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第137話 ドロテー「図々しい……」


 支部長から重い話を聞いた俺達の結論は保留だった。

 そして、仕事を再開し、それぞれが依頼のものを作っていく。


「ジークさん、どうですかね?」


 エーリカが毒消し草から抽出した成分が入った試験管を見せてきた。


「Eランク。Dは欲しいな」

「Eかー……」

「別の成分が混じっているんだ。頑張ってくれ」


 まあ、抽出機ならスイッチ一つなんだが、これは次の8級試験のためなのだ。


「ジーク君、激しく飽きてきたんだけど……」


 今度はレオノーラが愚痴をこぼす。


「代わり映えしないからな……錬成しつつ、楽しいことでも考えろ」

「イカサマしても負けたジーク君のことを考えるよ」


 おい……

 あれはヘレンが間違えたんだよ。


「アデーレ、涼しい風が来ないぞ」


 腹いせにアデーレの邪魔してやろ。


「御自慢の魔法で涼んだらどう?」


 俺の風魔法?


「お前が見たら卒倒するぞ」

「レオノーラに聞いた。オークをバラバラにしたんですってね。私はあなたに誘われても森デートは拒否すると心に決めたわ」


 そもそも危ないから森デートなんかせんわ。


「あれはひどかったですね」

「そんな中で採取を命じられても大人しく従った私達は亭主想いだよ」


 あれは本当にすまんかった。

 俺もあんな感じになるとは思わなかったんだ。


 悪いなーって思っていると、風が吹き出した。


「想像しちゃったじゃないの……ねえ、親愛なる師匠さん、頑張っている弟子の邪魔をしないでくださる?」

「悪い、悪い」


 俺達はその後も作業をし続けると、昼になり、昼食を食べる。

 そして、午後からも同じく作業を続けていくと、終業時間となった。


「今日は終わりだな」

「頑張りましたー」


 エーリカが腕を伸ばす。


「さて、アデーレ、私達は外食だね」

「そうね。どこ行く?」


 レオノーラとアデーレが相談を始めた。

 今日はエーリカとサイドホテルに行く日なのだ。


「貴族令嬢らしく、やきとり屋にでも行こうか」

「悲しい令嬢だこと」

「君、鳥肉が好きじゃないか」

「ウチはそれが特産だからね」


 へー……

 山だからかな?


「では、御二人さん、良い夜を」

「楽しんできてね」


 2人はそう言って、先に帰っていった。


「いや、一緒に帰ればいいだろ」

「レオノーラさんとアデーレさんはわかりやすくて、自分の時もそうしてほしいってことだと思います」


 雰囲気ってやつか……

 本当に好きだねー。


「帰るか」

「はい!」


 俺とエーリカは支部を出て、30秒で着くアパートに帰る。


「では、6時半すぎにここで」


 例によって、準備があるだろうから7時に予約したのだ。


「ああ」


 俺達の部屋の間まで来ると、満面の笑顔を浮かべるエーリカが部屋に入っていったので部屋に入り、テーブルについて、少し休憩する。


「あいつら、楽しんでるな」

「実際、楽しいんですよ。ジーク様、6時半前には出るんですよ」


 エーリカは早めに待っているだろうしな。


「わかってる。車も手配するか」


 この町にもタクシーみたいなのはある。

 エーリカは以前、ドレスをちょっと恥ずかしがっていたし、歩くよりも車で行った方が良いだろう。


「気遣い……ジーク様……ご立派になられて……」


 そこまでのことか?


 俺は車を手配する電話をし、その後は時間までヘレンを撫でながら過ごしていく。

 すると、ヘレンの尻尾がピンと立った。


「エーリカさんです」


 え? まだ6時15分……


「あいつ、早いな……」

「エーリカさんですから」


 さすがは聖女と呼ばれるだけはある。

 俺しか言ってないけど。


 俺は立ち上がると、玄関に向かい、扉を開ける。


「あ、ジークさん」


 この前も見たちょっと薄着のドレスを着たエーリカが扉の前で待っていた。


「早いな」

「遅れたら悪いと思ったので……」


 まあ、そもそも家が真向かいなのでどうとでもなるんだがな……

 それよりも……


「似合っていると思うし、やはり普段の印象と違うから良いな」


 これが最適解。


「あ、ありがとうございます。アデーレさんに色々と教わったんですよ」


 ん? 何を?

 あ、薄っすらとだが、化粧してる。

 前に言ってた相談ってこれか。


「雰囲気が変わるな。いつものお前も良いが、そういうのも悪くない」


 セーフ?


「ありがとうございます……」


 セーフ。


「ちょっと早いが、行くか……エスコートはいるか?」

「それはいいです。相応というものがあります」


 ホントにな。

 庶民にそんなことを期待されても困るわ。


 俺達は歩いていき、表の通りに出る。

 すると、支部の前には手配した車が停まっていた。


「エーリカ、車を頼んだからそれで行こう」

「おー……ありがたいです。正直、知り合いに見られるのが恥ずかしかったりします」


 やっぱりか。

 ましてやエーリカは地元だからな。


 俺達は車に乗り込むと、行き先を告げ、到着を待つ。


「なんか変な感じです。王都は知らない土地でしたし、ワクワクしかありませんでしたが、生まれ育ったこの地で自分がこんな格好をするとは思いませんでした」


 ……そこまでのことだろうか?


「俺も紳士服を買った方が良かったか?」

「あー、良いですね。かっこよさそうです。というか、レオノーラさんが鑑定士に受かったら王都の高い店に連れていかれるんじゃなかったでしたっけ?」


 あ、ドレスコードの店だわ。


「買うのか……」

「似合うと思いますよー」


 うーん、背格好がほぼ一緒だし、クリスに頼んで恵んでもらおうかな……

 ドロテーの面倒を見てやったんだからもう着なくなった服くらい譲ってくれるだろ。


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
ちゃんとするならきちんと作った方が良いんだけどね クリスのお下がりって貴族令嬢二人から見たらどうなんだろ? しかし、そういう服が欲しいって言ったらクリスどころか本部長が嬉々として作りに連れて行きそう
成長したなー
師匠兼母親の本部長が 嬉々として誂えてくれそう
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