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第147話 あ、ヘレンがエーリカのもとに……


 肉を食べたハイデマリーとテレーゼは今日はホテルで休むと言って帰っていった。

 俺達も片づけをすると、部屋に戻り、ゆっくりと過ごした。


 そして翌日。

 この日も朝から作業をしていく。


「ジークさん、こんなものでどうですかね?」


 エーリカがぱっと見て、Dランクとすぐに判断できるキュアポーションを見せてくる。


「それでいい。あとは数を作ってくれ」

「わかりました!」


 エーリカは嬉しそうに頷き、作業を再開した。


「ジークくーん」


 レオノーラが呼んでくるが、お前は自分でわかるだろ。


「良い調子だからそのまま続けろ」

「わかったー」


 レオノーラはちゃんとできてる。

 ただ、キュアポーションとは違い、ステンレス鋼は時間がかかるのだ。


「ジークさん、私には何かないわけ?」


 まあ、そう言ってくるわな。


「最近、風が来ないぞ」

「上手になったでしょ」

「そうだな。引き続き、頑張ってくれ」


 皆、問題なさそうだと思い、仕事を続けていく。

 そして、夕方になると、受付の方にハイデマリーの姿が見えた。


「エーリカ、今日は俺とハイデマリーで対応するから仕事を続けてくれ」

「わかりました」


 エーリカが頷いたので立ち上がり、ハイデマリーが肘をついて待っている受付に向かう。


「よう。休みなのに悪いな」

「一応は出張ですわよ。それにしても新築は良いですわね」


 ハイデマリーがキョロキョロと見渡す。


「俺の城だ」

「冗談になっていないので笑えませんことよ?」


 城主は支部長だよ。


「まあ、中に入れよ。マルティナはまだ来てない」

「中ねー……昨日以上に居心地が悪そうですわ……」


 ハイデマリーはそう言いながらも中に入ってくると、応接用のソファーに座ったので俺も対面に座った。

 すると、エーリカがお茶を持ってきて、テーブルに置く。


「どうぞ」

「どうも」

「いえ」


 エーリカはにっこりと笑い、デスクに戻っていった。


「あの子、ちょっと苦手ですね。なんか浄化されそう」


 最初にエーリカと会った時に感じたことをハイデマリーも思ったらしい。


「この町の人間はエーリカほどじゃないが、あんな感じだ」


 従兄のルッツもだし、その彼女のユリアーナも自然と笑っている。

 俺はそんなことできない。


「なるほど。だからあなたがそんな感じなわけですか……」


 ん?


「そんな感じとは?」

「いーえ」


 ふーん……


「テレーゼはどうした? 一緒に来るのかと思っていたが……」

「理由は2つ。他所の支部とはいえ、仕事場に連れてこない方が良いと判断した」


 確かにな……


「もう1つは?」

「昼から海を見に行こうってなりましてね……ですが、テレーゼが海を見つめて、ぴくりとも動かなくなりました……」


 うわー……


「あいつ、何連勤なんだ?」

「覚えていないそうです。テレーゼは真面目すぎましたね。同僚や弟子のリーゼロッテのためにと自分一人で頑張っていたようです」


 そんな中、ウチに来てくれたのか……


「あいつこそ、ひと月休めよ」

「さっき本部長に電話しました。魔導石製作チームを緊急で増員するそうです」


 そうしてくれ。


「海って言ってたけど、身投げせんよな?」

「そんな度胸もなければ愚か者でもありません」


 いや、死を選ぶ奴は衝動的に……

 いや! テレーゼは大丈夫だ!


「今度会ったら優しくしてやろ」

「そうしてちょうだい……さて、あれかしら?」


 そう言われたので振り向くと、受付にマルティナがいた。


「そうだ。ちょっと待ってろ」


 立ち上がり、マルティナのもとに向かう。


「あ、ジークさん、こんにちは」

「ああ。学校終わりなのに偉いな」


 昨日買った本によると、子供はこういう褒め方が良いらしい。


「大丈夫です。今日もよろしくお願いします」


 おー……ビビってない。

 あの本、すげー。


「先週話した本部の錬金術師が来ているから紹介しよう」

「ありがとうございます」


 マルティナを連れて、ハイデマリーが待つソファーに向かい、座らせた。

 そして、俺もハイデマリーの隣に腰かけると、すかさずエーリカがお茶とお菓子を持ってきてくれる。


「悪いな」

「ありがとうございます」

「いえいえー」


 エーリカはニッコリと笑い、デスクに戻っていった。


「さて、マルティナ。こいつが錬金術師協会本部の薬品生成チームのリーダーであるハイデマリーだ」

「ハイデマリー・ハインツェルですわ」

「わ、私はマルティナ・キルシュです。よろしくお願いします」


 マルティナがこれでもかというくらいに頭を下げる。


「ええ、よろしく……なるほどね」


 ハイデマリーが頷き、俺を見てきた。

 魔力を感じ取ったのだろう。


「自己紹介は済んだな? マルティナ、事前に言ったが、ハイデマリーはお前が目指す薬専門の錬金術師でその業界ではトップになる」


 一応ね。

 資格で言えば1級、2級のジジババ共がいる。


「はい!」


 期待と羨望の目……

 その目を絶望に歪ませるのがハイデマリーである。


「マルティナさん、ここに薬草と水があります。ポーションを作ってくださるかしら?」


 ハイデマリーが空間魔法から乾燥処理した薬草とフラスコに入った水を取り出し、テーブルに置いた。


「わかりました」


 マルティナは頷き、拙い手つきでポーションを作っていく。

 ハイデマリーはそれを何も言わずにじーっと見た。

 そして、しばらくすると、1つのポーションができあがる。

 ぱっと見で先週と同じランクを付けられない粗悪品に見えた。


「で、できました」


 マルティナが作ったポーションを渡すと、ハイデマリーが受け取り、じーっと見る。


「ジーク以下か……」


 ハイデマリーがそうつぶやくとマルティナがビクッとした。


「一緒にしてやるな。俺はマルティナが生まれる前からできたし、その時にはすでにお前より上だ」

「優秀な弟弟子で目が肥えるわ。わたくしはお前以上の錬金術師が欲しい」


 ハイデマリーが本性を現し始める。


「そんな奴はいないし、いてもお前なんかの下につかん」

「ふん。まあいいわ。その歳でこれが作れるなら優秀と言えるでしょう」


 ハイデマリーがそう言うと、マルティナがあからさまにほっとした。

 しかし、それを見たハイデマリーの顔がわずかに歪んだのを俺は見逃さなかった。


お読み頂き、ありがとうございます。

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また現在、本作の1巻が予約受付中なのでそちらの方もよろしくお願いします!

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…某婚活何某がイケメンで年収1000万、子供は要らないけど専業主婦希望とかほざいてる人に、無職に好条件の男が選ばれるわけねぇだろって伝えるアレに近いなにかを感じる。
エーリカのフェイスフラッシュ(笑顔)で性格がドブのハイデマリーさんも浄化されたかな?
本音で話す際にオブラートを何枚重ねるかって事なら、ハイデマリーにはオブラート1枚を期待しちゃうわ。 令和は過剰オブラートの時代だから2枚以下だと人非人扱いされそうでこわいけど。
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