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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

廻る洞窟

なんだかんだでお久しぶりです、別の小説書いて気持ちよくなってましたが、すぐ投稿できる作品ができたので投稿しておきます

廻る洞窟


いつもとさして変わりのない日常、それを送る人々を見下ろして心の中で嘲笑する


今日もとてもいい天気だ、この中で飛べるなら文句はない。うん、なかなか楽しかった。すこし早いかもしれないけど、そろそろ飛ぼう


「ーーーー」


発した言葉は雲と風の喧騒に呑まれ消えて行く、下は見ないで行こう


フェンスからまた一歩、先に踏み出した


そして気がつくと薄暗い空間に立っていた、周辺を見てみるとゴツゴツとした岩ばかりが視界に入ってくる。たしかに飛び降りたはずなのになぜこんな洞窟のような場所にいるのだろう、流石にこんな薄暗い場所で生涯を終えるのは嫌だな…と、そんなことを考えながら暗闇を適当に歩く、なかなか目が慣れないせいで足元の水たまりに気づかず踏み込んでしまい、靴の中に水が入ってしまった。

歩くたびに感じる不快感に眉をひそめながらやっと慣れてきた目で足元を見ながら歩いていると誰かの足音が聞こえてきた。聞こえたほうに向かおうと耳を澄ます、するとはっきりと誰かの足音が聞こえた。

聞こえた方へ歩いていくと、とても広い空間に繋がった。いくら広くても流石に暗く、遠くまでは見通せない。しかしいくら暗くても人が歩いていれば気がつけると思うが…

「だれ!」

広い空間に何メートルか入り込んだ時、真後ろから女と思わしき声がした。

「名を聞く時は自分から名乗れと習わなかったか」

別にどうでもいいがそう返してみる

「そ、それもそうね、私の名前はレイよ、で、あなたは?」

案外素直に名乗ってくれた、がしかし俺はそんなに素直じゃない

「名乗るほどのものではない」

正直あまり人に名前を知られたくないのが本音だ、どうせこいつも軽視してくるんだ

「はぁ!?!??」

キレてくるという可能性は考えていたが…流石にここまで怒らなくてもいい気がする。まぁどうでもいいか、さっさと地上に戻ろう、後ろに立っている何者かを放置して歩みを進めようとした時、再び声が聞こえた

「待って!その先にはバケモノが!」

と、そんなことを言われた。

「俺には関係ない、地上への道を教えろ」

俺がふざけたようなことばかり言ったせいか困惑しているようだ、次人間にあったらふざけずにまともな回答をしよう

「ち、地上から来たの…?」

さっきの雰囲気とは打って変わって怖がっているような、しかし憧れるような、そんな声音になっていた。

やはり、ここも地上とはまた別の文明が展開された空間らしい

「いや、なんでもない」

そう言い残して迷わずその場から立ち去る。しばし歩くと遠くに街があるのか暖かい色合いの光がたくさん見えた。こうして見てみると本当にこの洞窟も大きい、そう思いながら街灯りのほうへと歩いていると突然激しい揺れとともに爆発音が聞こえてきた。街の方を見てみるとなにやら煙があがっている。別に行かなくてもいいのだがどうしても気になってしまう



そうしてふと気がつくと街の中、目の前には黒い人型の何かが3体いる。なんでまたこんなことに…

逃げるべきか悩んでいると黒い人型のスライムのような何かが変形してシュパッとなんとも言えない音とともに恐ろしい速度で体液を飛ばしてきた。そんな突然の出来事に咄嗟に反応しきれずに体液が足にかかってしまった、黒い液がかかった場所を見ると皮膚が溶けて、なかなかにおぞましい状態になっている。それなりに痛みはあるがやはりというべきか体が慣れているおかげで動きに弊害はない、痛みに強くなってしまった体に今だけは感謝しつつひとまずはここからは逃げた。今の装備では勝てないことが明らかだからだ


