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如何にして 70

 晴天の地をトラックが駆ける。

 その途端、獣達が群れを成して狩を始める。

 トラックは四方に散り散りに、獣達も散り散りに追いかける。だが、獲物を追いかける事に集中した獣を追いかける炎。

 炎の目を宿したユスティは、軽々、獣の首をひとかみに断裁した。ざわつきは刹那。すぐに、事を理解した獣のいく人が追いかける標的をトラックからユスティにかえる。

「ばぁか」

 足を止めた途端、地面から噴き出した炎の中で重なる悲鳴。ガーランドは、それを聞いてもなんとも思わない。

 獣の仮面の奥で、憎まれても、くぐもった罵声が唸りのように聞こえても。

 空気中に弾ける音が響き、ガーランドはそっと身を横にずらした。突き抜ける風が頬を深く裂き、血が流れる。その時にはもう、獣はユスティに飛びつかれ食われていた。

 それでもガーランドは何も思わなかった。

 横転したトラックから飛び出た兵士たちが獣と殺し合う様を見ても。自身の心臓から赤い光が溢れはじめても、もしかしたら、この赤い光がまた仲間を殺してしまうかもしれなかったとしても、何とも思わなかった。

 赤い仮面の獣がガーランドにナイフで切り掛かってくるのを使い慣れない剣で受け止める。

「神に選ばれなかったのだ、大人しく血を流し神を喜ばせればいいものを」

 くぐもった声がようやく聞こえ、ガーランドは口の端を持ち上げる。

「神様のためねぇ。同じじゃねーか、俺と」

 力任せに獣を押し退けたと同時に、力の入った身体から溢れた光が獣を燃やす。真っ赤な炎は向こう側がよく見える。揺れる火の穂先をガーランドは単純に美しいと思う。赤い透明な炎の中にいる獣の胸に剣を突き立て、蹴りぬいた。

「何も考えない事にしたんだ。女神様の言う通りになぁ!」

 まるで世界は赤い光の中に落ちようだった。





 後方から届くのは、神のために行われている殺し合い。そう言われると耳から見えてくるのはたいそう敬虔なれど、振り返れって見ればやはり単なる殺し合いでしかない。

 意味があろうとなかろうと、やっていることはそれだけ。遠ざかる景色の中に赤い光が走る。だんだんと幻聴へと転じていく悲鳴。

 トラックよりも小さな自動車は、街で捨て置かれていだものだ。ショートの横、窮屈そうに膝を抱えて丸まっている姫さまの唇はずっと尖り続けて、トラックとは違う揺れに時折ギイと不機嫌に鳴いた。

「あんた、真正面から突っ込むんじゃ無かったの!?」

 ハンドルを握るリーシャは、地面の悪さに足元を取られる自動車を腕力で言う事をきかせ塔に向かって一直線にアクセルを踏み続けていた。

 トラックが走り出し獣達が一斉に追いかけた後をトラックと別の外れたルートから小さな自動車は無言で走り去る。

「頭を使ったんだよ!」

 ずり下がるメガネを何度も直し、アンリはシートベルトに縋り付いている。しかし、頭を使ったわりにガーランドが居てくれたからなんとか真っ直ぐに進むことができたのだとショートは言いたい。

 口を開くと舌を噛んでしまいそうだった。胸元で唯一のんびりと欠伸をしている三つ目が羨ましい。

 不気味なほどにあっさりと塔に着いてしまったころ、アンリは血の気を無くし真っ白い額に脂汗を浮かべ、何度となく口の中を飲み込む仕草を繰り返す。めざとく気がついたリーシャの足が一歩離れたのを見てショートも一歩、遠ざかった。

「はいるぞ」

 今にも内側から何かが出てきてしまいそうな口を動かし、アンリは歩き出した。


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