第181話 まーた電話
いつもお読みいただきありがとうございます。
召喚について、いくつか質問が来ましたが、その辺についてはカクヨムの方のサポーター限定で不定期で連載しているジークの幼少期を描いた【がんばれ、ジーク君!】でヘレンとの出会いも描いています。(↓にリンクを貼りました)
ただし、大変申し訳ございませんが、こちらはサポーター限定となりますことをご承知ください。
エーリカの家でアクアパッツァをご馳走になった後、軽く勉強会をすると、解散となったので自分の部屋に戻り、マルティナのためのテストを作成する。
「ジーク様、毎日大変ですね」
「別にたいしたことじゃない。それにマルティナもエルネスティーネを使い魔にしたからこれからは楽になるだろう」
あいつ、偉そうだし、使い魔っぽくないが、言ってることは正しい。
「ああいう使い魔は初めて見ましたね……ん?」
チャイムが鳴ったのでヘレンが顔を上げた。
「ノックがないし、レオノーラじゃないな……アデーレと見た」
そう言いながらヘレンを抱えると、立ち上がり、玄関に向かう。
そして、扉を開けたのだが、そこにはアデーレが立っていた。
「ホントにアデーレさんだ……もう結婚しちゃってくださいよ」
「いや、今のは本当に適当だ」
2択が当たっただけ。
「何の話かしら?」
アデーレが目を細める。
「誰が来たのか当てるゲームをしたら本当に当たっただけだな。それよりもどうした?」
「ジークさんに電話。ゾフィーさんよ」
ゾフィーか。
「お前らの家の電話番号がウチの一門に出回ってないか?」
「そんな気がする。ジークさんも電話を買ったらどう?」
うーん……本部長からはレオノーラのところに電話がかかってきた。
そして、次はアデーレのところにゾフィーだ。
こいつらの用は俺だし、俺が電話を持っていれば迷惑をかけることはないだろう。
「居留守を使いそうだなー……」
「まあ、頻繁にかかってくるわけでもないし、こうして繋げばいいから別に構わないけど」
というか、平日の昼にかけろよな。
支部にも電話はあるんだから。
「すまんな。ちょっと借りるわ」
「ええ。どうぞ」
俺達は部屋を出ると、階段を昇り、真上のアデーレの部屋にやってくる。
そして、リビングにある電話のところまで行くと、アデーレにヘレンを預け、受話器を耳に当てた。
「ゾフィーか?」
『あ、ジーク……こんな時間に悪いわね』
「アデーレに言え」
この前も同じことを言ったような?
『それは言った。あんたとは違うから』
うーん、果たして俺が時間外に電話をかけた時にそういう気遣いができるだろうか?
「まあいい。それよりもどうした?」
『なんか本部長があんたのところに応援に行けって言ってきたのよ』
そういうことにするわけか。
「ウチは人が少ないからな」
『確かに4人はねー……でも、なんで私よ?』
言わない方がいいんだろうな……
「ウチに来たことがあるからじゃないか? テレーゼとハイデマリーはあれだし」
『まあ、どっちも忙しいか……私も暇じゃないんだけどね』
「お前は弟子もおらんし、フットワークも軽いだろ。それにそもそも本部に暇な奴なんておらん」
みーんな、残業してた。
『そうだけども……でも、あんたのところに行って何するの? 抽出機と分解機しかないようなところでしょ。基礎からやれって?』
「実は魔導船の依頼を受けていてな。港町のここではかなり重要な依頼みたいなんだ。お前、動力を作れるだろ」
『動力? 魔導船ってどんなのだっけ? 私も王都出身だし、船は知らないわよ』
ゾフィーって王都の人間だったっけ?
「設計図はちゃんとあるから大丈夫だ。俺でも作れると思うし、専門家のお前なら余裕だろ」
『相変わらず、煽ってくるわねー』
え? 煽ってないんだけど?
しかも、相変わらず?
「俺、煽ったか?」
振り向いて、ヘレンとアデーレに聞く。
「煽ってませんけど、煽っているように聞こえないこともないです」
「普段から俺に並ぶ者はいないって豪語しているあなたが言うと、そう聞こえちゃうんじゃない?」
なるほど……
「ゾフィー、すまんな。そんな気は一切ない」
『…………あんたに必要だったのは通訳だったんじゃない?』
知らん。
「とにかく、船製造に付き合ってくれ。人手が足りないのは確かなんだ」
『はいはい……まあ、気分転換にはなるわね』
やっぱり悩んでいるんだろうか?
「そうだぞー。勉強ばかりしても疲れるだけだ」
『あんたにそんなことを言われる日が来るとは思わなかったわ』
俺も言う日が来るとは思わなかった。
「いつ来るんだ?」
『明日。急遽、決まってね。その連絡をするためにこんな時間に電話したのよ。あんたは最悪、身内だからいいけど、アデーレに悪いことをしたわ』
「アデーレは年上だぞ。ちゃんと『さん』を付けろよ」
エーリカと同い年の20歳だろ。
『あんたの弟子でしょ。言わば私は叔母……いや、なんでもないわ』
叔母師匠?
20歳で言われたくないだろうな。
俺もリーゼロッテに叔父師匠って言われたくない。
「相手を敬えないと俺みたいになるぞ」
『とてもためになるアドバイスをありがとう。ゴミカスマリーに言ってあげて』
あいつは聞かんだろ。
「まあいいや。何時に来るんだ?」
『朝一の飛空艇に乗るから午後かな?』
この前と同じ感じか。
「気遣いを覚えた俺が迎えに行ってやろうか?」
『この前行ったし、場所もわかるから大丈夫。それよりも数日でいいから泊めてくれない?』
ん?
「俺の家か?」
これは本当に悩んでいるのかもしれんな……
『そうそう』
「別にいいけど、ソファーで寝ろよ」
『慣れっこよ』
本部は悲しいなー……
テレーゼのアトリエのソファーもテレーゼとリーゼロッテの簡易ベッドらしいし。
「まあ、わかった。じゃあ、明日な」
『ええ。おやすみ』
ゾフィーはそう言って、電話を切った。
「あれだけ才能があって、何を悩むんだか……」
バカじゃないかな?
「ジークさん、ゾフィーさんが明日から来るの?」
話を聞いていたであろうアデーレが聞いてくる。
「ああ。内弁慶な奴だから気にかけてくれ」
まあ、ウチには聖女様がおるか。
「ふーん、それよりもあなたの家に泊まるの?」
「らしいな。多分、悩みを聞かされるんだろうなー……これは言葉を選ばないとマズいぞ」
35点の俺でいけるか?
「まあ、そうなのかもしれないけど……え? いいの?」
「何が?」
「いや、その……同門かもしれないけど、年頃の男女でしょ」
そういやあいつも20歳か……
「どうでもいいし、興味もない。間違いなく、向こうもそう思っている」
「前から思ってたけど、あなた達って本当に兄弟姉妹みたいよね。良くも悪くも距離感がそんな感じがするわ」
前世も今世も一人っ子だったからわからんなー……
「別にどうでもいいだろ。それよりも自慢のヴァイオリンを聞かせてくれ」
「今日はダメ。練習してから」
そんなに下手なのか?
それとも謙遜か……
アデーレは後者だろうなー……
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