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第125話 レオノーラ「スヤスヤ……」


 アデーレと作業をしながら待っていると、エーリカとレオノーラが帰ってきた。


「ただいまー」

「遅くなってすみません。コーヒー飲みます?」


 エーリカが聞いてくる。


「飲む」

「あ、エーリカさん、疲れたでしょ。私がやるわ」


 アデーレが気遣う。


「そうですか? じゃあ、お願いします。カップも買ってきましたよー」

「へー……」


 2人はお茶を準備しだした。

 なんだかんだで結局、エーリカもやっている。


「ルーベルトにお土産を渡したか?」


 席についているレオノーラに聞く。


「うん。喜んでたよ。そっちは?」

「ルッツに渡した。苦笑いを浮かべながら喜んでたぞ。あれはまだ隠しているな」

「すぐにバレるのにねー。私達みたいに大っぴらにしないと」


 はいはい。


「まあ、気恥ずかしさがあるんだろ」


 多分、そう思っているのはユリアーナの方っぽいけど。


「そうかもねー……あ、これ。ルーベルトさんがこの中から依頼を選んでくれってさ」


 

 背が低いレオノーラは立ち上がると、頑張って身体を伸ばして紙を渡してきたので受け取る。


「役所もこの形式か……」


 紙にはルッツからもらったリストと同じようにずらーっと依頼が並んでいた。


「軍の方も?」

「ああ。好きなのを選べってさ」

「へー……どうするの?」

「ちょっと考えてみる」


 うーん……


「はい、ジークさん、コーヒーよ」


 アデーレがコーヒーをデスクに置いてくれた。


「悪いな……」


 コーヒーを一口飲み、考え続ける。

 その間にアデーレとエーリカも席につき、コーヒーを飲みだした。


「ジークくーん、何をそんなに悩んでいるの?」


 レオノーラが聞いてくる。


「今後の方針。お前ら、この前の試験を受かっていると仮定したら3ヶ月後の試験を受けるか?」


 国家錬金術師の資格試験は年に4回開かれるのだ。

 よって、次は3ヶ月後の夏だ。


「受けようと思っていますね」

「私もー。まあ、その前に鑑定士を受けるけどね」

「私はどうかな……? 7級はさらに難しいから厳しいと思う……うーん、でもまあ、受けてはみようかな。あなたが言うように試験の感じを掴めるから次に繋がる」


 エーリカは準備をすれば問題ないだろう。

 レオノーラは鑑定士の試験との兼ね合い次第だ。

 アデーレの7級はちょっと難しいが、目指せないレベルではない。


「目先のボーナスと昇格だと? ボーナスや職能給を上げる方針か資格試験に繋がる依頼を受けるかで悩んでいるんだ」

「昇格ですかね?」

「昇格すれば給料も上がるしね」

「長期的な目で見ればそっちが良いのは確かよ。もっとも、ジークさんにとってはボーナスでしょ」


 まあ、そうなるな。

 俺はどちらにせよ、資格試験は受けられないからボーナスが上がった方がいい。


「いや、俺のことは考えなくてもいい。自分のことだけを考えてくれ」


 俺は弟子の成長を邪魔してまでボーナスを得ようとする人間ではないのだ。

 そう思っていると、ヘレンが感動した目で俺を見ていた。


「そういうことだったら資格試験に繋がった方がいいわね。じゃないと、私は確実に落ちる。筆記は勉強すれば何とかなるけど、実技だけはね……」


 それはそうだろうな。


「じゃあ、そういう方向でいくか」

「お願いします」

「任せた」

「頑張りましょう」


 支部も新しくなり、やる気もある。

 目指せるものは目指させるか。

 まあ、エンチャントもできるし、何とかなるだろ。


「となると、苦手分野をやらせた方が良いか」


 こいつらの苦手は……


「あ、私はポーションになりそうです」

「私はインゴット系だね」

「え? 私、エンチャント?」


