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無限と有限の狭間にて/後編

作者: 翼人

「でも、おじいさん、私の知っている大通りが分かるんですか?」




 初めて会う人間に帰り道を教えてあげようと言う、その老人に、私は極々当たり前の自然な疑問を問いかけた。

 老人は、作った笑みの形を崩さずに、言う。




「大丈夫、何も心配する事はない。あっちだよ」




 そう言いながら、老人は私の背後を指差した。

 老人が指差す先には分かれ道。

 自分はどちらの道を通ってきたのか…何故だろう、思い出せない。




「でも、それだと戻っちゃいます。もしかして、私は大通りを過ぎて気付かずにここまで来ちゃったんでしょうか?」

 



だが、そんなはずはない。自分はちゃんと確かめながらここまで来た。




「いや、そんな事はないよ。ただ、お嬢さんはちょっと通る道を間違えただけなんだ」




 通る道を、間違えた…?

 どういう事だろう。自分はちゃんと正しい道を走ってきたはずだ。友人は、「この道を進めば大通りに出る」と言った。だから自分はこの道を一度も曲がる事なく走ってきた。その友人が通る道を自分に誤って教えていなければ、自分が間違っている事などありえない。




「お嬢さん、この事は深く考える事はない。ただ、お嬢さんがここに来た事は間違いだった。それだけだ」




 私は、老人の言っている事の意味がよく分からなかった。自分は何も間違えたつもりはない。

 しかし老人は、それ以上何も言う事はなかった。分かれ道の右の道を選んで、私を誘導していく。

 しばらくすると、激しい眠気が私を襲った。無理もない。こんなに暗くて寒いのだ、随分の時間が経ったのだろう。きっと普通なら寝ている時間だ。

 自分はいつのまにそんなに遠くへ来てしまっていたのだろうか。




「さぁ、着いたよ。気をつけてお帰り。そしてもう、あんな道に迷い込んじゃいけないよ。二度と戻れなくなってしまうからね…。わしとはもう会う事のないように祈るよ。じゃあね、お嬢さん」




 しばらくして、そんな老人の声がした気がした。





 気がつくと、私はきちんと両手で自転車を支えながら立っていた。

 目の前には大通り。

 果たしてこの大通りは私の知っている大通りなのだろうか。何故か、周りにあの老人の姿はなかった。

 辺りは暗いままだ。だが、まだ人がいる。車もたくさん走っていて、先程までいた場所とは全く別の空間がそこに存在しているようだった。

 あの老人がここまで連れてきてくれたのだろうか。だが、何故着いた記憶がないのだろう、何故あの老人がいないのだろう。何も覚えていないのは眠かったせいだろうか。

 しかし見ず知らずの自分をここまで連れてきてくれたのだ。お礼くらい言いたかった。あの場所に行けばまた会えるだろうか…。

 とりあえず家に帰らなきゃ。そして明日になったらあの場所を探そう。

 

 しかし、その後いくら調べても、街灯の明かりしかない道なんてものも、人の入ってはいけない、老人が見張る場所も、見つからなかった。

 思い返してみると、いくつか矛盾が出てくる…。

 もしかしたら、あそこは人間の入れる空間ではなかったのかもしれない。

 私は偶然あの場所に行き着いてしまっただけなのかもしれない。

 果たして、あの老人は何者だったのだろうか。



 家に帰った私の掌には、身に覚えのないカイロがひとつ、握られていた。

短いし、意味不明な終わり方だし、何がなんだか全然よく分からないけど、俺の妄想の話でした(´ω`;)

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