必死に逃げて適当な建物の中に隠れる、中は真っ暗だが明らかに人がいる、それでも息を整えてどうすべきか必死に考える

「貴様は誰だ」

息がやっと整ってきた頃、剣を持った老人に話しかけられた

「急に入って済まない、すぐに出るから地上までの道を教えてくれないか?」

そう返すと老人が目を見開いては言う

「貴様ッ地上から来たのか!」

さきほど見かけた少女と似たような反応を示しては俺を部屋から追い出した

そして不運にも部屋の外、すぐそこに黒い人型が待ち受けていた

真っ黒なバケモノが顔らしき部位を嘲笑うように歪めてゆっくりと覆い被さろうとしてくる。完全に覆われる前に逃げようとしたがなぜか片足が動かない、動かない方の足を見てみると黒いスライムのようなものが足を地面に固定していた、それはがっちりと地面と足をホールドしていて引っ張るだけではとても取れそうにない、なんとか剥がそうと黒いスライムに手を伸ばしたとき、ついに視界が完全に影に包まれた。いよいよ時間がないことが一瞬で分かり、黒い小さなスライムを手で乱暴にぐちゃぐちゃに掻きむしってなんとか足の自由を得る。しかしその時には既に遅く黒いバケモノに全身を覆われてこれから消化されるといった状況になっていた。なんとかして脱出しようとバケモノの体に体当たりをした。するとなぜか体が体当たりした方向と逆に吹き飛ばされた。


吹き飛ばされたおかげで黒いバケモノの体を突き破って脱出することができたが、なぜ、なにに吹き飛ばされたかがわからない。それを確認するために黒いバケモノの方を見ると、バケモノより先に体より大きい盾を持ったレイと言う名前の、淡い水色の髪の少女が視界に入ってきた

「あなた、大口叩いてたクセして食われてたのね」

少女はそう言いながら穴が空いたバケモノに盾で突進する、よく見ると盾の下にはローラーがついていてそれで滑走しながら体当たりしているようだ、俺がそんなどうでも良さそうなことに関心していると突然重いものがなにかにぶつかるようなずっしりとした音がなった。少女の大盾が黒いバケモノにぶつかった音のようだが思っていたのと違くて勝手に落胆してしまう、だが大盾による体当たりは黒いバケモノにとって致命傷になったらしく、残骸だけとなりいずれ動きを完全に止めたのだった


黒いバケモノを容易く倒して見せた少女は俺に近づいてナイフのようなものを渡しては言う

「暇ならアレを駆除するのを手伝ってちょうだい」

「わかった、恩は返すよ」

そう言い少女からナイフを受け取ると一瞬の視界の歪みとともに視界に変化が現れる。

なぜか彼女の心臓と脳などの損傷すると致命傷になりかねない、弱点が透けて見えるのだ、しばらく衝撃的な出来事に動揺していると透けて見えていた弱点が見えなくなってしまう

そしてほんの少し硬直していると足元から乾いた甲高い音が鳴った

「なに落としてんのよ、数少ない刃物なんだから壊さないでよね」

若干困惑しながらも今度はしっかりとナイフを握った、やはりまた弱点が見える

「すまない、少し立ちくらみが」

俺がそう言って黒いバケモノを探しに行こうとすると、レイが気をつけてね!と言って盾に取り付けられたローラーからカタカタと音を鳴らしながらどこかへ行ってしまった

「なんなんだ…」

ぼそりと愚痴を吐くと、突然視界に青い透明な球が足目掛けて飛んでくる

反射的にそれを避けると、その軌跡を追うように黒い体液が飛んできた。間一髪…?


わけもわからず唖然としていると、再び視界に青い透明な斬撃が俺を貫こうとする、それも避けると青い透明な斬撃を追って黒いバケモノの攻撃が通り抜けていく

「なるほどな…」

ちょっとしたハプニングだが別に問題はない、むしろ好都合だ

攻撃が当たらずにイラついているのかもぞもぞと動く黒いバケモノに不適な笑みを見せてはナイフの刀身を確認する、俺がナイフを確認したのをみたバケモノは攻撃の予備動作か、体の中心を凹ませている、俺がナイフをすこし強く握ると青い球をいくつも飛ばしてきていることがわかる、予想通り割とヤバめな攻撃のようだ


現状では攻撃をナイフで防げるかわからないのでひとまず全ての球を回避しておく

しばらく青い透明な影に従って回避を続けていると、突然影の動きが変わった、黒いバケモノが直々に攻撃しにくるようだ

青い影の言う通り、バケモノがシュパッという可愛さを否めない音とともに高速で職種のようなものを撃ち出してきた。それも容易く回避すると、ふと、触手になにかが透けて見えることに気がついた

「弱点ッ!」

それが弱点であることにすぐ気がつき、なるべく早くナイフを振るった

普段やらない動作だったので当たるか心配だったが無事に命中し、触手が異様に蠢いて、黒いバケモノ本体に向かって戻っていく。本体も痛そうにプルプルしている、このままパパッと処理してしまおう

今度はバケモノではなく俺の猛攻が始まる。ひたすらに、透けて見える弱点や青い透明な影が推奨してくる切先を切り付ける


やはり反撃はあったが全て回避するかナイフで迎撃できたので完全に無傷で黒いバケモノを1体討伐できた。倒したバケモノは力を無くしてドロドロに溶け、最終的には灰になりどこからか吹き付ける風によって飛ばされてしまった


この調子ならバケモノも問題なく倒せそうだ、そう思って他にもいないか探しに行こうとしたとき、再び遠くからなにかの爆発音が聞こえた

なんだ今の!?

