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左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~   作者: 出雲大吉
第6章

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第223話 囲う


 昼食を食べ終えた俺達は本部に戻ると、クヌートのアトリエに戻った後、魔導石製作チームの共同アトリエに向かう。


「ハァ……魔導石製作チームかー……あそこって女しかいないんだよな……」


 なんかクヌートがため息をつきだした。


「どうした? 女好きだろ?」

「嫌いじゃないけど、女ばかりってのもな。若干、気まずい」


 ウチもアトリエにいるのは女ばかりだが、考えたこともない。

 何故なら、男だろうが女だろうが俺は35点だし。


「今さらなことを言うんだな。錬金術師だろ」


 ほぼ女しかおらん。

 飛空艇制作チームは半々だったけど。


「まあな。魔術師なんかには絶対になりたくなかったし」


 それは同意するな。

 多分、魔術師の道に進んでいたら俺はもう死んでると思う。


「リーゼロッテがいるとはいえ、まだ、魔導石製作チームは良い方だろ。薬品生成チームなんか地獄だと思うぞ」


 全員、ハイデマリーの息がかかっている。


「マリーの姉貴はそもそも拒否するだろうけどな。本部長が言ってもひと月ももたずに追い出される」


 そんな気がする。


 俺達はそのまま歩いていき、魔導石製作チームの共同アトリエの前までやってくる。

 すると、クヌートがノックした。


「失礼します」


 クヌートが扉を開け、中に入ったので俺も続く。

 すると、テレーゼ、リーゼロッテ、コリンナ先輩の3人がいた。


「あ、クヌート君……とジーク君」


 テレーゼが立ち上がり、こちらに来る。


「よう、テレーゼの姉さん。休みじゃないのか?」


 あ、ホントだ。

 休日なのにテレーゼが出勤している。


「明日、納品があってね。それの調整なんだ。私が担当したやつだから私がやるしかない。とはいえ、もうちょっとしたら帰るよ。リーゼちゃんと流行りのチョコレートケーキの店に行くんだ」


 レオノーラが言ってたやつかな?


「ふーん、なら良いのか?」


 休日出勤に変わりないと思うけどな。


「私よりも2人はどうしたの?」


 誰よりもお前だよ。


「俺はちょっと挨拶だ。明日から世話になる」

「世話って?」


 テレーゼは聞いてないらしい。


「あー、こっち、こっち」


 コリンナ先輩が手招きしたのでクヌートがそちらに向かった。

 そして、頭を下げて挨拶をする。


「ジーク君、どういうこと?」

「もしかして、援軍ですか?」


 テレーゼとリーゼロッテが聞いてくる。


「明日からあいつはここに異動だって。このチームがヤバそうだから補充要員だ」

「おー! クヌート君かー! すごい戦力だよ!」

「助かりますね!」


 クヌートのことが嫌いであろうリーゼロッテまで喜んでいる。

 やっぱりマズいだろ、ここ。


「良かったな。お前、体調はどうだ?」


 体調というか、精神面だけど。


「大丈夫、大丈夫。この前はちょっと疲れてただけだよ。皆、心配性だなー」


 テレーゼは笑顔でそう言うのでリーゼロッテを見ると、無言で首を横に振った。


「いや、マジで潰れるぞ。適度にやれよ」


 このままだと、心が壊れてしまったテレーゼが療養地であるリートにリーゼロッテと一緒に来てしまう。

 そして、連鎖的にマルタも来る。

 多分、コリンナ先輩は専業主婦になる。

 ウチは助かるが、さすがにダメだろう。


「わかってるよ。なんか終業時間になると、ハイデマリーさんに拉致されるんだよね」


 マルタがそう言ってたな。


「それでいいわ。リーゼロッテ、ちゃんと見張っておけよ」

「はい。そうします」


 リーゼロッテが力強くうんうんと頷いた。


「大丈夫なのに……ジーク君はそのことを言いに来たの? ありがとうね」

「気にするな。姉弟子に潰れてもらっては困る。それでな、ちょっと陛下から仕事をもらったんで1週間ほど滞在することになった」

「また? お弟子さん達の鑑定士の試験に付き合って来たんじゃないの?」

「それもあるが、本部長に頼まれてな」


 試験問題のことは言わなくていいや。


「へー……ジーク君も忙しいんだね」


 絶対に忙しくない。

 お前の半分も働いてないと思う。


「たいしたことじゃない。それでな、アトリエを貸してくれ」

「なんとなくそうじゃないかと思ったよ……心配してくれて来たわけじゃなかった」

「気にはなってたぞ」


 これは本当。


「ハァ……これでも変わってくれたんだ。昔なら勝手に死ねって言いそうだし」

「言わねーよ」

「そうだね。潰れるような無能は眼中に入れないもんね。思うのはただ『また一人ライバルが落ちていったな、ふっ……』だもんね」


 うーん……否定できない。


「相変わらず、ネガティブな奴だな」

「否定してよ……あー、アトリエだっけ? アトリエかー……」


 揺らいでいるっぽい。


「陛下の仕事だぞ。ちゃんと3人娘も連れてくるから」

「じゃあいっかなー……ヘレンちゃんも合わせて精神安定剤が4人もいればジーク君も私の研究を見てもバカにしてこないだろうし」


 バカにしないし、そもそも興味ないから見ないんだけどな。

 それこそ眼中に入らない。


「悪いな。それと俺はお前と違って精神は安定しているから大丈夫だぞ」

「私、ジーク君が5歳の時に『お前はこの程度で俺に何を教えに来たんだ?』って言われたことを忘れないから」


 悪い方に安定していたんだよ……


「お前だって、リーゼロッテに教えている時に『なんでこんなものもわからないんだろう?』って思うだろ」

「思わないけど? いや、ホントに」

「ジークさん、あなたと一緒にしないでください。テレーゼ様は優しくて頼りになる私の大事な師匠です」


 リーゼロッテがむっとする。

 テレーゼは目を潤ませている。

 ホント、バランスの取れた師弟だわ。


「俺も弟子からそう言われたことがあるぞ」

「そりゃジークさんのところは本当の意味で囲い、囲われているからじゃないですか……」


 え? どういう意味?


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― 新着の感想 ―
自分も仕事してる時内心(なんでこんな簡単なこともできないんだ?)っておもってる…… 言わないようにはしてるけど態度には出ているらしいので、せめて刺されないように祈って生きています ジークさんは偉いなぁ
弟子に出会う前はマジで人間性0点の発言で笑った 前世ではそりゃ刺されるわ
本当不愉快だな…
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