第264話 ガチャ切りなし
俺達はその後も仕事をしていき、夕方になると、片付けをし、仕事を終えた。
そして、エーリカの家で夕食を食べると、この日は久しぶりの勉強会をする。
「難しい……」
アデーレが眉をひそめる。
「できるようになるから頑張れ」
「それはやるけど……」
アデーレは右手にボーキサイト、左手に銀鉱石を持っており、同時に錬成をしている。
俺が考えた同時錬成だ。
左右で違う錬成を行うため、集中力も魔力コントロール能力も鍛えられるという特訓法である。
「……なんか罰ゲームを受けている人みたいですね」
「……愛だよ。ジーク君、アデーレには結構、辛辣だしね」
何だ、その歪んだ愛は?
お前、愛って言っておけば何でもいいと思ってないか?
「え? 私、辛く当たられてる?」
「ジーク君、アデーレが失敗したり、料理ができないところを見ていると、嬉しそうだし」
そんなことないぞ。
ほっとするだけだ。
「いいからお前は勉強しろ。そこ間違ってるぞ」
「えー、どこー?」
「これ。ケアレスミスを失くせ。理解できていてもバツになったら試験では意味ないんだぞ」
「わかったー」
うーん、まあ、このままのペースでいけば、レオノーラもアデーレも大丈夫だろうな。
エーリカはいいや。
8級でコケることはない。
「ジークさん、来月の試験ですけど、試験官を務められるんですよね?」
コケないエーリカが聞いてくる。
「そうなるな。採点なんかはさすがにあっちにいる時間が長くなってしまうからないと思うが、10級か9級の実技を見ることになっている」
マルティナが来たら鼻で笑う予定。
「じゃあ、今度も一緒に行けますね」
うーん……
「いや、帰りは一緒だろうが、行きは先に行くことになると思う。試験の準備だったり、当日の説明のことがあると思うし」
「あー、確かにそうですね」
「ちょっとその辺は本部長に相談だろう」
支部での仕事の調整もあるし、早めに聞いておくか。
「ジーク君、日程が決まったら言ってね。ホテルは取っておくからさ」
今回もレオノーラがセントラルホテルを押さえてくれるらしい。
「頼むわ」
俺達はその後も勉強会をしていき、良い時間となったので解散した。
そして、翌日。
もう魔法は見せなくていいと思ったので青空錬金術をやめ、支部の中で仕事をしていく。
「ちょっと本部長に電話してみるわ」
「はーい」
エーリカが返事をしたので立ち上がると、電話のところに行く。
そして、本部に電話をかけると、すぐに呼び出し音がやんだ。
『はい、こちら錬金術師協会本部です』
やっぱりサシャだ。
「こちらリート支部のジークヴァルトだ」
『あ、ジーク先輩、おはようございます。もしかして、そっちもですかぁ?』
んー?
「どうした? 何があった?」
『最近、支部のあちこちから電話がかかってくるんですよ……材料がどうちゃらこうちゃらって……全然、勉強できない』
他所でも同じようなことが起きているのか。
そして、仕事中に試験勉強か。
アデーレも同じ感じだったのかもしれないな。
「死活問題だからな。ウチも同じようなことだ。本部長に繋いでくれ」
『わかりました。少々、お待ちください』
保留音になったのだが、すぐに止む。
『ジークかー?』
本部長だ。
「ええ。お疲れ様です」
『そうだなー。鉱石がないかー?』
本部長も把握されているようだ。
「そうですね。ちょっと問題になりかけています」
『そうか……そっちはまだ問題になってないわけか?』
うーん……
「ウチはそうですね。インゴットの緊急依頼を受けたのですが、私が風邪を引いていたこともあり、出遅れて、鉄鉱石と銅鉱石を民間に買い占められました。ですので、ウチは銀とアルミのインゴットなんで問題はありません。それにそもそも4人だけの小規模なので仕事自体も少ないですから大きな問題にはなっていません。しかし、町単位になりますと、あちこちで問題が起き始めていますね。さすがに鉄と銅はちょっと……」
生活に密着しすぎている。
魔力草や船の動力とはわけが違う。
『鉱山があるリートでもか……あちこちでその陳情が上がっていて、こっちは大変だ』
繋ぐだけのサシャでも大変なんだから本部長はもっとだろうな。
「ジーンなんですよね?」
『ああ。あそこだ。まったく……』
「何とかなりません?」
『簡単にはいかん。あそこの家は大きいし、商業ギルドなんかの利権も関わっている』
鉱石を集めているのが商業ギルドか。
それをジーンに送っている。
「実際のところ、ジーンってどうなんですか?」
『お前のところもだが、あちこちから錬金術師を集めていてな……ジーン支部は過去最高の収益を記録し続けている。今年はすでに去年を超えているし、10年前と比べると、10倍以上だ。すごいよな』
そりゃすごいわ。
もはや別組織だろ。
「私には声がかかりませんね」
『人が多いし、和を乱しそうな奴は嫌なんだろ。前にクヌートを出向させたが、色んなところから集まっているのにもかかわらず、意外にも和気あいあいとしていたそうだ』
そういやクヌートがジーンに行ってたって言ってたな。
「そうですか。まあ行きませんけどね」
『はいはい。とにかく、この件についてはちょっと待ってろ。お前が鉱山に行って鉱石を掘れ』
ふむ……
「嫌ですよ。まあ、この件は了解しました。本題があります」
『これが本題じゃないのか?』
「さっきも言いましたけど、ウチの支部ではそんなに問題ではありません。町のことを考えて聞いただけです」
『嘘くせ……』
嘘だよ。
エーリカの実家のことを考えただけ。
「本題は来月の試験のことです。私は試験官をすることになっていますが、いつ頃、そちらに行けばいいんですか?」
『陛下がまた何か作ってくれとか言わない限り、試験の3日前くらいで良いんじゃないか?』
フラグを立てるな。
「次は王妃様のネックレスでも作りますか?」
『ははっ。お前のセンスでは任せられないなー』
あんたもそんなに変わらんだろ。
だから屋敷に何も飾っていないわけだし。
「私もごめんです。では、3日前に行きます」
『ああ。頼むわ……あ、ゾフィーとクヌートは回復したからな。ハイデマリーが薬を作ったんだ』
へー……ゾフィーがよく素直にそれを飲んだな。
いや、髪の毛アタックで強引かな?
「それは良かったです。本当にきつかったですから」
『まったくだ。じゃあ、鉱石の件はまた何か進んだら連絡する』
「お願いします」
そう言って電話を切った。
お読み頂き、ありがとうございます。
この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。
よろしくお願いします!




