第111話 初本部
本部長との話が終わり、3階に昇ると、俺の部屋の前に3人娘が集まっていた。
「あ、ジークさん」
「ホントだ」
「あなた、どこにいたの?」
散歩は……疲れたって言ってたのにそれは不自然か。
「本部長が来てたんだよ。魔剣の進捗について話をしていた」
嘘はついていない。
「わざわざ本部長が来たのかい?」
レオノーラが聞いてくる。
「暇なんじゃないか? それよりも夕食はどうする?」
「あ、それそれ。今朝、フロントに夕食の話をしていなかったし、どうするかって内線がかかってきたんだよー」
それで相談しに来たわけか。
「昨日はホテルだったし、今日は外で食べるか。奢ってやるぞ」
「おー! ジークさん、かっこいいです!」
「私達は良い旦那様を見つけたねー」
「どこ行く? この前のところ?」
夕食を奢るだけでこんなに機嫌が良くなるもんかねー?
「あそこは美味かったし、行くか」
「やった」
「行こう、行こう」
「もう潰れないでよね。足が痛いから今日は無理よ」
俺達はホテルを出て、夕食を食べに行った。
場所はこの前来たばかりの店だったが、それでもやはり美味かったし、酒も美味かった。
この日は皆があまり飲まないようにし、早めにホテルに戻った。
そして、ホテルに戻ると、作業をし、就寝した。
翌日、4人で朝食を食べ、準備をすると、ホテルを出て、本部に向かう。
「私、本部に行くのは初めてですよ。本部長さんに挨拶した方が良いんですかね?」
エーリカが聞いてくる。
「いらんだろ。そこまで真面目にやることでもない」
「んー……でも、本部長ってジーク君のお師匠様なわけじゃない? 私達も一門になるし、挨拶はいるんじゃないの?」
レオノーラもエーリカと同意見らしい。
「ウチは自由がモットーなんだ。だから大丈夫、大丈夫」
なお、このモットーは今作った。
「そうかい? まあ、本部長さんも忙しい方だろうし、時間を取らせるのも悪いか」
「それもそうですね。リートのお土産でも買ってくれば良かったですね」
真面目な奴らだなー。
俺達はその後も歩いていき、本部に到着した。
すると、3人娘が本部を見上げる。
「ウチの何倍もある建物ですね……」
「さすがは本部だね……」
「こんなに大きかったかしら?」
アデーレもリートに染まっているな……
「こんなもんだろ。入ろう」
俺達は本部に入ると、受付に向かう。
「あ、おはようございます。今日は4人なんですね」
「ああ。リート支部の錬金術師だ。エーリカ、レオノーラ、アデーレだな」
紹介すると、3人娘が軽く頭を下げる。
「私は受付のサシャです。本部に電話をする時には私が出ると思いますのでよろしくお願いします」
サシャって名前だったのか……
「サシャ、テレーゼにアトリエを借りる旨を伝えてくれるか?」
「早速、知った名前を使ってくるジークヴァルトさん、了解しました」
自己紹介をしていないことがバレた……
「アデーレは知ってたか?」
「まあ……」
そうか……
「サシャ、俺はジークヴァルト・アレクサンダーだ」
「存じております。まあ、最初に自己紹介をしなかった私が悪いんですよ。あ、引き止めてしまって申し訳ありません。テレーゼさんには連絡しておきますので」
「頼むわ」
俺達は階段を昇り、3階にやってくると、テレーゼのアトリエに向かう。
そして、ドアノブを握り、引くと、扉が開いたので中に入った。
「ここがテレーゼのアトリエか……」
作業用のデスクが置いてあり、その前には対面式のソファーが置いてある。
でも、ちょっと悲しいのはそのソファーにはそれぞれ毛布と枕のようなものが置かれていることだ。
「なんで毛布と枕があるんですかね?」
「寝てるのかな?」
エーリカとレオノーラが首を傾げる。
「多分、テレーゼと弟子のリーゼロッテのだろう。今、戦争中だから魔導石製作チームは激務なんだ」
「そ、そうなんだ……」
「すごいね……」
2人は若干、引いている。
「俺達がそんなに忙しくなることはないだろうが、アパートが近くて良かったな」
「そうね。仮眠するにしても家のベッドの方が良いし、シャワーも浴びれるもの」
まったくだわ。
「またもや王都の闇が……」
「エーリカ、リートで楽しくやろうね。4人で仲良く暮らそ。人は余裕がなくなったら終わりだよ」
おや? レオノーラの言葉がちょっと心に刺さったぞ?
「その言葉、絶対にここの人間に言うなよ」
「心が折れるかもしれないわね」
給料は良いが、その分、忙しいのが本部だ。
どちらが良いのかはその人次第だろう。
「暗い話はこれくらいにして、仕事に入るわ。お前らは遊んでいていいぞ」
そう言って、テレーゼの作業机につき、作成した剣にエンチャントをしていく。
すると、レオノーラとアデーレがソファーに座り、本を読みだした。
エーリカがお茶の準備をしだす。
「ジークさん、お茶です」
「ありがとう」
礼を言うと、エーリカがニコッと笑って、ソファーの方に行き、レオノーラとアデーレの前にもお茶を置いた。
「ありがとー。愛してる」
「ありがとう」
2人が礼を言うと、エーリカも座り、本を読みだす。
「何を読んでいるんだ?」
「次の試験ですね。8級です」
「私は鑑定士の試験」
「私も一応、7級かな」
試験が終わったばかりなのにもう次を見据えているのか。
良いことだわ。
「無理はするなよー……あ、レオノーラ、ちょっといいか?」
「んー? 何だい?」
レオノーラが立ち上がり、こちらにやってきた。
「悪いけど、書類作りを手伝ってくれないか? 下請け書と納品書。あと出張届」
「いいよー。書類はどこかな?」
「あー……どこだろ? 受付のサシャに聞いてみてくれ」
テレーゼのアトリエだから書類の場所がわからんわ。
「了解」
レオノーラは頷いて、部屋を出ていった。
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