驚いて音がしたほうに振り向くと洞窟の天井が崩壊し始めている、崩壊は着実にこちらに近づいて押し潰そうとしてきている。その音に気がついた街の住民が扉を開けて様子を見ている、崩落に気がつくと家に戻り、今度は大人数になって大きな音を立てながら逃げ出していく、呆気に取られていると後ろから、レイと思わしき声が聞こえた

「なにしてんの!崩落なんかに見惚れてないで早く逃げるよ!」

「わかった!」

レイの声にハッとして崩落から逃げるべく走る、必死に走っていると小さな洞窟が見えてきた、どうやらそこに避難者の一部がいるようだ

なんとか崩落に巻き込まれずに洞窟に入り込んだが、入ってすぐに洞窟が塞がれてしまった

「あぁ…私たちの街が…」

何人かは街が潰れたことにショックを受けて絶望している者が何人かいるが気にせずに洞窟の奥の方へ行こうとする。すると予想通りレイが俺を呼び止める

「どこに行くの?」

「地上だ」

俺が即答するとレイが首をかしげる

「どうしてそんなに地上に行きたがるの?」

「…」

少しだけ間を置いて口を開く

「俺が地上から来たからだ」

少女は初めて会った時とは打って変わって驚いたり怖がったりせず、ただ一言

「私も行く」

ハッキリ、堂々とそう言った

近くにいた人達はレイの発言に衝撃を受けていた、反対する声や罵詈雑言はなかったが、軽蔑する目を明らかに向けられていた


そんな様子をみて俺はふと昔のことを思い出してしまった

やっとの思いで夢を叶え、周りの人に自慢した時、軽蔑の目を向けられたあの時を


頭を振ってネガティブな気持ちを記憶の奥に引っ込める

すこし思いとどまってしまったが、俺はレイに対して言う

「わかった、一緒に行こう」

レイは頷いて歩き始めた俺の後を追ってくる



上に続く方に向かってひたすら洞窟を歩いてみたが、想像よりも深いようでなかなか地上に辿りつかない。俺はまだ歩けるがレイの要望で適当な場所で一休みすることにした


しばらく休んでいると割とすぐ近くから太鼓を叩くような音が聞こえた、耳を澄ましてみると更に、あの黒いバケモノが移動する音が聞こえる。太鼓の音が気になって思考を邪魔させるがなんとか振り払ってどうするべきか考える


そして近づいてくるバケモノにバレないために、近くの岩の裏にレイと移動し、息を潜める

しばらく隠れていると、今度はハッキリと太鼓の音とものを引きずる音が聞こえてくる、太鼓の音を聞くたびに思考があやふやになるが、レイは見た感じではなんともないらしい

「ねぇ、大丈夫?」

バケモノが去ったのを確認するとレイが俺に心配の言葉を投げかける

「あの太鼓の音を聞くとどうしても頭が痛くなってな、問題ない」

俺がそう言って軽く笑ってみせる、しかしレイは怪訝な表情を浮かべては

「太鼓の音なんて聞こえた?」

と、そう言う

微妙な空気の中沈黙が続いていると、再びレイが口を開いた

「なんか…ごめん」

レイのその言葉には「先を急ごう」とだけ返して、再び地上を目指して歩き始めた



何時間か歩くと、かなり大きい空洞に出た。そこには街は無いようだが、いくつか住処のようなものがあり、小さな集落のようなものがあったことがわかる

「誰もいないな」

俺が何気なくレイにそう話しかける

「当たり前じゃん、ここでは食料もろくに手に入らない、それなのにあの黒いバケモノが襲ってくるのよ?」

確かに考えてみればここはかなりの地獄だ、それならなぜ地上に行こうとしないのだろうか

レイに聞いてみるとどうやらあの黒いバケモノは地上の方から来ており、地上に近づけば近づくほど、数が多くなるらしい、ここから出るのはなかなかに大変そうだが、なんとか頑張るしかなさそうだ

