オタク同士きっと仲良くできるよね?
6限目の終わりのチャイムが鳴る。
そのチャイムは一人の少女のテンションを一気にMAXへと押し上げる。
担任の先生がPTAやら進路やら色々のプリントを生徒たちに渡した。
全くと言っていいほどにプリントの内容なんて頭に入らなかった。
なぜなら、今日の日付け四月十五日の金曜日は岩本鈴香にとって平日ではなかった。
平凡な日。
そんな省略形では片付けられない祝祭日であった。
『魔法少女ルリルリちゃん』8巻の発売日なのである!
岩本鈴香は今日の日を2年と3ヶ月待った。
『魔法少女ルリルリちゃん』の作者が休業を発表し、一時は未完のまま終わるのではという噂も流れた。
しかし、ルリルリの作者のブログで最新巻の発売が突然に発表された。
その知らせはルリルリのファンを困惑させたと同時に、歓喜の声をあげさせた。
それは、岩本鈴香も例外ではなかった。
この小説の主人公である、岩本鈴香は『魔法少女ルリルリちゃん』を連載開始からの古参ファンであり、超がつくほどのルリラーである。(ルリルリちゃんのファンはルリラーと呼ばれる)
そんなルリラーの鈴香は担任の有り難くて長い話が終わった後、周りのクラスメイトから変に思われない程度に素早い動きで学校を出た。
学校から本屋までの道のりは距離にして1km。
この1kmの距離を鈴香はまたしても周囲の人に変に思われない程度に素早い動きで歩いた。
本屋に着く頃には、少しフラフラしていた。
それもそのはず。
運動アンチの鈴香には素早い動きは過酷なことだった。
しかし、そんなことは今はどうでもいい。
鈴香の目には『魔法少女ルリルリちゃん』最新巻しか見えていない。
大々的に置かれたルリルリちゃんの最新巻。
鈴香は某海賊のように腕を伸ばし、最新巻を掴もうとした。
その時、同じ本に触れる手と手。
素早い動きをしていたのは、鈴香だけではなかった。
鈴香が顔を見上げるとそこに、同じクラスでゴリゴリヤンキーの森安くんがいた。
鈴香は時が止まったように感じた。