分、これで鉱石不足は早期解決に向かうと思う。さすがに新規で採った鉄鉱石や銅鉱石をジーンに送るってことはないだろうからな」
町長もそこまでバカじゃない。
「それは良かったわ。ということは後は私達の仕事をするだけね」
「そうだね。現状、鉄が足りないのは事実だし、抽出をしよう」
「それと銀とアルミな。やるぞ」
俺達は仕事を再開し、それぞれの作業をこなしていった。
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