そんな軽い会話を交わしたあと、集落の跡地に使えるものがないか探し、まだ使えそうなナイフを一つ見つけたので、レイにナイフを返し、見つけたナイフをポケットに入れ、再び移動を再開した



レイと共にひたすらに歩く、時には黒いバケモノから隠れたり、バケモノから隠れたり、ひたすらに歩いて着実に地上へと進む。

平らな道を歩いているとすぐ横から小さな音が聞こえた

「腹減ったのか?」

「う、うん、少しだけ」

レイの様子をみるとかなり長い間我慢していた様子だ。気づくのが遅れてしまったことに対して申し訳なさを感じつつ、周りを見る、どこを見ても相変わらず石ころくらいしかない

「何か食べられるものを探そう」

そう言って再び歩く、何度目かの坂道に差し掛かる、地上への距離が短くなっているのを感じる

何分も歩いたが相変わらず景色があまり変わらず、面白みがない

めげずに歩き続けていると、分かれ道に辿り着く、右の道からは洞窟特有の低い音が反響して少し悪寒がする。かと言って左の道からはものを引きずる音が聞こえ、その先に黒いバケモノがいるのが安易に予想できる

「レイ、どっちに行く?」

「右…かな、戦いたくないし」

レイに従って右の道に行く

わずかに明るかった通路だったが、少しずつ暗くなっていき反響する音も大きくなっていく

暗い道を歩き、しばらくすると突然反響する音がレイの盾の音と足音だけに変わり、一気に静けさに包まれる

「これ、本当に大丈夫なの?」

レイが静けさを打ち消すようにそう言う

「問題な…くないかもしれない」

ここまで暗くて静かだとさすがに怖い

「引き返す?」

レイがそう言うがここから引き返して戻れる気がしない

「やめておこう、ここまで進んだんだ、引き返すのはもったいない」

軽い会話を交わした後、何分か無言で歩く

途中で無意識でレイの手を握りかけたりしたが無事に狭い通路を抜けることができた


通路の先は白や青、色とりどりのクリスタルが光を放っているとても神秘的な空間だった

レイはこの景色に見惚れて歩みを止めているので、適当な岩の上に座ってレイが満足するのを待つ

しばらく沈黙が続く。こんな、非日常的な幸せもありかなと、そう思ってしまう


何分か、もしくは何十秒かするとレイがハッとした様子で走ってくる

「ご、ごめん、見惚れちゃって…」

「大丈夫だ、こんな絶景見せられちゃ、だれでも見惚れるよ」

短い会話を交わし、神秘的な空間から出ようとした時、クリスタルが音を立てて砕け散る、そしてそこから黒いバケモノが出現する、それも全てのクリスタルから一体ずつ出てくる。

「レイ!走れ!」

俺がそう言いながらレイの手を掴んで全力で走る、後ろから聞こえるとてつもない轟音が耳をつんざく


洞窟全体が明るくなり、確実に地上に近づいていることを直感的に感じる


黒いバケモノ共から間一髪のところで逃げ切った時、一本道の通路が崩落し、バケモノ達が完全にこれなくなる、しかし、それと同時に退路は完全に断たれたということにもなる

「そろそろ地上だ、心の準備はできてるか?」


「もちろん」


レイの返答を聞いてゆっくりと歩みを進める

地下からの脱出はもう直ぐだ。レイは、地下から地上に出て、何をするんだろう

俺はきっと、前となにも変わらない。何度も、何度も、同じことを繰り返す


先にまばゆい光が見えるゆるい坂道を歩きながら、これまでのことを振り返る、短い冒険だったが相変わらず楽しいものだった


次がもう無いことを祈りながら、俺は地上に出た

視界は真っ白に染まり、また、俺は日常に戻った




いつもとさして変わりのない日常、それを送る人々を見下ろす


今日もとてもいい天気だ、この中で飛べるなら文句はない。飛ぼう


「もう1度」


発した言葉は雲と風の喧騒に呑まれ消えて行く、下は見ないで行こう


フェンスからまた一歩、先に踏み出した



ふと、気づくと、再び洞窟にいた



後日談


「ねぇ、ここも崩落してて通れないよ?」

「ここもか…もう一度引き返して別の道を探そう」


END

ここまで読んでいただきありがとうございます、これからも小説を不定期的に投稿していきつつ、代表作、炎が織りなす仕返しのダントファングも書こうと思っております、これからもよろしくお願いします

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