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第178話 召喚


「こんなもんか」


 地面に魔法陣を描き終えたので杖をしまった。


「魔法使いっぽいです」


 マルティナが魔法陣を見ながら感心している。


「っぽいじゃなくて、魔法使いなんだよ。そして、お前も魔法使いだ」

「はい。それでどうすればいいんですか?」

「この魔法陣で使い魔を呼び出すんだ。そういうわけでこの魔法陣に血を垂らせ」

「え? 私の?」


 当たり前だろ。


「俺が垂らしてどうするんだよ。俺にはもうヘレンという生涯のベストパートナーがいる」

「嬉しいですけど、そういうのは奥さんに……」


 奥さん(笑)。

 たとえ、結婚するようなことがあってもそいつは2番目だ。

 ヘレンに代わる者などおらん。


「あ、あのー、血ってどれくらいです?」


 マルティナが聞いてくる。


「ほんの一滴でいい。手を出せ」


 そう言って、ナイフを取り出した。


「ひえ! 猟奇的なサイコパス!」


 誰がだよ。


「自分でできんだろ。俺がやってやる」

「い、いいです! 自分でできます!」

「お前がやると時間がかかる。俺が一瞬で終わらせてやるよ」


 そう言って、マルティナの手首を掴む。


「ぎゃー! せんぱーい、助けてー! 怖いですっ!」


 うるせーなー……


「暴れるなっての。手元が狂うだろ」


 こら、叩くな!


「ジークさん、やめた方が……」

「無理やりは良くないよー」

「とんでもない絵面になってるわよ……」


 3人娘が止めてきたので手を離す。

 すると、マルティナがエーリカの後ろに回り、背中に隠れた。


「めんどくせーなー……わかったから自分でやれ」


 ナイフをエーリカに渡す。


「マルティナちゃん、ゆっくりでいいからね」


 エーリカが優しく言いながらナイフをマルティナに渡した。

 すると、マルティナがナイフを見て、固まる。


「時間がかかるってのに……」

「だからといって、ジーク君がやったらダメでしょ。犯罪臭がすごかったよ」


 レオノーラが呆れながら苦言を呈してきた。


「ああいうのは他人がスパッとやった方が良いんだよ。時間をかければかけるほど怖くなるぞ」

「まあ、そうだけど、ナイフを持った大人が子供の手首を掴むのはやめようよ。これが表だったら兵士が飛んでくるよ」


 人通りが多いところではさすがにせんわ。


「ハァ……勉強するか。完全に固まったわ」


 マルティナはナイフを見たままピクリとも動いていない。


「気長に待ちましょう」

「これは時間がかかるね」

「私は見てらんないわ。こっちまで怖くなってきた」


 俺達は机に行き、勉強を始めた。


「うーん……鑑定ってやっぱり難しいですね。これ、Cランクですか?」


 エーリカが魔石を見せながら聞いてくる。


「Dランクだな」

「微妙なところがわかりませんねー……レオノーラさんはなんでわかるんです?」

「なんとなく。雰囲気。見た感じ」


 適当だなー……


「参考になりませんね……」


 なんないな。


「レオノーラは目が良いからな。一言で片づけるなら才能だ。でも、安心しろ。鑑定は時間がかかるかもしれんが、確実にできるようになる」


 こんなもん慣れだし。


「ですかねー?」

「ゆっくりやりましょう……」


 エーリカとアデーレが魔石をじーっと見だした。


「お前は?」


 参考書を読んでいるレオノーラに聞く。


「8級落ちそう……」

「筆記?」

「うん……」


 レオノーラもマルティナと同じで好き嫌いがはっきりしてるからなー……


「どこだ?」

「ここ」


 俺はエーリカとアデーレの鑑定を見ながらレオノーラに勉強を教えていく。

 その間、マルティナはナイフを指に当てたりしたものの、すぐに離して、息を吐いていた。


「ジークさん、そろそろ昼御飯の準備をしようと思うんですけど……どうしましょう?」


 エーリカがマルティナを見ながら聞いてくる。


「終わりそうにないな……マルティナ、午後からにしろ。飯にしようぜ」

「ジ、ジークさん、すみませんが、やはり切ってもらえないでしょうか? 多分、夜になっても無理です」


 マルティナが顔を上げ、涙を浮かべながら頼んできた。


「わかった」


 立ち上がると、マルティナのもとに行き、ナイフを受け取る。


「あ、あの、せーのでお願いし――痛っ! ひどい!」


 めんどくさいから秒で人差し指を切ってやった。


「せーのでの方が怖いだろうが。いいから血を垂らせ」

「この人、絶対にサイコパスだ……」


 マルティナはぶつぶつ言いながらも魔法陣に血を垂らす。


「ほれ、このポーションで治せ」

「ありがとうございます……女を殴って慰め、言うことを聞かせる最低男みたいだ」


 誰が、DV男だ。


「ほら、魔法陣が光り出したぞ」


 魔法陣はまばゆいまでの光を放ち、次第に収まっていった。


「おー……おー? おお……お?」


 アホ面を晒しているマルティナが首を傾げる。


「この偉大なるエルネスティーネ様を呼び出したのは誰じゃ?」


 なんか偉そうなのが出てきた。


「わ、私です」

「ほう……こんな小娘が妾を呼び出したか……いい度胸じゃ」

「マ、マルティナと言います」

「ふむ……こっちじゃなくて、お前か?」


 エルネスティーネが俺をちらりと見る。


「こちらは魔法陣を描いてくださっただけで呼び出したのは私です」

「ふーむ……まあ、よいか。なんか妾が嫌いな猫がおるし」


 嫌いだろうねー……

 だって、こいつ、ハムスターじゃん。

 ハムスターがハムスターを召喚してるし……


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

今週は明日も更新しますのでよろしくお願いします。

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― 新着の感想 ―
ドロテーやカルステンとは相性最悪だなぁ…
偉大なハムスターって、なんだよ~www
 尊大なハムスターだなー。無矯正前のジークみたい。
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