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第128話 この町の人間は見る目がない


 サイドホテルの予約をして、3人が帰ってくるのを待っていた。

 すると、受付の方から人の気配がしたので帰ってきたのかなと思い、見てみる。


「ん?」

「お客さんですかね?」


 受付には青みがかかった黒髪の女の子がおり、こちらを覗いていた。


「おい……俺しかおらんぞ」


 客担当の人当たりの良い聖女エーリカがいない。


「ジーク様が対応なさるしかありませんね。さすがに支部長さんはないですし」


 上司にそんなことをさせられないし、支部長は元軍人なだけあって見た目がちょっと怖いからない。


「行くか……ヘレン、可愛げを出して、俺の悪性を薄めろよ」

「悪性ではないと思いますが、わかりました」


 ヘレンが頷いたので抱え、受付の方に行く。

 すると、女の子がおずおずと1、2歩下がった。


「あ、心が折れそう」


 女の子は10代前半に見える。

 そんな子に不審者として見られてしまった。


「大丈夫ですって」

「そうか? おい、初対面の人を怖がるなんて失礼――」

「にゃー!」


 女の子に苦言を呈しようとしたらヘレンが飛び上がり、顔に張り付いてきた。


「何だよ」

「女の子! 相手は子供ですよ!?」

「わかったから」


 お客さんだったな。


「何か御用ですか?」


 ヘレンを剥がすと、女の子に聞く。

 しかし、女の子はいつの間にか5メートルは距離を取っていた。


「あ、な、何でもないです……」


 女の子はさらに数歩、後ずさる。


「怖いなら1時間後に来てくれ。優しいお姉さんが帰ってくるから」


 いつもニコニコのエーリカお姉さん。


「あ、いや、その……」


 女の子はおどおどしながら1、2歩前に出てきた。


「……ヘレン、行け」


 指示を出すと、ヘレンが飛び上がり、受付の向こうに着地する。

 そして、女の子の足元に行き、ぐるぐると回った。

 人懐っこい猫っぽくて非常に可愛らしい。


「猫さん?」

「にゃー」


 女の子はちょっと笑顔になり、ヘレンを抱える。


「お名前は?」

「ヘレンです」

「え? 猫がしゃべった……? 幻聴じゃなかったー!?」


 女の子はびっくりしたようで踵を返すと、正面玄関の方に駆けだした。


「いや、ヘレンを置いていけよ」


 ヘレンにビビったのなら連れていくな。

 ウチの子を誘拐すんな。


 何してんだろと思いながら女の子の後ろ姿を眺めていると、正面玄関が開き、3人娘が入ってきた。

 どうやら買い物から帰ってきたらしい。


 女の子は3人娘を見ると、ピタッと足を止める。


「あれ? お客さん?」

「女の子?」

「ヘレンさんを抱えているようだけど?」


 3人娘も状況がよくわかっていないようで首を傾げた。


「あ、先輩」


 女の子がエーリカの方を見ながらつぶやく。


「え? 私?」


 エーリカが自分の顔を指差すと、女の子が頷いた。


「えーっと、もしかして、学校の子?」

「はい……高等部の2年のマルティナ・キルシュです」


 学生か……

 え? 高等部?

 ってことは16、7か?


 見えねーって思ったが、すぐに魔女っ娘を見て、まあ、人によるかと思った。


「うーん、まあ、中に入りなよ。話があるんでしょ」


 エーリカがマルティナとやらの背中にそっと触れ、促す。


「はい」


 3人娘がマルティナと共に受付の中に入ってきた。


「ジークさんは何をしているんですか?」

「客の対応をしようと思ったら怖がられ、さらにはヘレンを奪われた」

「……どういうことです?」


 エーリカはまったくピンと来ていない様子だ。


「知らん」

「えーっと、まあ、一緒に話を聞きましょう」


 俺達は中に入ると、マルティナを応接用のソファーに座らせ、その正面にエーリカが座った。

 残りの俺達3人はデスクにつき、その様子を眺めている。


「エーリカの知り合いかな?」

「同じ学校っぽいけど、高2なら被ってないでしょ」


 エーリカは20歳だから確かに高等部では被っていないと思う。


「この町の魔法学校って高等部と中等部が同じ場所にあるんじゃないか? だったらありえるだろ」

「うーん、どうかなー?」

「エーリカさんは知らない感じだったわよ」


 確かにマルティナはエーリカを知っていた様子だったが、エーリカは知らないっぽい。


「ジークさーん、何してるんですかー? 来てくださいよー」


 エーリカが呼んでくる。


「え? 俺も行くの?」


 レオノーラとアデーレを見る。


「うん。私は舐められるんだ」

「私は子供に怖がられやすいの」

「俺もだけど?」


 多分、アデーレの比じゃない。


「君がリーダーじゃないか」

「任せたわよ」


 仕方がないかと思い、立ち上がるとソファーの方に向かう。

 そして、エーリカの横に腰かけたのだが、それを見ていたマルティナがヘレンを抱えたままビクッとした。

 どうでもいいけど、ヘレンを返してくれないかな?


「ジークさん、こちら、私が通っていた魔法学校の後輩に当たるマルティナさんです」


 さっき聞いたな。


「知り合いか?」

「いえ……ただ、以前に錬金術師の勧誘をするために学校に行ったんですけど、その時に私を見たそうです」


 あー、人集めのために母校に行ってもらったんだった。


「なるほどな」

「マルティナちゃん、こちらがジークさん。この支部のリーダーだよ」


 エーリカが紹介すると、マルティナがおずおずと俺を見てくる。


「新聞で見ました……すごくかっこよかったですし、すごく感銘を受けました。尊敬してます」


 あー……あの嘘100パーセントの新聞記事を読んだんだ……

 これ、対応を間違えるとヤバいぞ。


「ジークさんは本当に素晴らしい人なんだよー」


 おい……

 引き返せなくなるようなことを言うな。


「わ、私もあんな大人になりたいと思いました……」


 あ、ダメだこれ……

 よし、エーリカにしゃべらせよう。


書籍化が決まっている本作ですが、編集さんより許可が降りましたので情報を公開します。

発売日はまだ発表できませんが、イラストレーターさんはみきさいさんが務めてくださり、カドカワBOOKS様より出させていただきます。

また、キャラクターデザインを随時、お見せしようと思います。


そういうわけで活動報告にてお見せしております。


よろしくお願いします!

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