表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

165/216

第165話 好き嫌い


 マルティナの勉強を見ていたが、終業時間となったのでマルティナを帰らせ、俺達も家に帰った。

 そして、エーリカの家に集まり、料理ができるのを待つ。


「うーん……」

「どうだったの?」


 一緒に席についているレオノーラが聞いてくる。

 なお、アデーレはエーリカの手伝い……手伝いっぽいことをしている。


「微妙……参考書を見ながらテストを受けさせても半分も取れてない」


 相変わらず、ひっでー……


「まあ、参考書も難しいやつは難しいからね。あの子はそもそも基礎ができてないんだと思うよ」


 この程度は基礎と言ってもいいんだがなー……

 小学生は辛いわ。


「化学への興味を少しでも物理に振ってくれればいいのに」

「家業がある子あるあるだね。そういう子は多いよ。ジーク君、どこまで見てあげるの?」


 どこまで……


「化学やポーションなんかの薬関係はハイデマリーの領分だし、せめて物理をちょっと苦手くらいなところまでは持っていきたい。あと銅鉱石を銅のインゴットにしたいな」


 マルティナは明日からもほぼ毎日、夕方に来るらしいし、できるとこまではやろう。


「よくやるね。デスクについていた私達のところまでジーク君の負のオーラが届いていたよ?」

「一応、一門だからなー……姪弟子って言うのか?」

「聞いたことないし、多分、違うんじゃない? テレーゼさんやハイデマリーさんを伯母弟子って呼んだらキレられそうだよ」


 テレーゼは口元を引きつらせ、ハイデマリーは髪の毛アタックだな。


「ハァ……俺は本当に弟子に恵まれたわ。お前らは教えたらできるし」


 勉強を教えていると、よく『こんなこともわからないのか?』って思うが、この歳で9級、8級の才女だ。

 教えればすぐに理解してくれる。


「でしょー」


 レオノーラが嬉しそうにうんうんと頷く。


「レオノーラ、ステンレス鋼はどれくらいで終わりそうだ?」

「明日には終わると思うよ」

「あ、私もー」


 キッチンのアデーレはこちらを振り向き、報告してきた。


「そうか。エーリカはどうだ?」

「今日で終わりましたよ。と言っても私は同じですから引き続きです」


 じゃあ、明日で全員が終わるわけだな。


「頼むわ」

「ジーク君、お疲れだねー。明後日の休みにでもどこかに出かける? デートしよーよ」


 レオノーラはデートが好きだなー。

 エーリカからのお使いでもデートらしいけど。


「出かけると余計に疲れんか?」

「うーん、まあねー……」


 基本的に俺達はインドアなんだ。

 まあ、デスクワークの錬金術師は大抵そう。


「だったらジークさんにもらったレシピに書いてあったプリンを作りますから皆で食べましょうよー」


 エーリカが完成した料理を持ってきながら提案してくる。


「プリンって何?」


 同じく料理を持ってきてくれたアデーレが首を傾げた。


「卵を使ったお菓子です」

「へー……気になる」

「ですよねー……あ、そういえば、プリンにも付いてましたが、レシピ本にたまに可愛い肉球マークが付いてるのは何です?」


 エーリカが聞いてくる。


「ヘレンが好きなやつだな」


 わかりやすくアピールしてただろ。


「あ、なるほど……優先して作るようにします」


 作れ。


 俺達は料理を食べ始め、話をしながら食事を続けていく。

 そして、夕食を終えたらいつものように勉強会をし、就寝した。


 翌日、出勤した俺達は朝からひたすら仕事をしていく。


「できたー」


 レオノーラが嬉しそうにラス一のステンレス鋼を掲げる。


「ランクは?」

「D!」


 確かにDだな。


「じゃあ、役所に納品してこい」

「あ、待って。私ももうすぐ終わるから一緒に行きましょう」


 アデーレの風魔石の方も終わるらしい。


「了解。ジーク君、待ってる間にガーゼを教えて。普通の布でいいの?」

「ダメ。医療用だし、ちゃんと規定がある」

「規定……」

「依頼は50メートルだが、幅は5センチって決まっている」


 これは協会と病院の協定で決まっているのだ。


「ふーん……材料は?」

「それは木材や布ならなんでもいい。ただ、ランクはCランク以上でBランクが望ましい」

「材料は安価なわけだ。でも、代わりに必要なのは技術か」


 ああ……なんて賢い奴なんだ。

 マルティナとは大違い。


「薄く作るのが難しいんだ。しかも、均一にな」

「へー……」

「3日で作れよー。お前は次のハイポーションが待ってるからな」

「おー! ポーション!」


 こうやって人参を吊るすのが大事。


「良い旦那様を持ったなー」


 そうか?

 そうは思えんが……


「できた……ジークさん、どう?」


 アデーレが完成した風魔石を見せながら聞いてくる。


「お前はどう思う?」

「C……いや、D? でも、私だし……E!」


 ネガティブな奴……


「出来を聞いているのではなく、鑑定しろって言ってるんだがな……Cランクはあるぞ」

「おー……Cランク……リートに来て良かった」


 良かったな。

 こいつの鑑定はエーリカ以上に時間がかかりそうだわ。


「じゃあ、納品してきてくれ。あ、ついでにエーリカが作ったキュアポーションも頼む」

「わかった!」

「よし、行ってくるわ」


 2人は立ち上がると、共同アトリエを出ていった。


「うーん……Eランクですかね?」


 エーリカが作ったキュアポーションを見せてくる。


「Dランクだな」

「難しいです……」

「鑑定士も国家資格になるくらいだからな。でも、エーリカなら地道にやっていけば必ず取れる資格だ。頑張れ」


 アデーレいわく、エーリカは断言する方が良いらしい。


「はい!」


 こいつらは簡単なのになんでマルティナは難しいんだろ?


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

【次にくるライトノベル大賞2025 エントリー】
https://x.gd/OSPb9
― 新着の感想 ―
まぁシナリオに関してはのんびりしてるのがいいからいんじゃなかろうか マルティナに対してのジークの反応は子供嫌いの見本みたいなもんだからしゃーない
マルティナは苦手教科をちゃんと克服しようとするだけ、学生にしては全然良いほうじゃろ。 しかし、このまま人が増えんかったら普通に支部がつぶれるのでは?
最初は弟子たちのイチャコラもまあ多少は良かったんだが 多すぎて マイナスにしかならないよ 物作りは別にいいえけど、恋愛系は少なければ少ない方が価値がでる ストーリー展開も正直言って全然ないし、この感…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