如何にして 66
開けた場所に集まった兵士が並ぶ。全員が前に立つアンリの動向に目を凝らす。一種、異様な空間には声も意志も不要どころか、禁止されているようながんじがらめの拘束感にショートの息は浅くなった。だが、道を開き進むガーランドには、彼の後からユスティに乗ってまるでそれが当然のような顔で微笑む女神には、そう言ったその場に感覚としてしか存在できない鎖とよく似た物には束縛はされないようだった。
兵士たちの端を通ればそんなに目を集めることもなかろうに、どうしてガーランドはわざと人群れを割っていくのか。その後に続けないショートは、立ち止まり兵士たちの端っこのほうから回り込んで、そういうつもりではないけれど他人事の位置に陣取った。
他の兵士とやりとりしていたアンリは、女神が近づくと似たような微笑みを浮かべる。それだけで事足りるのか、何かを囁く事もいつものように「女神たれ」と指示する事もない。
それもそうだ。そんなことは今更だ。長らく、女神はこの境界線の外、特にアンリのそばに居たのだから。
「さて、諸君」
一度、口を閉ざし空を見上げアンリは列となった人の顔を遠い位置から見渡す。
「本日は、天気も良くて助かったものだ。占いのようなものだが、しかしはじまりは晴れがいい。ここに集まっているから、今更何のために出発をするのか、何を行うのかわからないものはいないだろう。そうだな」
問いかけに、数多の顔が揺れる。
「幸いだ。相手は神の名を語る化け物と、全容もわからぬ境界線、そして奴らに膝を折った人外だ。人ではないのだよ、奴らは」
随分な物言いに、ショートはアンリの斜後ろに控えるガーランドを伺い見る。真顔は相変わらず前ばかりを見ていて、何も聞いていないだろう。
「そんな人でないものになぜ、未来を潰されなきゃならない! 今まで境界線の内側で生かされていたこと自体、間違いだった。――今からでも遅くはないだろう? そう、取り返すに遅いも早いもないのだ、取り返す事に意味がある。そうだろう」
ショートの顔は強張った。けれど、アンリが気が付いて話をやめてくれるわけでもない。
「さて、ここで熱くなっても仕方がない。それでは、参ろうか無用な神を殺しに」
兵士たちに同じ顔が宿る。
ユスティに跨っま女神は、そんな兵士たちにただ微笑みを、誰にも均等に注いだ。




