表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

185/216

第185話 マリーは全会一致


 ゾフィーと共にエーリカの家に向かうと、すでにレオノーラとアデーレはおり、いつものようにレオノーラが席についていた。

 そして、アデーレがエーリカの料理の邪魔……じゃない、見学をしていた。


「お邪魔します……」

「いえいえ、どうぞー」


 ゾフィーの遠慮がちの言葉にエーリカが笑顔で返すと、ゾフィーが見上げてくる。


「あの子を見ていると、自信がなくなってくるんだけど……」

「何の?」

「あ、私って嫌な奴なんだなーって」

「お前は嫌な奴だろ」


 何言ってんだ?


「私、あんたやマリーが大好きだわ……自信が戻ってくる」


 俺も今、お前のことが大好きになったわ。


「よくわからないけど、2人共、座りなよ」


 レオノーラが勧めてきたので席についた。


「………………」


 さっきまで饒舌だったゾフィーがまったくしゃべらなくなった。


「お前、いつまで人見知りしてんだ?」

「う、うるさいわね。距離感とか色々あるでしょ」


 距離感って……


「そんなもんいるか?」


 ただの同僚だろ。


「いるでしょ! というか、あんたが敬語を使えとか言うからどういう感じでいくかを悩んでいるのよ!」

「敬語使えよ。エーリカは同い年だから別にいいけど、レオノーラとアデーレは俺と同い年だから先輩だろ」


 たいして上下関係に厳しくない世界ではあるが、上の者には普通に敬語を使う。


「まあまあ、ジーク君。ゾフィーが言っていることはその辺が複雑だからだよ。私やアデーレは確かに年上だけど、たかが2歳違いじゃないか。でも、錬金術師としてのキャリアは子供の頃から本部長の下についているゾフィーの方が圧倒的に上でしょ?」


 そういやゾフィーは本部長の囲い込みで学生時代から本部でバイトしてたな。


「年齢かキャリアのどっちを取るかってことか?」

「まあ、あと面倒なことに私とアデーレが貴族なこともあるね。マルティナちゃんが微妙に私達と距離があるのもそれ」


 そういや、マルティナって学校の先輩であるエーリカには懐いているが、レオノーラとアデーレとはあまり話さんな。

 うーん、貴族か……テレーゼなんかビビりまくりだし、仕方がないこととも言える。

 でも、本部には貴族がそこそこいるんだよな……

 あいつ、大丈夫かね?


「めんどくさいな、お前ら……」

「ごめんよー。でも、こればっかりは仕方がないでしょ。ゾフィー、好きに話せばいいよ。そもそも気にしないし、私なんか敬語でしゃべったことなんてほぼないから」


 レオノーラはなー……

 敬語娘のエーリカとは真逆だ。


「そ、そう?」

「ジーク君が言うようにめんどいしね」

「ゾフィー、レオノーラは本部長相手にもタメ口を利いていたし、本人がこう言っているから気にしなくてもいいだろ」

「わ、わかった」


 ゾフィーは頷いた後にチラッとアデーレを見る。


「アデーレ」


 気にしてるぞ。


「私も気にしなくていいでしょ。受付の時と同じで普通にしゃべってちょうだい」

「あ、うん……」


 ゾフィーが俺を見てくる。


「どうした?」

「あんたは落ち着く」


 さてはこいつ、人間性50点以下だな?


「――できましたよー」


 エーリカがアデーレと共に料理を持ってきてくれた。


「どうだった?」


 一応、アデーレに聞いてみる。


「これなら私でも作れそうな気がする」


 まあ、パスタだしな。


「せっかく王都からゾフィーさんがいらしてくださいましたから地元の魚介のパスタです」

「すごいわねー」


 ゾフィーが嬉しそうにパスタを見た。


「どうぞ、どうぞ。食べましょう」


 皆が席についたので料理を食べだす。


「おー! 美味しい! 王都にも色んなパスタがあるけど、これはすごいわ!」


 ゾフィーが絶賛する。


「ありがとうございます。喜んでもらえて嬉しいですね」

「パンと謎の薬しか食べないジークが食に目覚めるわけだわ」


 まあな。


「この町は食材が豊富だし、エーリカは上手なんだよ」

「本当にすごいわ。そっちの道でも大成するんじゃない?」

「そんなことないですよー」


 エーリカは料理のことを褒めると、本当に嬉しそうになるな。


「いやー、これは店を出せるわよ。家や職場の近くにあったら通うもん」

「お前、自炊はせんのか?」


 確か、ゾフィーも一人暮らしだったはずだ。


「そんな時間があるわけないでしょ」


 本部は悲しいなー。


 俺達はその後も話をしながら食事をしていくが、美味しい食事で機嫌を良くしたゾフィーは人見知りが治まったようでよくしゃべるようになっていた。

 そして、夕食を終えると、ゾフィーにも加わってもらい、3人の勉強会をする。


「おー……テレーゼが優秀な子達って言ってたけど、本当にすごいわ。実技はあんまり見てないからわからないけど、筆記は受かるんじゃない? 8級と7級でしょ? これなら余裕よ」


 3人娘の勉強を見ているゾフィーが絶賛した。


「マルティナの後だと余計にそう思うだろうな」

「……そんなことないわよ」


 絶対にそうだろ。

 あいつの物理を見てもらったが、目が泳ぎ、言葉を選びまくってたし。


「俺はこいつらの後にあれだったからしんどかったわー」

「だ、誰にだって苦手分野はあるわよ。私だって薬関係は全然だし」


 そりゃ錬金術だろ。

 あいつは基礎学の物理だ。


「頼むぞ、ゾフィー。お前もいつかは弟子を取るんだろうし、その時の練習と思え。あのハイデマリーですら弟子を持っているんだから」


 しかも、いっぱいいるらしい。


「そうか……クズ3人衆の内の私だけ弟子がいない……あれ? 一番の問題児に見える……」

「クズ3人衆って何だ?」

「クヌートのバカがそう言ってた」


 兄弟子のクヌートか。

 女好きでうるさくてうざいあいつに言われたくないが、クズ3人衆に納得してしまった自分もいた。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

【次にくるライトノベル大賞2025 エントリー】
https://x.gd/OSPb9
― 新着の感想 ―
ああ、何が心地よいって 口は悪いけどその口の悪さに対して悪びれず付き合えてることか いい関係だなあ
あー、このダラダラ感がたまらない。 ずっとおしゃべりしてたまにヘレンがツッコミしてるシーンだけ観てたいくらい。 なんだか癒やされるわ。全然ハーレムっぽくならない奇跡的なメンバー。
うんまあ、3人とも口が悪いのはそう。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