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第180話 (ジークの)シッターで合ってる


 俺達はその後も食事を続けた。

 そして、午後からはエーリカの部屋で錬金術の勉強会をしていく。

 3人娘は次の国家錬金術師試験の勉強をし、マルティナはエルネスティーネから魔力のコントロールを教わっていた。

 そんな中、俺はというと、3人娘の勉強を見つつ、小さな木箱を作っている。


「こんなもんか?」


 10センチ四方の木箱をエルネスティーネに見せる。


「すまんが、もう少し大きくしてくれ。そこに大量の木くずを入れて、寝床にするんじゃ」

「ふーん……木くずはどうするんだ?」

「こやつに作らせる。そのくらいもできんようなら錬金術師は無理じゃな」


 まあ……


「木材の加工はできてたし、それくらいならできると思うぞ」

「ならよい。それの2倍くらいにしてくれ。クルミを置いておく場所もいるんじゃ」


 ハムスターだな。


「じゃあ、こんなもんか」


 木箱を錬成し、20センチ四方の木箱を作った。


「木箱とはいえ、一瞬で錬成か……おぬしが良いなー……」

「エルちゃん!?」


 マルティナがエルネスティーネを掴む。


「いや、お前を捨てたりはせんわ。でも、これくらいはできるようになれよ」

「この人、この国一番の錬金術師なんだけど……」

「だから何じゃ? いいから超えろ。1位を目指せん者は2流止まりぞ」


 良いこと言うなー。

 でも、こいつでは無理だ。


「わ、わかりました……」


 かかってこい、小娘。

 ひねりつぶしてやるわ。


「穴はこんなもんか?」

「もう少し小さくしてくれ。通れるギリギリくらいでよい。5センチくらいじゃな」

「ほれ」


 直径5センチの穴を開けると、テーブルに置いた。


「ふむ……ふむふむ」


 エルネスティーネは穴から出たり入ったりして感覚を確かめているので天井に蓋を置いてやる。


「どうだ?」

「悪くないな……大儀であったぞ。褒美に教えてやるが、おぬしは魔術師になった方が良いぞ」

「知ってる。でも、錬金術師でいい」


 魔術師になって戦地に行きたくない。


「そうか……まあ、人間は向き不向きに逆らうもんじゃからな」

「そうそう。木くずも作るか?」

「よい。ほれ、マルティナ、木くずを作れ。錬金術師じゃろ」


 かんなで削った方が早いけどな。


「え? あ、はい……」

「ほれ」


 余った木材をマルティナに渡す。


「えーっと、こうかな?」


 マルティナが木材を錬成し、木くずを作った。

 すると、エルネスティーネが木くずを持ち、がじがじと齧っていく。


「お前、こんなカチカチの木くずで妾に寝ろというのか? 妾の柔肌にぶっ刺さるわ」

「ご、ごめんなさい」

「もっと薄くせんかい。すまんが、ちょっと見本を見せてやってくれ」


 エルネスティーネが頼んできたので木材を木くずへと変え、渡してやった。


「薄すぎるわ! 向こうが透けて見えておるじゃないか! 能力の自慢なんかせんでいいから妾のベッド用の木くずを作らんかい! 客の要望に応えられんで錬金術師は務まらんぞ!」


 正論を言うハムスター。


「はいはい」


 今度はちゃんと木くずを作ってやる。


「そうそう。それでいいんじゃ。マルティナ、これを作れ」

「や、やってみます」


 その後、マルティナはエルネスティーネの叱咤激励を浴びながらも木くずを作っていく。

 そして、夕方になると、マルティナとエルネスティーネが家に帰った。


「お母さん、びっくりするかもねー」


 斜め前に座っているレオノーラが苦笑いを浮かべる。

 なお、エーリカは夕食を作っており、アデーレがそれを見学している。


「エルネスティーネか?」

「うん。娘が急にしゃべるハムスターを連れて帰ったらびっくりでしょ」


 確かになー。

 ギーゼラさんは魔法使いの業界に詳しくないし。


「ペット禁止って言われて追い出されたら笑えるな」

「さすがにハムスターなら大丈夫だと思うけどね」


 犬、猫、鳥だったら厳しかったかも。


「まあな。小動物だし、補佐をしてくれるからギーゼラさんも文句は言わんだろ」


 絶対にマルティナやギーゼラさんより頭が良いし。


「使い魔ってあんな感じで補佐をしてくれるものなの?」

「基本的にはそうだな。魔法の補佐やドロテーみたいに飛べると偵察なんかもできる。中には戦闘タイプの使い魔もいて、守ってくれたりするぞ」


 なお、ウチの一門に戦闘ができる使い魔はいない。


「ジーク君もヘレンちゃんに魔法の補佐とかしてもらったの?」


 え?


「ジーク様にそんなものは必要ありませんよ。何でも1人でできましたし」

「え? じゃあ、なんでヘレンちゃんを使い魔にしたの? 可愛いから?」


 可愛いのは確かだ。


「小さい頃、魔法で出世しようと思ったんだが、孤児だったし、どうすればいいのかがわからなかったんだ。そんな時にたまたま使い魔のことを知り、教えを乞おうと思って召喚したんだよ。ヘレンはこう言うが、ちゃんと最初の頃は教えてくれたぞ」


 秒で覚えたけどな。


「へー……以降は可愛がってただけ?」


 家族だもん。


「さっきのエルネスティーネの言葉を聞いていて、もっと早くヘレンに人の道を教えてもらえば良かったなって思ったな」


 もっとも、飛空艇制作チームから外されてようやく自分の性格が悪いことに気付けた俺がヘレンの話を聞いたかは微妙だけどな。


「そういやヘレンちゃんはジーク君の言動について、何も思わなかったの?」


 レオノーラがヘレンに聞く。


「大なり小なりコミュニケーションが苦手な人もいますし、好まない人もいます。それも個性ですし、実際、ジーク様はそういうのを必要とされていませんでした。しかも、圧倒的な才能で成功しておられましたから私が口を挟むことはありません」


 というか、ヘレンって基本的に寝てるしな。


「あー……それもそうだね。でもまあ、ジーク君は幸せそうだし、良かったじゃないか」


 ヘレンがいれば良いからな。


「皆さんのおかげです。私はもう思い残すことはありません……」


 ヘレンがばたりと倒れた。


「ご飯だよー。ヘレンちゃんが好きなアクアパッツァ」

「わーい」


 ヘレンはエーリカが魚料理を持ってくると、すぐに復活する。


「あったね……」

「私はジーク様のお子さんと遊ぶまで消えません」

「思い残すこといっぱいあるね……」


 別にいいんだけど、お前、シッターじゃなくて使い魔だよね?


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本部長のカルステンは鷲の使い魔だったと思ったけど戦闘能力ないのか?
 ヘレンは末代まで面倒見そうだな。
彼女達は使い魔欲しいと 思わないのでしょうかね やりとりを見てると欲しがっても おかしくない気が
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