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第107話 違う、そうじゃない


 この日は魔導石製作チームの共同アトリエの隅っこで魔剣作りを行った。

 その際に仕事ぶりを横目で見ていたのだが、4人の他にも色んな錬金術師が立ち替わり入れ替わりで忙しそうに働いていた。

 リート支部でのまったりとおしゃべりをしながらする仕事とは大違いだ。


 昼になると、テレーゼ、リーゼロッテと共に昼食を食べに行き、午後からも魔剣のベースとなる剣を作っていった。

 そして、3時前には刀身ができ、最後のチェックをする。


「うーむ……」


 悪くないか……

 バランスも良いし、きれいに仕上がっていると思う。

 魔剣というのは切れ味なんかどうでもよく、しかも、陛下のコレクションだから使うことはまずないだろうから見た目さえ良ければ問題ないだろう。


「テレーゼ、俺はもう帰るが、明後日から頼むな」


 本日の仕事が終わったので立ち上がってテレーゼに声をかける。


「もう帰るの?」

「キリがいいからな。あとはエンチャントをじっくりする」


 偽出張だから急がないのだ。


「よく1人でそこまでできるね」

「1人の方が早い」

「そ、そっか……」

「こうやって協調性のない人間ができるんですよ。才能を持ちすぎるのも考え物ですからテレーゼ様も気を付けてください」


 うーん……


「リーゼロッテ、俺の人間性は何点だと思う?」

「ジークさんの人間性…………さんじゅう……40……45……ご、50点くらいですかね?」


 リーゼロッテがめちゃくちゃ悩んで答えた。

 多分、最初の30点が本音だ。

 どちらにせよ、0点ではないようだ。


「そうか……じゃあ、俺は帰る。お疲れ様」


 そう言って、共同アトリエをあとにすると、本部を出て、ホテルに戻った。

 そして、部屋でゆっくりしながら時間を潰していると、ノックの音が響く。


「どうぞ」


 このノックの音はエーリカだなって思い、許可を出すと、扉が開き、本当にエーリカが顔を覗かせた。


「お疲れ様です。お仕事は終わったんですか?」


 エーリカがそう聞きながら部屋に入ってくる。


「ああ。そっちも買い物は終わったのか?」

「はい。あ、お茶淹れましょうか?」

「頼むわ」

「はーい」


 人間性100点のエーリカがお茶の準備をし始めた。


「レオノーラとアデーレはどうした?」

「疲れたので少し休むそうです。まあ、その内、来ると思いますよ」


 王都の買い物ではしゃいだのかね?


「そうか……楽しかったか?」

「ええ。王都は色んなお店がたくさんあってすごいですよ。華の王都ですねー」


 エーリカは楽しそうに語りながらお茶を淹れてくれて、対面に座った。


「良かったな。何を買ったんだ?」

「色々買いましたけど、一番の買い物は服ですね」


 女は服とか装飾品が好きだな……


「服屋も王都は充実してそうだな」

「それはもう。10万エル以上もしましたよ」


 ……空気を読もう。

 雰囲気を大事にしよう。

 気を遣おう。


「それはすごいな。さすがは王都だ」

「はい。買ったのはドレスなんですけど、びっくりですよ」


 ドレス?


「社交界にでも行くのか?」

「そんなところに縁はないですよ。ただ、ジークさんが良いところに連れていってくれるから一着くらいは持っておくといいってアデーレさんに言われたんで」


 あー……ドレスコードの店用か。

 サイドホテルは大丈夫らしいが、アデーレいわく雰囲気だからなー。


「なるほどな。しかし、そうなると、アデーレのあの服もそれくらいするんだな」


 サイドホテルに行った時に着ていた白いやつ。


「私も気になって聞いてみたんですけど、教えてくれませんでしたね。レオノーラさんもです。多分、とんでもない値段のような気がします」


 絶対にそうだろうな……


「2人共、貴族だからな」

「すごいですよね。買ったドレスも選んでもらいました。なんか2人で腕を組んですごいチェックしてましたね。視線が痛かったです」

「その場にいたくないな……」

「いちゃダメらしいですけどね」


 ダメなんかい……


「まあ、アドバイスなんか一切できんしな」


 知らんし、ヘレンの考えたセリフを言うだけのロボットに変わるだろう。


「そういうことではなく、下準備は見せないものらしいです」

「ふーん……」


 貴族のルールか女性のマナーか……

 どっちみち、わからんな。


「見ます?」

「ん? 今?」

「はい。せっかく買ったんで」


 買ったら着てみたくなるものかもしれない。

 俺だって、新しい道具を買ったら使ってみたくなるし。


「雰囲気的に大丈夫か?」

「このホテルにいる時点でバッチシですよー」


 まあ、高いホテルだしな。


「じゃあ、見てみようかな」

「お願いします。実はそういう服を着たことがないですし、いざドレスコードがあるような店に行くのが不安なんですよー」


 なるほどねー。


「その気持ちはわかるな。慣れてない庶民はきついし」

「ですよねー。じゃあ、着替えてきます」


 エーリカはそう言って、部屋を出ていった。


「ヘレン、試練というのは急に来るもんだな」

「そのようですね。褒めるんですよ! 絶対に褒めるんですよ!」


 わかっている……

 いくらなんでもわかっている。


「似合う……綺麗だな……可愛いな…………他には?」


 もう思いつかないんだが?

 あとは色だけ。


「大人っぽいとかありますけど、思ったことを言いましょう。ナンパ本はダメだとレオノーラさんが反面教師になってたじゃないですか」


 そうだ……

 確かにあの時、アデーレがそう言っていた。

 レオノーラが言ったナンパ本の『大人っぽくて素敵だよー』より俺の『白くて良い』という30点の感想の方が良いらしい。


「ふう……ん?」


 ノックの音が聞こえてきた。

 だが、いくらなんでも早すぎるし、このノックの音はレオノーラだろう。


 そう思っていると、扉が開かれ、レオノーラとアデーレが部屋に入ってきた。


「おつー。やっぱりジーク君も帰ってたねー」

「お疲れ様……あれ? エーリカさんは?」

「あ、ホントだ。エーリカがいない」


 2人は室内を見渡し、首を傾げる。


「御二人共、お部屋にお戻りください。そして、1時間後に来てください」


 ヘレンが真剣に告げる。


「へ? なんで?」

「レオノーラ、エーリカさんがいないでしょ……」


 アデーレは察したようだ。


「あー……部屋でカードゲームでもしようか」

「そうしましょう」


 2人は顔を見合わせると、部屋を出ていった。

 正直、いてほしいなと思ったが、エーリカも3人に見られるのは嫌だろうとも思った。

 だからヘレンも戻るように言ったんだろうし。


お読み頂き、ありがとうございます。

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