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第172話 勘違い?


 翌日、支部に出勤した俺達は引き続き、仕事をしていく。

 そして、1時間くらいすると、玄関の方に人影が見えた。


「あ、ルッツ君だ」


 エーリカが言うように受付にルッツが来ていた。


「ホントだ。ユリアーナの彼氏さんだ」

「それ、やめたら?」


 レオノーラはそういうのが好きだからなー……

 まあ、エーリカもだけど。

 よし、詮索してこよう。


「ちょっと行ってくるわ」


 立ち上がり、受付の方に向かう。


「やあ、ジークさん。契約書とドックの鍵を持ってきたよ」


 ルッツがいつものさわやかな笑顔で言ってくる。

 まさしく、リントナーの血だ。


「今日はお前なのか」

「ユリアーナが良かった?」

「どっちでもいいわ」


 お前もユリアーナも陽の者だし。


「本来なら私が担当なんだけど、昨日は休みでね。それでユリアーナに代わりをお願いしたんだ」


 そういうことね。

 だから今日はルッツなんだ。


「ユリアーナが休みが合わないって愚痴ってたぞ」

「軍は休みが不定期だからねー……」

「そういやお前はなんで軍に入ったんだ?」

「給料が良いから。体力には自信があったしね」


 なるほどねー。


「エーリカは体力、運動神経ゼロなのに」

「別に兄妹じゃないからね? それにエーリカは昔から運動嫌いで家の中で遊ぶ子だったんだよ」


 まあ、そんな感じはする。

 というか、3人娘は全員そうだ。


「お前は勉強が苦手そうだな」

「まあね。おかげで軍の試験の時は苦労したよ」


 軍は体力が大事だが、筆記試験もある。

 まあ、正規軍がバカでは困るからな。


「エーリカにでも勉強を見てもらったか?」

「それはプライドがね……妹みたいなものだし」


 ふーん……独学か。

 まあ、受かったのならそれでいいか。


「ユリアーナとは軍に就職してから出会ったのか?」

「まあね……ってめっちゃ聞いてくるね? どうしたの?」

「人のことを知ろうと思っているんだよ。俺は人に興味がなさすぎて失敗したからな」

「ふーん……まあ、軍で出会ったのは確かだよ。研修の時に話をしてね、それから」


 早いな……

 すぐに粉をかけてやがる。


「じゃあ、結構長いんだな。結婚せんのか?」

「早くない?」


 わからん。

 人生2回目だが、結婚なんて考えたことがない。


「結婚したら休みが合わないとかいう悩みもなくなるなって思っただけだ」


 その場合、ユリアーナは軍を辞めるんだろうか?


「まあねー……」

「あ、俺の言葉で変な決意をするなよ。フラれたら俺のせいになる」


 やめろよ。


「君のせいなんかにしないよ。まあいいや。はい、これが契約書」


 ルッツが契約書を渡してきたので読み込む。


「本当に期限が空白なんだな……」

「納品してもらった段階で書くから」


 まあいいけど……


「昨日、ユリアーナに木材を用意するように言ったが、いつくらいになる?」

「それは昨日のうちに搬入したよ。とりあえず、半分くらいだけど」


 仕事が早いな。


「民間の方は?」

「昨日のうちに契約を済ませたよ。おかげさまで予算を抑えられた。といっても君らより高いけどね」


 それは仕方がないことだ。


「わかった。契約書もこれでいいだろう」


 そう言ってサインを書く。


「支部長さんに確認を取らなくても良いの?」

「すべて任せられている。この業界の人間じゃない支部長が見てもわからんし、俺がいいならそれでいいんだ」


 ちゃんと一語一句確認した。


「ホントに王様だね……」

「ホントって?」

「ユリアーナが言ってた。リート支部はジークさんのワンマンだって」


 実際、それで合ってる。


「仕方がないだろ。新人に毛の生えた奴らと天下りの元軍人しかおらんのだから」

「大変だねー」

「そうでもない。お前の従妹もだが、助かっている」


 支部長も含めて、皆人間性がAランクの聖人だし。


「そう? あ、これがドックの鍵ね。納品の時に返してくれればいいから」


 ルッツが鍵をカウンターに置く。


「もう作業に入ってもいいだろ?」

「それはもちろん。じゃあ、頼むよ」


 ルッツが最後までさわやかな笑顔で帰っていったのでアトリエに戻った。


「どうでした?」


 席につくと、エーリカが聞いてくる。


「最初の研修の時にユリアーナに声をかけたんだってさ。そこからの付き合いらしい」

「へー……ルッツ君、やるなー」

「案外、手が早いんだねー」


 なー?

 あいつ、ナンパ本を持ってるのかもしれんな。


「いや、そこじゃないでしょ」


 アデーレがツッコんできた。


「わかってるよ。正式な契約も済んだし、ドックの鍵ももらったわ。作業に入れるようになったし、行ってみるか」

「おー、行きましょう!」

「楽しみだね」

「ガーゼや木箱よりかはいいでしょうね」


 どうだろう?


 俺達は準備をし、支部を出ると、港にあるドックに向かう。


「いやー、太陽と風が気持ちいいなー」


 暑いし、潮風がうっとおしい。


「嘘ばっかり」


 アデーレが笑った。


「言ってみただけだ。口に出したらユリアーナやルッツのようなさわやかさを手に入れられるかもしれんだろ」

「そんなジークさんは嫌よ」

「ジーク君にさわやかは無理だよー」

「ジークさんは今のままでいいと思います」


 不評……

 やっぱりキャラに合わないのは無理か。

 王都でヘレンとドロテーもやめろって言ってたしな。


 俺達はドックに到着すると、シャッターを開き、中に入る。

 すると、昨日とは違い、大量の木材が積まれていた。


「さて、作業に入る前にこれが設計図だ」


 そう言って、昨日、描き直した設計図を取り出す。


「あれ? こんなにありましたっけ?」


 設計図は10枚ある。


「描き直した。あんな1枚で船が作れるか。しかも、ミスもあったぞ」

「あ、はい……」

「ジーク君、これを昨日描いたの?」


 レオノーラが聞いてくる。


「ああ。今日から作業に入るなら昨日のうちに済ませないといけないからな」

「いや、そんなに急がなくても……何時に寝たのさ?」

「4時」


 ちょっと眠い。


「4時って……寝なよ」

「ジーク様は皆様のために頑張っておられたんです」


 ヘレンが謎のフォローをする。


「ジークさん……」

「優しいなぁ……」

「素晴らしい師匠ね」


 いや、下手くそな設計図にイラついて手が止まらなかっただけなんだが?

 悪態と舌打ちばかりだったが?


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ラスト三行わかりみが深い
前世の死因ってなんだっけ?過労死?過労死する前に刺されたんだけだっけ?w 刺されなくても近い将来間違いなく過労死してただろうなw
ん?これ民間にも同じ依頼出してるんだよね?これは…まずいw
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