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第112話 変わるもんだわ ★


 レオノーラが戻ってきて、書類を書いてくれたので確認をする。

 3枚の書類を眺め、問題ないと判断したので作業を再開した。

 そして、そのまま作業を続けていると、エーリカが顔を上げる。


「ジークさん、もうお昼になりますけど、昼食はどうしますか?」


 エーリカにそう言われて時計を見ると、12時に近かった。


「テレーゼが教えてくれた定食屋にでも行くかー。多分、あいつも行くだろうし」

「いいですね。だったら誘って一緒に行きましょうよ」


 本当にコミュ力の高い子だわ。


「どうする?」


 レオノーラとアデーレに確認する。


「いいんじゃない?」

「あ、私はパス。マルタさんに誘われたから2人で食べに行くわ」


 アデーレはマルタとか。

 まあ、クラスが違えど同級生だし、友人らしいからな。


「俺の悪口大会はやめろよ」

「そんなことしないわよ。私はあなたに不満はない」


 ホントかー?


 俺がちょっと怪しんでいると、ノックの音が聞こえ、扉が開く。

 すると、テレーゼ、リーゼロッテ、マルタの3人が部屋に入ってきた。


「おー……私の部屋がジーク君ファミリーに占拠されている」

「してねーわ。それよりも何の用だ?」

「ご飯に行こうよー」


 まあ、メンツ的にそれだろうな。


「こっちもその話をしていて、お前らを誘うつもりだったわ。アデーレ、マルタが来たぞ」

「ええ。行きましょうか」

「うん」


 アデーレとマルタは先に部屋を出て、昼食に行ってしまった。


「リーゼロッテ、こっちの優しそうな銀髪がエーリカで金髪魔女っ子がレオノーラだ」

「よろしくです」

「よろしくー」


 2人が明るく挨拶をした。


「こんにちは。テレーゼ様の弟子のリーゼロッテです。ジークさんに弟子ができたと聞いた時は驚きましたが、納得です」


 何を納得したのかねー?

 30点に耐えられる人間性だろうけどな。

 こいつらは雰囲気からして物腰が柔らかいし。


「私達も行こうよ。いつものところでいい?」

「ああ。エーリカとレオノーラは初めてだしな」

「ジーク君、お弟子さん中心で考えるんだね。偉いなー」


 そうか?


「俺は毎食がパンでもいいくらいだぞ」

「そうだったね……まあ、いつもあそこで日替わりを食べている私も変わらないか」


 俺達も本部を出て、昼食に向かった。




 ◆◇◆




 私はマルタと共に本部を出ると、昔、よく行っていた定食屋に来て、昼食を食べる。


「アデーレさー、リートはどう?」


 マルタが付け合わせのパンをちぎりながら聞いてくる。


「良いところよ。それにちゃんと錬金術の仕事ができる。これが一番大事ね」

「そんなに受付が嫌だったんだね。華もあるし、ちやほやされるでしょ」

「そんなことがやりたいならデパートの店員にでもなってるわよ。高いお金を出してもらって田舎から王都に出てきたのよ? それにちやほやって言うけど、めんどくさいことの方が多いわ」


 名前も知らないお客さんから手紙をもらったこともある。

 あの時は本当に悩んだ。


「無視する人もいるもんね」


 ジークさんか……


「今は無視しないでしょ」

「それよ、それ。あれ、誰? 人間が変わりすぎじゃない?」


 まあ……


「ジークさんも思うところがあったんじゃない? 今は普通に話すし、付き合ってくれるわよ」

「ふーん……挫折して丸くなったのかしら? それともまさかあの歳でこれから先、独り身なのに危機感を覚えたのかな?」


 どうだろう?

