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たくらだ猫の異世界歩き  作者: アリーテ
第二章 皿嘗めた猫が科を負う
8/20

008話 国軍の失態

第二章開始。

チマチマ書き進めていきます(-_-)

 大陸南部に位置し、安定した気候、肥沃な大地を持つウィールヒル王国は大陸屈指の大国である。


 長い歴史の中、この条件のいい土地を巡って、戦乱が繰り広げられていたが、100年ほど前に近隣の中小国を併合し、近年、諸外国からの脅威がめっきり減った。

 西は貿易が盛んな海洋国家ペニンシュラ連邦共和国があり、ここは貿易が盛んな友好国である。

 北は霊峰ヴァルホルが(そび)え、霊峰を超えると聖国アルフヘイムがあるが、霊峰が緩衝地帯として機能している為、軍事的な衝突をする心配はほぼないと言える。

 南は広大な森が広がり、森を超えれば海だけである。

 問題は東くらいで、軍事国家マルス帝国と国境沿いではにらみ合いが数十年続いるが、即時大規模な戦乱が開かれることはない状況だ。


 そのような状況の中、王国はここ数十年は国内の安定に力を注いでいた。併合した中小国家の土地ではそれなりに問題も多かった為だ。いつ何時、亡国の王族が旗頭になり、反旗を翻すか分からない土地も存在した。諸外国の脅威がないからといって、国軍に力がなければ内から崩れる可能性もある。にらみ合いで済んでいる帝国も好機があれば攻め込んでくるやもしれない。故に王国は国軍の強化に余念がなかった。


 実践に勝る訓練なし。平和ボケしている兵士の性根をたたき直す意味合いを込め、現在王国各地で行われているのが魔物の領域への軍事遠征である。人間の生活圏に近い場所から魔物を排除し、森の深層に追い込む。これには、日頃から魔物の脅威に晒されてきた魔物の領域近隣の住民には歓迎されていた。


 しかし、最近その雲行きが怪しくなってきていた。


「魔物の怨念?」

「兄貴が言ってた魔王化した魔物とかいう奴っすよ。兄貴に頼まれて調べてみたら、各地で軍事遠征が行われて国軍が去った後、しばらくしてから気味の悪い魔物や巨大な魔物が現れていて、近隣の住人からそういう噂が立ってるようっす」

「やはり、国軍の大規模遠征が原因か。流石に国相手ではやめろとは言えんな」

「そもそも冒険者程度が言っても信じてもらえないっすよ。その魔王化ってやつは」


 メルク市での休暇中、黎明の杯が定宿にしている黒猫の尻尾亭の酒場にて、リカルドは傭兵時代の後輩と情報交換をしていた。

 昔から面倒見の良かったリカルドは、傭兵から冒険者へと稼業を変えた今も慕ってくれる傭兵時代の後輩が多い。国軍の動きには冒険者より傭兵の方が掴んでいる情報が多かろうと、調べてもらっていた。結果は予想通り、いや、予想より酷い状況らしい。


「国軍や貴族も気づいているだろうが、国王の旗振りで行った軍事遠征が悪いとは口が裂けても言えんし、認めんだろうな」

「国軍が戻って倒してくれればいいんすけどね」

「遠征もタダではないからな。無理だろうな」


 大規模な遠征にはそれ相応の金貨が飛んでいく。そう何度も行えるものではない。


「少人数で戻るのはダメなんすか?」

「数と連携だけが強みの軍からそれを奪っちまったら何が残るよ?ただの餌になるだけだな。しかし、魔王化までに時間差があるのが厄介だな」

「その魔王化って、なんで今までほとんど現れなかったんすかね?国軍じゃなくても、冒険者だって大規模討伐の依頼とかあるっすよね?」

「冒険者が仕事で、兵士が訓練だからだな」

「どういうことっすか?」

「冒険者は倒した魔物から必ず魔石は抜く。一番明確に金になるところだからな。それに牙や角、毛皮なんかの魔力が強い素材も当然売れるから解体して持って帰る。結果死体には魔力が残ってるところはほとんど無くなるな」