 よく理解しているようで……


「エーリカは軍からのキュアポーションな。レオノーラは役所からのステンレス鋼。アデーレは船で使う風魔石で良いだろ」


 こんなもんだろ。


「キュアポーションかー……」

「ステンレスって何だっけ?」

「風魔石……あのドライヤーに入ってるやつね」


 3人が3人共、いまいちピンと来てない感じだ。


「まあ、やり方はその都度教えるわ。でも、それは来週からな。今週は回復軟膏と火曜石を終わらせてしまおう」

「よーし!」

「頑張ろー」

「来週……あ、落ちたら慰めてね」


 受かってるってば。


「じゃあ、そういうわけで頑張ってくれ」

「ジークさんはどうするんですか?」


 エーリカが聞いてくる。


「俺は細々とした依頼を受けるわ。抽出機と分解機が届くし、それらを使いながらマナポーションとかを作ろうと思う」


 多分、魔力草も余るだろうし、有効活用しよう。


「なるほど。わかりました」

「エーリカ、ルーベルトの方に電話してくれ。俺はルッツに依頼を受ける旨を伝える」

「了解です」


 俺とエーリカはそれぞれ軍と役所に電話し、受ける依頼内容を伝え、電話を終えると、仕事を再開する。

 この週は新しい職場で心機一転頑張りながら仕事をしていき、着々と火曜石と回復軟膏を作っていった。

 また、仕事を終えると、俺の昇格祝いもしてくれたし、まだ時間があるとはいえ、簡単な勉強会もした。


 1週間かけて、火曜石と回復軟膏を作り終え、役所と軍に納品すると、休みの日になった。

 この日は朝から予定もなかったのでヘレンと遊んでいたのだが、レオノーラが迎えにきたのでエーリカの部屋で駄弁っていた。

 そして、夕食も食べ終え、解散したのだが、言っていた通り、アデーレが訪ねてきたので2人でウィスキーのロックとハイボールを飲む。


「正直ね、受かっているかもなーとは思うわけよ」

「そうですね」

「でもね、不安なのよ!」

「アデーレさんなら大丈夫ですよ」


 なんか酔っぱらったアデーレがヘレンを抱えて絡んでる……


「その根拠は?」

「ジーク様がそうおっしゃるならそうなるのです」


 というか、ヘレンもその場にいたから受かっていることを知っているんだよな。


「この猫ちゃん、ジーク様、ジーク様ね」

「そりゃ使い魔ですんで」

「いいなー。可愛いなー。私もこんな使い魔が欲しい」


 羨ましいか?

 でも、やらんぞ。


「大丈夫ですよ。ずっと一緒です。お弟子さんじゃないですか」

「あなた、レオノーラみたいなことを言うわね……」

「ほら、アデーレさん、ジーク様のグラスが空いていますよ。注ぐんでしょ。ジーク様に接待してあげてくださいよ」

「はいはい」


 アデーレはヘレンを抱えたまま立ち上がり、俺のグラスを取って、キッチンの方に行く。

 そして、冷蔵庫から氷を取り出し、ウィスキーを注いだ。


「濃そうねー……」

「ジーク様はそれがお好きなんですよ」

「知ってる。ちびちび飲むんでしょ」


 前にそう言ったからな。


「そうです。ささ、それをジーク様に渡してください。あ、隣ですよ、隣」

「はいはい。愛情ね、愛情」


 アデーレは隣にやってくると、座って、ウィスキーのロックを渡してきてくれた。


「どうも。お前、飲みすぎじゃないか?」

「大丈夫!」

「なあ……いつ帰るんだ?」


 もう2時を過ぎているんだけど……


「一緒にいてよぅ……眠れないのよぅ……どうせ落ちてるんだぁ……」


 えー……泣くなよ……


お読み頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
急に可愛くなった。
段取り良すぎて草 ゆうのうじょうし。 アデーレさんよわよわで良き()
これはオーケーな雰囲気
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