如何にして 36
「まぁ、言われればやりすぎたのかもしれんが、俺の中での神とはああゆうもんだし、まずもって偉そうなアイツラが悪かった。致し方ねーので、俺は悪くないな。うん、悪いのは俺に首輪をつけて好きに扱おうとしたでかいお前やあいつ等だし、何より神を真似させたこいつだ」
ユスティの毛を指先でひっぱりひっぱり、半笑いのエースはまるで女神とはほど遠い、単なる俗物だった。大股で近寄ったアンリは、元気の無いユスティの頭を撫でてやると、正直者の尻尾は力なく横に揺れる。
「で、あれでよかったか」
「やりすぎは否めないが、大きな損害も無く上手くいったと言っていいだろう。逆に恐れられて首輪を求められなきゃいいが」
アンリの懸念を鼻で笑ったエースは黙ったままむしった毛を床に捨てる。このままむしられ続けられれば、部屋につく頃にはユスティの頭部は小さな禿が出来上がりそうだ。
「おい! むしるな、可哀そうだろう。なんなんだよお前ら。真似って、さっきのが真似だと? まじだっただろうが」
未だに毛をしつこく指先で巻き取る手を、ガーランドが払うとあからさまに歪んだエースの眉根は不愉快を描いた。そして、大きな男を新緑の中に捉え、無言で見上げる。
「……なんだよ」
縮こまった大きな肩。狼狽えたせいか、握りこまれた手は行き場をなくしガーランドの身体の横で大人しくなる。逃げた横顔をしつこく視線で突きまわし追いかけていたが、ユスティが悲しそうに一声上げたものだから、エースは不燃焼の火花を舌打ちで弾きく。また、指先はユスティの毛を弄びだした。今度は、毟ることなくただ感触だけを楽しむつもりなのか引っ張る動作はない。
「殺すつもりは無かったさ、だから直しただろう。ただ、お前らの事なんてどうでもいいってだけ。それが俺の知る神だからな表面の皮をそれっぽく被った所で、神になれないんだから、中身の細部までできうる限りに真似る。真似るってそういう事だろう」
雑に首を横にふり癖っ毛の後ろ髪の配置を整えた後のエースは、真面目にアンリを見上げた。
「で、これでお前の目標には届きそうか?」
「一歩進んだってところだろう。この後、あの馬鹿共の尻を蹴飛ばして何が何でも動いてもらうつもりだ。その後は、女神様頼むぞ」
足を止めぬユスティの進行方向をエースはまんじりと見た。人の気配は鬱陶しいほどにあちこちにあるのに、見える姿はない。まるで、虫の集まりのようだ。それにつけ、人間と契約しているであろう精霊たちの匂いと声もごちゃまぜに空気中に混ざっている。
そのどれもが人に膝を折ることを許容している。そのせいでエースの吐き気はやまない。
人であるエースには思い至ることのなかった嫌悪感。だが、今のエースは苛立ちの細い糸を無理に引っ張られている。
「ま、お前らが従僕し続ける限り、だな」
ユスティの横腹に手のひらを押し付けた。命の振動と、熱を感じた。




