表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

124/216

第124話 新しい仕事


 アデーレと話をしていると、軍の詰所にやってきた。


「ここだな」

「へー……王都やウチの実家と比べると小さいですね」

「この町の軍は主に町の警備が仕事らしいから一ヶ所に大きな建物を置くのではなく、あちこちに小さいのを置いているみたいだな」


 交番みたいなものだ。


「戦争とは無縁だからでしょうかね?」

「多分な。良いことだろ」

「確かにそうです」


 うーん……


「いつまで敬語なんだ?」

「それもそうね」


 アデーレが元に戻った。


「なあ、その敬語の切り替えは何なんだ?」

「雰囲気」


 出たよ……


「上司へのリスペクトかと思ったわ」


 主任だし。


「そもそもあなたは師匠だけどね。敬語の方がお好み? エーリカさんはともかく、レオノーラに言おうか?」


 エーリカは元々敬語少女だしな。

 しかし、レオノーラ……


「何だろう? レオノーラの敬語を想像すると、他人行儀感がすごいな」


 フランクでフレンドリーな話し方だからちょっと怖い。


「あの子、敬語が得意じゃないのよ。だから敬語を使わないといけない相手にはびっくりするほど言葉数が少なくなるわよ」


 確かにおしゃべりなレオノーラが支部長と話しているところをあまり見たことがない。

 いや、飲み会の時にはタメ口をきいていた気もする……


「まあ、自由人だからな」

「旦那さんが1人、奥さんが2人いるしね」

「言葉にすると意味がわからんな」

「まったくもって」


 俺達は苦笑いを浮かべ、詰所に入る。

 すると、すぐにルッツを見つけたので受付に向かった。


「よう、ルッツ」

「ごきげんよう」


 俺達が声をかけると、ルッツがこちらにやってくる。


「やあ、2人共、帰ったんだね。王都はどうだった?」

「そこそこ面白かったな。あ、これ、お土産」


 包装紙に包まれた箱を取り出し、カウンターに置いた。


「おー! すまないね! でも、これ何? ちょっと重いんだけど……」


 ルッツが箱を持ちながら聞いてくる。


「女性陣が2人にはこれが良いだろうってことでお揃いのコップを買った」

「お幸せに」

「いやー……反応に困るねー……でもまあ、ありがとう。向こうも喜ぶと思うよ」


 ユリアーナの名前を出さないところを見ると、まだ隠しているらしい。

 でも、時間の問題か、すでにバレていると思うな。


「それでな、王都で仕事したんだが、その際に魔力草をもらってきたわ。それで回復軟膏を作ろうと思う」

「それは助かるね。君らが帰ったら採取の依頼を別件で出そうかと思っていたんだ」


 それは本当に良かったわ。


「だから近いうちに納品できると思う」

「ありがたいね」

「そういうわけで他に仕事はないか? 新しい支部になったし、仕事がしたいんだ」


 やる気に満ちていると言っても過言ではない。


「新しい支部を見たよ。新築は良いねー。仕事はお願いしたいことがいくつかあるよ。適当に選んで」


 ルッツがそう言って、紙を渡してきたのでアデーレと一緒に見てみる。


「リストか……」

「結構あるわね」


 ずらーっと依頼が書いてあり、その数は30以上ある。


「錬金術師の依頼なんかいくらでもあるからね。悪いけど、今まではお任せできそうなものしか頼んでない。でも、ジークさんやアデーレさんも来たし、大丈夫かなって」


 やっぱり今まではお情け依頼だ。


「全部はやらんぞ」

「さすがにそれは無理でしょ」

「いや、やれって言われればできるけどな。でも、残業はしたくない」

「この数をできるのはすごいね……」


 抽出機と分解機が来るし、4人で残業の毎日を送れば、できないこともない。

 でも、それはやらないと決めている。


「緊急依頼として処理してくれるならの話だ」

「さすがに理由もなくそれはできないよ。監査に引っかかる」

「おや? いつぞやは理由がほぼなかったような……」


 少佐ね。

 今思うと、あれからアウグストまで繋がっているんだからすごいわ。


「その件のせいで監査が厳しくなってるんだよ」


 お気の毒に。


「なるほどな。残った分は民間に回すのか?」

「そうなるね」


 じゃあ、この中からできそうなのを好きに選んでいいわけだ。


「アデーレ、どうする?」

「エーリカさんとレオノーラが役所に行ってるわけでしょ? そっちの話を聞いて、相談しない?」


