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第179話 使い魔


 マルティナは腰を下ろすと、両手をエルネスティーネのもとに差し出す。

 すると、エルネスティーネが手に乗ったので立ち上がった。


「エルちゃんは使い魔になってくれるんですか?」


 エルちゃん……

 まあ、ハムスターだから偉そうな名前よりそっちの方がしっくりくる。


「構わんぞ。でも、ちゃんと3食出すんじゃぞ。あと、家も建てよ。妾は真っ暗で狭いところじゃないと寝られんのじゃ」


 ハムスターだもんな。

 家と言ってもただの木箱だろう。


「わ、わかりました」

「さて、妾はなんで呼び出されたんじゃ?」

「えーっと、魔力コントロールのお手伝いをしてほしくて」

「ふーん……そこそこの魔力を持っているように見えるが……まあ、まだ子供か……やってみい」


 偉そうな使い魔が主人に命令する。


「あ、はい……ぐぬぬ!」


 マルティナはエルネスティーネを肩に置くと、手を掲げ、力んでいく。


「ぷっ」

「ひどい……」


 エルネスティーネが噴き出すと、マルティナが落ち込んだ。


「すまん、すまん。でも、魔力がでかいだけで魔法の才能はないな。どこぞのレストランで給仕でもせい」

「錬金術師になるんです!」

「なんじゃい、錬金術師かい……バカそうだし、向いてないと思うがのう……」


 こいつ、使い魔のくせに辛辣だな。


「なるんです!」

「まあ、侍従のために付き合ってやるか……」


 エルネスティーネはやれやれといった感じで首を横に振る。


「お願いします!」


 主従が逆転してるし……


「ほれ、もう一回やってみい」

「こ、こうですかね?」


 マルティナが手を掲げる。

 すると、今度は体内の魔力が動いているように見えた。


「ぐぬぬ……あっ!」


 マルティナの手から水が出て、地面を濡らす。


「まあ、そんなもんじゃろ」

「で、できた……」


 マルティナが驚きながら自分の手を見た。


「そんな驚くことでもない。こんなもんはその辺のガキでもできる」

「わ、私は初めてだったんです。なんで急に……」

「妾がお前の魔力を動かしてやっただけじゃ」

「エルちゃん、すごい! これで私も錬金術師になれる!」


 いや、お前の最大の課題は座学だ。

 勉強しろ。


「アホ。うぬぼれるな。そんなものは妾の補佐があったからじゃ。妾は使い魔だからお前の旅路の手助けはしてやるが、実際に歩むのはお前じゃ。今のお前は母親に抱かれて進み、喜んでおる赤子のようなものよ」


 まったくもってその通り。


「う、うん」

「いいか……お前は無能じゃ。それでも自分で歩き、道を選択し、進んでいかなければならない。そして、錬金術師は厳しい道のりじゃ。だが、安心せい。妾がおる。ちゃんと妾の言うことを聞くんだぞ。さもないと崖から落ちるぞ?」


 良いこと言うなー。

 俺は崖から落ちたわ。

 下にめっちゃ柔らかいクッションがあったけど。


「う、うん……頑張ります」

「よしよし。では、食事にしよう。昼飯は何じゃ?」


 エルネスティーネは満足そうに頷くと、マルティナに聞く。


「えっと、パンを買いに行こうかと……」

「あ、せっかくだし、ウチで一緒に食べようよ」


 エーリカがマルティナを誘った。


「いいんですか?」

「うん。皆で食べた方が美味しいよ。エルネスティーネさんは食べられないものとかあるんですか?」


 さすがはエーリカ。

 偉そうなエルネスティーネを見て、対応している。


「妾は雑食だから食べられないものはないぞ。ハムスターじゃし」


 ハムスターの自覚はあるのか……


「パスタでもいいですか?」

「うむ……あ、いや、待て。せっかくだから何があるかを見せよ。ウチの侍従の初魔法の祝いをせねばならん」

「じゃあ、こっちです」


 エーリカはマルティナとエルネスティーネと共に部屋に戻っていく。


「完全に主従関係が逆だな」

「使い魔のくせに最初にしっかりとマウントを取りましたね」


 ヘレンが呆れたように同意した。


「すんごい偉そうだったよ」

「相手を落としつつ、自分の有用性をアピールしてたわね。ちゃっかり自分に従えって言ってたし」


 レオノーラとアデーレも神妙な顔で頷く。


「ハムスターなのになー……」


 当たり前だけど、あんな偉そうなハムスターは初めて見た。


「使い魔って個性豊かだよね」

「あなたもいる?」

「ウチにはヘレンちゃんがいるじゃないか」


 最初からヘレンに助けを求めていたら王都でも上手くやれたかもしれんな。

 その時にはここにいないし、こいつらと出会ってないけど。

 あ、アデーレは別ね。


「俺達もエーリカの部屋に戻ろう。ヘレン、エルネスティーネを食べるなよ」


 猫とネズミだし。


「食べませんよ。呪われそうです」


 確かにな……


 俺達はエーリカの部屋に戻ると、料理ができるのを待つ。

 そして、アサリのパスタがやってきたので皆で食べだした。

 なお、エルネスティーネの前には小皿に山盛りとなったアサリが置いてある。


「エルちゃん、美味しいですか?」


 マルティナがエルネスティーネに聞く。


「美味いほー」


 でしょうね。

 頬袋にアサリを詰めまくってるし。


「エーリカ先輩、とても美味しいですし、エルちゃんも美味しいそうです」

「良かったー。おかわりもあるからいくらでも食べてね」

「おぬひのほころによばれたかったほー」


 何を言ってんだ、このハムスター。


「飲み込んでからしゃべれよ」

「………………」


 黙りやがった……


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― 新着の感想 ―
生意気にもチェンジ発言とか、偉ぶりすぎる〜w
やっぱ、無意識から何かを拾い上げる仕組みがあるのだろうか。 魔装機神のファミリアみたいな。
ミニジークだからジークとの相性はとことん悪そうw
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