 あの人はヘレンさんがいればいいって思っているからなー……


「そもそも天才な方だから私達には理解できないでしょ」

「まあねー。あの人、マイペースで独特だもん。弟子になったんだっけ? あんたも変人の仲間入りね」


 変人……


「ジークさんは良い師匠よ。勉強も仕事も見てくれるしね。あの人は性格が悪いんじゃなくてただの人間嫌いよ」

「そんなのとよく上手くできるわね」

「付き合ってみると悪意はゼロなのよ」


 辛辣なことを言うことも多いが、本気でそれがわかっていないことが多い。

 でも、大抵、その時はヘレンさんが顔面にダイブしている。


「ふーん……他の2人は?」

「ジークさんの信者のエーリカさんとジークさんの奥さんを名乗ってるレオノーラね」


 まあ、奥さんの頭数に自分達も入っているし、何ならレオノーラの奥さんの頭数にも入っている。

 設定がよくわからないことになっている。


「まあ、人間性が良くなったら自然と平均点も上がるしね。アデーレはジーク君の人間性の点数を付けるとしたら何点?」

「そう言われても……」


 答えにくい。


「ここには私達しかいないわよ」

「うーん……80点?」

「高っか……逆にどこが悪いのよ?」


 高いかしら?

 エーリカさんとレオノーラは100点に近い点数を付けると思うんだけど……


「何かを誘うと嫌そうな顔をするところと錬金術のことを聞く時に一瞬、無言になるところ。絶対に『なんでこんなものもわからないんだ?』って思ってる」

「へー……まあ、ジーク君ファミリー同士で仲良くしなさいよ」

「あなたもリートに来る? 楽しいわよ?」

「ジーク君にも誘われたわね。でも、パス。私は王都が良い」


 ジークさんも誘ったのか。


「家がいいの?」

「掃除もしてくれるし、ご飯も出てくる。実家を出る意味がないわ」


 ウチもだな……

 九分九厘エーリカさんだけど。


「中々、人が集まらないわね」

「まあ、ジーク君は置いておいても、リートはねぇ……名前は知っているけど、南の辺境の地ってことしか知らない。遠すぎるのよ」


 王都在住の人は無理そうね……

 私だって、一瞬、リートかー……って思ったし。


「やはりジークさんファミリーで頑張るしかないか」


 しかし、ジークさんの名前を冠するとファミリーが和やかなものじゃなくて、反社会的なあっちの方に聞こえるわね。


「頑張りなさい。それよりも、アウグストさんはどうよ? なんかジーク君が絡まれたって言ってたけど」

「試験の時に絡まれたわね。それでウチのレオノーラとぶつかった」

「あちゃー……あの男は何を考えているのかしらね。そんなにあなたのことが好き? モテる女は辛いわ」


 うーん、むしろ……


「アウグストさんとは何回も話したことがあるし、ある程度の好意を持ってくれているんだなーというのは感じてたわ。でも、そこまで執着するような好意ではなかったと思う」


 転勤する際にも一言もなかったし。


「ジーク君への執着というか対抗心ね。自分が目を付けていた女を奪われて悔しいんでしょ」

「だと思う」


 あの時、その感情がありありと見えた。


「小さい男……そんなにジーク君が嫌いなのかしらね?」

「目の上のたんこぶだったんでしょ。アウグストさんだって、あの歳で5級の資格を得るのは例にないくらいにすごいし、天才と呼んでも良いと思うわ。でも、誰もそう思ってないでしょ」

「2位は目立たないか……しかも、1位が本物の天才でバケモノそのものだしね。学生時代もすごかったもの。あの先生すらもバカにする態度はまさしく平均50点よ」


 ジークさんはなー……

 実際にバカにしてたって言ってたしな。

 誰が誰に教えてんだって。

 なら学校なんて行かなくていいじゃないのって思った。


「今は良い人だから……」

「そりゃ彼女さんはそう言うでしょうよ。80点ってことは平均90点じゃん。私は平均70点だと思うなー」


 彼女言うな。

 それにしても、何年もジークさんを見てきたマルタですら人間性を40点と評価したのか。

 ジークさんは本当に変わったんだなと改めて認識した。


お読み頂き、ありがとうございます。

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