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第189話 暇なのかね?


「うーん……まあいいや。ゾフィー、動力に必要なものは何だ?」

「いっぱいあるわね。どうするの? 私が作業をするってことは既製品を買うわけじゃないんでしょ?」

「まあな。部品を買って組み立ててくれ。そっちの方が安く上がるし、支部の儲けになる」


 当たり前だが、完成した既製品のエンジンを買うより部品を買って組み立てた方が安い。


「了解。じゃあ、それでいきましょう」

「買いに行くか?」

「いや、その前に計算して、動力の詳細図を描くわ」


 ん?


「いるのか? お前ならなくても作れるだろ」

「私のためじゃなくて、今後のリート支部のためよ。さっきの話、図面がちゃんとしてないと後の人が困るでしょ。私は出向だし、次に同じ依頼があった時にここにはいないから詳細図くらいは残してあげる」


 なるほど。


「ウチの3人娘が作れるくらいのレベルで頼む」

「無理……じゃない?」


 言葉を選んだな。


「こいつらは細かい作業が得意だから大丈夫だ」

「ふーん、ウチのチームに来ればいいのに」


 やめんか。


「ウチが壊滅するわ」

「わかってるわよ。じゃあ。細かいのを描くからちょっと時間をちょうだい。今日中には終わらせるから」

「頼むわ」


 ゾフィーは備え付けのテーブルで詳細図を描き始めたので俺達は木材の加工に入った。

 そして、3人娘に指導をしながら自分も木材の加工をしていると、シャッターの方に人影が見えたのでマルティナが来たのかなと思って見てみる。

 すると、そこにはエーリカの学校の先輩であるマライアとヴァルターが立っていた。


「……ジーク様が対応された方が良いですよ」


 2人に気付いたヘレンがアドバイスしてくる。


「……エーリカの先輩だろ」

「……エーリカさんは苦手意識を持っておられます。ここは師であり、リーダーであるジーク様の出番かと」


 そんなもんかね?


 仕方がないので作業を中断すると、2人のもとに向かう。


「よう。休憩か?」

「まあ、そんなところね」

「最近は本当に暑くてな……ここは随分と涼しいようだけど」


 魔法を使っているからな。


「風通しが良いんじゃないか? それよりも何の用だ?」

「偵察ってところかしら?」


 偵察ねー……


「すまんが見どころはないな。まだ木材の加工段階だ」

「ふーん……まあ、4人では……あれ? 5人いるわね?」


 マライアがゾフィーを見た。

 なお、ゾフィーはガン無視で設計図を描いている。


「本部からの出向だな。それよりもそっちはどうだ?」

「こっちは慣れたものだし、順調よ。というか、ウチもヴァルターのところも10人チームだしね」


 普通はそれくらいいるよなー……


「そうかい。せいぜい儲けてくれ。ウチはあまりそういうのは関係ないからな」

「ねえ、そこがずっと気になっているんだけど、なんで協会なんかに就職するの? 民間の方がずっと儲かるじゃない」


 それはこの町だけだ。

 民間なんか金儲けのことしか頭になく、技術がない。

 実際、3級以上の資格を持っているのはすべて協会の人間だ。


「すべての錬金術師がお前らみたいに家業があるとは限らん」

「そこは関係なくない? 起業すればいいじゃない」


 バカは嫌いだ。

 一から作ることの難しさを錬金術師が知らないとはな……


「何の苦労もしてない親の脛を齧っている人間の発言ね」


 おー、ゾフィー!

 調子を取り戻しているな!


「はい? 何か言った?」


 マライアがゾフィーをガン見する。


「別に……こっちは職務中だから用がないなら出ていってくれる?」

「ふーん……協会らしい人間ね」


 協会ってこんなのばっかりじゃないぞ?

 俺が言っても説得力皆無だから言わないけど。


「マライア、そいつは王都のエリートなんだ。応援のために来てくれたんだが、気難しい奴でな。気にしないでくれ」


 支部の人間じゃないですよー。

 ウチの悪口を言いふらすなよー。


「へー……王都の……」

「そんなに優秀そうには見えんがな」


 ヴァルターがそう言うと、ゾフィーの手が止まった。

 そして、ゆっくりと振り向く。


「私に言った? 田舎の辺境の七光りがこの5級国家錬金術師のゾフィー様に?」


 プライドだけは高くて、5級程度の口だけゾフィーが完全復活したぞ。


「都会の方にいる錬金術師を何人か知っているが、理論と口先だけで技術が伴っていない者が多いのは事実だろう。そういう奴は大抵、資格でしかものを語らん」


 それは事実だったりする。

 機械が便利になりすぎて、技術が落ちるのだ。

 それがゾフィーでもある。


「……ジーク様、そろそろ止めた方がよろしいかと。ゾフィーさんの目が人殺しの目になってますよ」


 もうちょっと待っていたいんだがな。

 評判が落ちるのはゾフィーだし、こうやって嫌われてくれたらこの2人も来なくなるかもしれない。

 でもまあ、さすがに止めるか。


「――こんにちはー! あっ……」


 マルティナがやってきた。

 またタイミングの悪い時に来たもんだ。


「ん? 協会の人?」

「まだ子供だろ」

「いや……」


 マライアがマルティナとゾフィーを見る。

 まあ、背丈は似たようなもんだしな。


「そいつはお前らの後輩のマルティナだ」

「こ、こんにちはー……」


 紹介すると、マルティナがおずおずと挨拶をした。


「あら? そうなの?」

「学生が協会に? バイトでもしてるのか?」


 2人がマルティナに聞くと、マルティナが目線を逸らす。


「そいつは学校を辞めたんだ。それで今度、王都に行くんだが、それまで面倒を見ているんだよ。この前、畳んだ薬屋を知らんか?」


 地元だし、知ってるだろ。


「あー……ギーゼラさんのところの……」

「キルシュか……」


 2人があからさまに気まずそうな表情になった。


「お前らも将来、家のアトリエを継ぐならちゃんと勉強しろよ」

「え? そ、そう、かもね……」

「いや、あー……そろそろ戻らないと親父にどやされるし、戻るとしよう。頑張ってくれ」


 2人はそそくさとドックを出ていった。


「何だあれ?」


 まあ、帰ってくれて良かったが……


「あの2人は事情を知りませんからマルティナさんの前でそういうことを言ったジーク様に引いたんだと思います」


 遊んでないで勉強しろって言っただけなのに。


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