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第210話 本部長に電話


 部屋に戻ると、すぐに電話を取り、本部にかける。

 すると、数コールで呼び出し音がやんだ。


『はい。こちら錬金術師協会本部です』


 サシャだ。


「サシャ、リート支部のジークヴァルトだ」

『あ、ジーク先輩。こんにちは』

「こんにちは。本部長に回してくれ」


 挨拶が大事。


『かしこまりました。少々お待ちください』


 保留音が流れ出したので待つ。


「あいつは簡潔で良いな」


 実にやり取りがスムーズだ。


「今度、行った時にリート支部に誘ってみては?」

「すでに誘ったけど、断られたよ。あいつは受付で不満がないんじゃないか?」


 誰もがアデーレのように不満を持っているとは限らないんだ。


 しばらく待っていると、保留音がやんだ。


『もしもし、ジークか?』


 本部長だ。


「どうも。お電話を頂いてたようですみません。軍の方に納品に行っていたんですよ」

『らしいな。お前の女から聞いた』


 どれだよ。

 女しかおらんわ。


「俺の女ではないですが、アデーレですかね?」

『おー、よくわかるな! さすがだ』


 電話に出るのはほとんどエーリカだが、一緒に行っていたから出られない。

 そして、レオノーラはほぼほぼ出ないので消去法でアデーレになる。

 実にしょうもない推理だな。


「同じ職場ですので。それで用件は何です?」

『急かすな、急かすな。まずだが、ゾフィーの件はありがとうな。あいつも立ち直って頑張っているぞ』


 あっそ。


「それは良かったですね。でも、それは師であるあなたの仕事では?」

『私は上司でもあるからな。その辺りが難しいんだ。それに人の振り見て我が振り直せという言葉もある』


 俺は反面教師か?

 俺達一門の反面教師のくせに。


「何でもいいですよ。ゾフィーがやる気になったのなら結構です。あ、マルティナはどうなってます?」

『うん……あのチビな。この前、ハイデマリーが家に連れてきて紹介してくれた。色々とすごいな』


 本部長も思うところがあったらしい。


「魔力ですか? 頭ですか?」

『全部。素晴らしい魔力の持ち主だし、将来が楽しみではある。しかし、まあ、バカだな。ひっどい、ひっどい。ハイデマリーは苦労するぞー』


 うん、そう思う。


「言っておきますが、それでもマシになった方ですからね。最初は甘ちゃんだし、バカもいいところでしたから」

『薬屋だろ? 裕福な家庭で育った田舎娘って感じだろうな。よくいるわ』


 そんな感じだ。


「やる気はありますので長い目で見てください」

『ハイデマリーがな。私は知らん。ああ……一を教えたら十を理解したお前が懐かしい』


 いやー、本部長も歳を取ったなー。


「昔話ばっかりですね」

『……お前はそういうところはまったく変わってくれんな』

「母親が悪かったんでしょう」


 あんたこそ悪いところが一切、変わってないわ。


『ハァ……まあいい。本部からの試験官の要請は届いたか?』


 ため息をついた本部長がようやく本題に入った。


「ええ。先程、支部長に聞きました。辺境のリートにいる私に頼みますか?」

『普通はせんな。しかし、ちょっと人手不足なんだ。それと事情があって、私がねじ込んだ』


 やはり本部長の指名か。


「ねじ込んだ事情とは?」


 想像はつくけど。


『アウグストの件だ。あの不正があったし、あれからアウグストの実家やその派閥の粛清に入っているが、終わったわけじゃない。そんな状況だし、この試験での不正もまだありえる。この前のアウグストに加担した錬金術師は捕らえているが、まだいるかもしれないからな。そういうわけで私の手の者を何人も試験官に入れた。お前はその1人だ』


 監視役ってことだ。


「ありがたいですね。狙われるのは一門でしょうから」


 特にウチの3人娘。


『そういうことだな。お前、弟子共の鑑定士の試験でこっちに来るだろ。ちょっと試験を作ってくれ。ついでに来月の実技試験の試験官もやってくれ。何なら弟子のも見ていいぞ。私は何も知らんから』


 協会のトップが不正を勧めてきやがった。


「私は真面目にします。真に弟子の成長を願うならそういうことをするべきではありません。私はあいつらに資格を取らせていますが、資格なんぞ指標の一つにすぎません。私の仕事はあいつらを一人前にし、この支部を立て直すことです」

『立派、立派。でも、実技がギリギリ足りない程度なら合格にするだろ』

「アデーレ以外はそうしますね。エーリカとレオノーラは十分に8級の能力があります。アデーレの7級は残り1ヶ月次第です」


 実技の話ね。

 アデーレは筆記の方は問題ない。

 なお、レオノーラはその筆記が怪しい。


『はいはい。いつも見てるもんな。何でもいいから頼むわ』

「マリーの3級とゾフィーの4級を見ますよ。鼻で笑ってやりますから」

『ダメ。あいつらの心を乱すんじゃない。ハイデマリーなんか久しぶりに燃えているんだから』


 このままではクリスに負けると思ったか。

 忙しいくせにバカンスなんかしてるからだ。


「そうですか。まあ、わかりました。来週、そちらに行きますので」

『ああ。詳しい内容は私が話すから本部に来い。それともう一つ、話がある』


 えー……

 嫌な予感。


「何でしょう?」

『ちょっと陛下がな……』


 ほらー。

 きたー。


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