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左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~   作者: 出雲大吉
第6章

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第221話 そういうこと


 本部長の部屋に入った俺はデスクにつき、問題文を考えていく。

 マルティナに作ってやった時とは違い、公平性やレベルを考えないといけないので結構難しい。


「10級と9級で50問ずつか」


 50問とはいえ、その中には記述式も含まれる。

 問題を作るということは模範解答も作らないといけない。

 ちょっと時間がかかりそうだ。


「ちょっとサービスして、マルティナに出してやった問題も入れてやろう」


 ゼロ点は可哀想だからな。

 もし、それでも解けなかったらどうしようもないわ。


「ジーク様、なんだかんだ言ってマルティナさんに優しいですね」

「あれだけ労力を使ってやったんだから報いてもらわないと困るんだよ」


 あいつはいずれリートに戻る。

 その時にこの恩を返してもらえればいいのだ。


「マルティナさんはまだ子供です。きっと成長されますよ。そして、恩に報いてくれると思います」

「そう願いたいわ」


 その後も問題を考えていく。

 ちゃんと勉強しないといけないレベル、かつ、難しすぎない程度に調整し、1問1問作っていった。


『おーい、ジークー、いるかー?』


 扉の向こうから声が聞こえる。

 これはクヌートの声だ。


「いるぞー。本部長はいないから勝手に入ってこい」


 そう言うと、扉が開き、クヌートが部屋に入ってきた。


「なんかその席に座っていると、お前が本部長みたいだな。似合うわ……」


 褒め言葉だろうか?


「俺が本部長だったらお前には甘くしないな」


 働け。

 資格を取るために勉強しろ。


「お前がリートに行ってくれて助かったぜ」


 ホント、こいつは……


「今日は休みだろ? お前が休日出勤なんてどうした?」

「仕事というか片付けだな。なんか異動になったわ。魔導石製作チームに行けってさ」


 あー、早速か。

 本部長も動くのが早いわ。


「良かったな」

「良くねーよ。本部長は俺のことが嫌いなのかねー?」


 何言ってんだ。

 甘々だろ。


「俺が進言したんだ。暇そうだし、激務の魔導石製作チームに異動させたらどうかって」

「お前かい……」


 クヌートが脱力し、ガクッとなった。


「お前もテレーゼが病んで潰れかけたことは知っているだろ。姉弟子を助けろ」

「お前が助けたらどうだ?」


 なんでだよ。


「俺はリート支部だ」

「俺もそっちに異動しようかなー? 可愛い子が多いし」

「お前が本気でそう思うなら来い。いくらでも仕事をくれてやる」


 お前なら大歓迎だわ。

 即戦力だし、3人娘の指導にも役立つ。


「やっぱりお前の下は嫌だわ」


 そうかい。


「可愛い子が多いぞ」


 一番可愛いのはソファーでゴロゴロしているウチの子だけど。


「お前の弟子だろ? なんか嫌」


 俺もなんか嫌だわ。


「あっそ。じゃあ、魔導石製作チームで頑張れ。それよりも何か用か?」

「用って程でもないけど、飯にでも行かないか? もう昼だぜ?」


 そう言われて備え付けの時計を見ると、もう昼の12時を過ぎていた。


「もう昼か……じゃあ、行くか」

「おう! 行きつけに案内してやるよ」


 立ち上がると、ヘレンを抱え、部屋を出た。

 そして、本部を出ると、クヌートについていく。


「お前と2人きりで飯に行くなんて初めてだな」

「そりゃそうだろ。何度誘ってもついてこなかったし、お前ってパンと謎の薬しか食べなかったじゃん」


 そうだったな。


「最近はちゃんと食べるようになった。料理って美味いんだな。そして、幸せな気分になれる」

「今さらか? お前、本当にモンスターだったもんな。お前がリートに左遷されたって聞いた時はびっくりしたが、左遷されて良かったんじゃね?」

「そうかもな……いや、それで良かったと思っている」


 間違いなく、俺の人生は変わった。

 もちろん、良い方向に転んだと思っている。


「リートという土地か、あの3人のおかげか……とにかく、良かったな」

「お前は変わらんか? 出世を考えたらどうだ?」

「俺はいい。クリスの兄貴やマリーの姉貴に対抗する気はねーよ。俺は出世とか関係なく、錬金術ができればいいんだ。だから今が楽しい。明日からはちょっと嫌だけど……」


 明日から魔導石製作チームか。

 本当に動くのが早い。


 俺達は歩いていき、大衆向けの料理屋にやってくる。


「ここか?」

「ああ。よく利用する店だ。安いし、美味いんだぜ?」

「お前、貴族じゃなかったか?」


 もうちょっと高い店に連れてこられるのかと思っていた。


「貴族を何だと思ってんだ? ウチはクリスのところみたいに大きい家じゃないし、お前らと同じくらいの給料しかもらってないんだぜ?」


 それもそうか。

 アデーレやレオノーラも普通の店に行くしな。

 なお、高いところは雰囲気重視。


「まあ、美味けりゃ何でもいいわ」

「そういうことだ」


 俺達は店に入って席につくと、日替わり定食を頼む。

 なお、あれだけ苦しんでいたヘレンも頼んだ。

 そして、しばらく待っていると、料理が来たので食べる。


「美味いな」


 肉料理と米の組み合わせだが、普通に美味いし、肉料理の味付けが白米によく合う。

 ヘレンも美味しそうに食べていた。


「だろ? よく同僚と来るんだわ」

「ふーん……女か? アデーレを誘ったらしいな?」

「こういうところは男だよ。女はもっとちゃんとしたところ。それにアデーレは誘っただけで行ったことはない。貴族令嬢はガードが固くてな」


 あいつ、ガードが固いのか。

 ウチのベッドで寝てたんだけど……


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