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第139話 3人娘って優秀だったんだな……


 翌日、この日も朝からひたすら作業を続けていく。


「朝さー、玄関を開けたらやきとりの匂いがしなかった?」


 作業をしていると、レオノーラが聞いてくる。


「したな」

「良い匂いでしたけどね……」

「まあ、住宅街じゃないし、大丈夫でしょ」


 この辺りはアパートが少ないのだ。


「ちょっと焼きすぎちゃったね」


 結構な量があったな。

 俺とエーリカも食べたが、さすがにフルコースの後だから摘まむ程度だった。


「エーリカ、今日の弁当は?」

「なんと! やきとり弁当です!」


 やっぱりね。

 まあ、美味いからいいけど。


 俺達は午前中作業をし、昼になると、やきとり弁当を食べる。

 なお、ヘレンは嬉しそうに食べていた。

 そして、午後からも仕事をしていると、時刻は4時前になる。


「そろそろ来るな」


 もちろん、マルティナのことだ。


「ですね。今日はここまでにしておきます」


 エーリカが作業を止め、片付けを始める。


「アデーレ、そこを使うからこっちでやってくれ。まあ、いてもいいけど……」

「大人3人で囲むのは緊張するでしょ。ましてや、私はニコニコできない」


 アデーレはうっすらと笑う上品な笑い方をするからな。

 飲んだらニコニコするけど。


「残り時間はポーションかインゴット作りでいいわ」

「レオノーラの帽子が飛んだら悪いし、そうするわ」


 アデーレも片付けを始めた。


「ジークくーん」


 レオノーラが甘えた感じの声を出す。


「お前は続ければいいだろ」

「飽きたー」


 まあ、石とずっとにらめっこだからな。


「適当にポーションでも作れ」

「よーし、ジーク君の残りでマナポーションを作るよ」


 レオノーラが立ち上がってこちらに来たので席を譲った。


「Dランク以上にしろよ」


 レオノーラが作業を始めたので釘をさしておく。


「おねーさんに任せておきたまえ」


 同い年だろ。


「おねーさん、魔力が分散しているぞ」


 ちゃんと手元を見ろ。


「こうかな?」

「そうそう」


 レオノーラに指導をし、エーリカがお茶の準備をしていると、受付の方に女の子が見えた。


「来たね。先生の出番だよ」

「なりたくない職業で五指に入るな」


 教師なんて絶対に嫌だ。

 子供も親も自分勝手な奴の巣窟じゃないか。


「そうだろうねぇ……」


 エーリカが受付に行き、マルティナを中に入れる。

 そして、ソファーに座らせ、お茶を置いたので俺もソファーに向かった。


「あ、こ、こんにちは……」


 怖がられているようにしか見えんな。


「ああ、学校終わりなのに大変だな」

「いえ……」


 エーリカ、エーリカ!


「マルティナちゃん、この前、お母さんと話をしたよ」


 エーリカの膝を叩くと、話し始めてくれた。


「はい。お母さんもそう言ってました。あ、お母さん、退院しました」


 翌日に退院するって言ってたしな。


「それは良かったね」

「はい! あ、それで先生からここに来るように言われて来たんですけど」

「うん。ウチの支部長から許可を得られたし、マルティナちゃんの勉強を見てあげることにしたんだよ」

「ホントですか!? 嬉しいです! でも、お母さんが言ってましたけど、協会的にはそれでいいんですか? お金まで払うって……」


 裏があると思うわな。


「えーっとね、私達的にも一応、メリットがあるんだよ」

「そうなんです? ないような……」


 ないな。


「ジークさん……」


 エーリカが助けを求めてきた。


「マルティナ、俺達は人員が欲しいんだ。将来、ここで働いてくれる錬金術師がな」

「え? でも、私は……」


 家を継ぐんだろ。


「お前の事情も目的も家のこともわかっているし、それは好きにすればいい。ただ、人生は何があるかわからん。もしかしたらお前が親とケンカして家出するかもしれんだろ」


 ウチのレオノーラのように。


「そ、そんなことしません」


 マルティナがムッとする。


「可能性の話だ。お前の将来のことは俺達にはわからん。俺達はその小さな可能性のために自分達の職場をアピールするだけなんだ。もし、お前がウチに就職しなかったとしてもお前の話を聞いた友人が興味を持ってくれるかもしれない。さらには先生が推薦してくれるかもしれない。こういう地道なアピールが大事になってくるんだよ。ただ待つだけでは優秀な人材は集まらないんだ」

「へ、へー……すごいですね。色々と考えています」


 ワークショップみたいなものだな。

 しかし、エーリカ……

 お前までそうなんだーって顔をするんじゃない。


「だから先生や友達には優しいお姉さんがいたって伝えるんだぞ。俺のことは可愛い猫を飼っている人ということ以外は言うんじゃない」


 間違っても怖いとか言うなよ。


「わ、わかりました。あ、あの、それと先生がこれを提出しろって」


 マルティナがそう言ってカバンから封筒を取り出して渡してきた。


「んー? 何だこれ?」


 金じゃないよな?


「さあ? とにかく、渡せばいいと……」

「ふーん、何だろ……?」


 封筒を開けて、中に入っている紙を見てみる。

 紙はマルティナの成績表であり、これまでのテストの点数が書いてあった。


「へー……」


 化学は100点だ。

 物理は……32点……

 ひっで……

 こんな点数を取ったら自殺するわ。


「あ、あの……何ですか、その紙?」


 マルティナが不安そうに聞いてくる。


「……ジークさん、顔が苦虫を噛み潰したようですよ」


 エーリカが小声で教えてくれるが、物理32点を見ればそうなる。

 錬金術師にとって、必須なのがこの化学と物理なのだ。


「いや、何でもない。マルティナ、俺達のところで何を学びたい?」

「え? それはやっぱり薬関係の錬金術です」


 物理の座学って言えよ。

 マジかよ、こいつ……


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