 リンに聞いた魔王化の理屈があっているなら、魔王化するために必要なその魔物に馴染んだ魔力さえ無ければ、いくら死体があろうが魔王化しようがないはずである。


「逆に兵士は倒して終いだ。元々、兵士としての給金は貰ってるし、そもそも解体の仕方も知らん奴が多いだろう。連携や隊列が重視されて死体を解体する暇があるかも疑問だな」


 その結果、森に大量の死体がそのまま放置され、魔王化に至る。リンの話した理屈と何ら矛盾をしない。リカルドの予想は外れてはいないはずだ。


「さて、どうするかね」


 先日のエリュマントスボアとの戦いで、団員たちには魔王化した魔物は荷が重すぎるとリカルドは感じている。いや、リンという存在がなければリカルドでさえ荷が重い相手だった。戦うにしても何せ初めての相手ばかりだ。情報が足りなさすぎる。


「しばらくは休暇か………じゃなきゃ方法は一つだな」


 話が終わり、そう呟いて、酒に口を付けたリカルドの手には、穴の開い白い骨がずっと握られてた。




 ※




「うーむ。やっぱりそうかぁ~。おかしいと思ったんだよなぁ~」


 民宿である黒猫の尻尾亭の一室にて、リンがステータスウィンドウを見て何やらブツブツ呟いていた。


「リカルドさんが()()使()()()からそうじゃないかと思ったんだよ」


 リンは先日のエリュマントスボアとの戦闘で、計らずも黎明の杯の面々と共闘した。

 そこでエロスの弓を使った策を思いつき、弓が使える狩人であるマルティンに頼んだのだが、策がはまってエリュマントスボアに攻撃する際、戦士であるはずのリカルドも弓を構えていたのだ。

 戦士は近接武器ならほとんど使える職業(クラス)だが弓は装備できない。なのにリカルドは弓を使っていた。


 ここでリンはふと思ったのだ。


 ()()()()()()()()()()()()と。


 ゲームなら疑問ではないが、この異世界は現実だ。装備出来ない、持てないなんてことあるのだろうか?

 そこで手当たり次第装備を取り出して持ってみた。結果、全て装備出来たのだ。

 そしてリンはそこからもう一歩踏み込んで考えてみた。


 ここが現実なら、転職したって前の職業(クラス)技能(スキル)()()()()なんてあるのだろうか?と。


 本来【ソウルゲート】では転職する際は専用の施設に向かい、手続きをしなければならない。しかし、ゲームでないならそんな必要ないはずである。

 そこでリンは装備を変えながらステータスの技能(スキル)欄を確認していったのだ。すると思い出したかのように技能(スキル)欄に各種職業(クラス)技能(スキル)が生えてきたのだ。ないと思っていた、出来ないと思っていたから表示されていなかっただけかのように。


 リンは攻略サイトを運営する為に、全ての職業(クラス)をカンストさせている。流石に種族スキルまでは無理だが、全ての職業(クラス)のスキルと武器が使えるのはチートもいいところである。


「うーん。これは色々悪いこと出来そうな気もする♪」


 本来出来ない技能(スキル)の組み合わせを行える。あれこれ考えるだけでも楽しいし、試したくてしょうがなくてうずうずしてくる。


「そういや最近、名前付き(ネームド)モンスターが多いってリカルドさんが言ってたっけ?試すには良さそうだなぁ。リカルドさんが依頼受けるなら付いていこうかな?あの()()()()()()()し」


 リンはニヤニヤしながら、あの二人がどうなっているか想像していた。

 たった三人の攻撃だけ、しかもリンと適正レベルに届いていない者でレイドモンスターを倒し、リンがカンストしている為、莫大な()()()を得たであろう二人の変化を───





読んで下さってありがとうございます。

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では、次投稿でお会いしましょうノシ

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