 確かにそれが良いな。


「ルッツ、この紙をもらってもいいか?」

「どうぞ。受ける依頼が決まったら電話してよ」

「了解」


 俺達は用件が済んだので詰所を出て、支部に戻っていく。

 そして、支部に帰ったのだが、エーリカとレオノーラはまだ戻ってきていなかった。


「あいつらは買い物か」


 席につきながら空席となっている隣と斜め前を見る。


「むしろ、そっちの方が時間がかかるでしょ」


 アデーレがそう答えながら回復軟膏を作り始めたので俺も火曜石を作り始めた。


「回復軟膏はどのくらいでできそうだ?」

「2人もすぐに作れるようになったし、3人でやっていれば1週間ってところかしら? これは時間がかかるものじゃないしね」


 100個だとそんなもんか。

 となると、来週からは完全に空くわけだ。


 しかし、どうしようかねー?

 儲けを考えるならばポーションなんかの作ったことがある簡単なものを3人娘に作らせ、難しいのを俺が作ることだ。

 営利組織ではないとはいえ、そういう利益も査定に入るし、職能給ということで給料に直結する。

 もっといえば、ボーナスも出るからそれが大きい。

 目先の利益か……それとも、次の試験に向けて、勉強させるという意味で別のことをやらせるか……

 まあ、エーリカとレオノーラが戻ったら3人娘の意向を聞くか。


お読み頂き、ありがとうございます。

この作品を『おもしろかった!』、『続きが気になる!』と思ってくださった方はブックマーク登録や↓の『☆☆☆☆☆』を『★★★★★』に評価して下さると執筆の励みになります。


よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【新作】
宮廷錬金術師の自由気ままな異世界旅 ~うっかりエリクサーを作ったら捕まりかけたので他国に逃げます~

【新刊】
~書籍~
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(1)
左遷錬金術師の辺境暮らし 元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました(2)

週末のんびり異世界冒険譚 1 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~
週末のんびり異世界冒険譚 2 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

【現在連載中の作品】
その子供、伝説の剣聖につき (カクヨムネクスト)

週末のんびり異世界冒険譚 ~神様と楽しむ自由気ままな観光とグルメ旅行~

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~

バカと呪いと魔法学園 ~魔法を知らない最優の劣等生~

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~

最強陰陽師とAIある式神の異世界無双 〜人工知能ちゃんと謳歌する第二の人生〜

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~

【漫画連載中】
地獄の沙汰も黄金次第 ~会社をクビになったけど、錬金術とかいうチートスキルを手に入れたので人生一発逆転を目指します~
がうがうモンスター+
ニコニコ漫画

廃嫡王子の華麗なる逃亡劇 ~手段を選ばない最強クズ魔術師は自堕落に生きたい~
カドコミ
ニコニコ漫画

35歳独身山田、異世界村に理想のセカンドハウスを作りたい ~異世界と現実のいいとこどりライフ~
カドコミ
ニコニコ漫画

左遷錬金術師の辺境暮らし ~元エリートは二度目の人生も失敗したので辺境でのんびりとやり直すことにしました~
ガンガンONLINE

【カクヨムサポーターリンク集】
https://x.gd/Sfaua

【次にくるライトノベル大賞2025 エントリー】
https://x.gd/OSPb9
― 新着の感想 ―
儲けをとるかと、仲間たちの将来を考えた成長をとるかを考えた上で、 それを本人たちとも相談して決めようとか…… ジーク、人間力50点くらいになったんじゃない? 成長したなぁ、よく頑張ったなぁ
着々と理想の上司道を歩んでらっしゃる。 こういう積み重ねがたまらんわ。
立派に師匠やってるなぁ
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