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桃色の花弁  作者: 遥前 備
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特別な存在(終)

あの日から、佐々木さんは私にとって特別な存在になった。そして最近、この気持ちが恋愛感情へと変化している。

佐々木さんは私のことをどう思っているのだろう。ただの職場の後輩だろうか。好かれていなくても、嫌われて居ないといいな。いや、やっぱりできることなら好かれたいな。

そもそも、佐々木さんに彼女はいるのかな。

いつの間にか、私の世界には必ず佐々木さんがいるようになった。

私が入社して2年目の春。今日は佐々木さんと夜勤の日。

今日こそ、彼との距離を縮めたい。

佐々木さんと2人きりの待機室。お互い作業が一段落した時間に、私はスマホを触りながら彼に話しかけた。

「佐々木さん、お花見行きますか?」

「え、お花見ですか?」

佐々木さんは、少し驚いた表情でこちらを見る。

「はい。今年は出店のある公園が増えるみたいですよ」

私はスマホから視線を上げた。

「もうそんな季節なんですね」

佐々木さんはそう言い微笑んだ。

「行くと思いますよ。お花見」

「え?」

てっきり佐々木さんは、曖昧に答えをぼかすと思っていた。「どうですかね」とか「考えてなかったです」とか。そしたら、さりげなく誘おうと思っていたのに。

「そうなんですね。毎年行っているんですか?」

私は、ありきたりなセリフで気持ちを隠す。

「そうですね」

佐々木さんら控えめな笑顔で答えた。

「もしかして、彼女さんとですか?」

聞かなければ良かった。口に出してから後悔する。佐々木さんの顔が赤かったから。あまりにも嬉しそうな、恥ずかしそうな顔をしていたから。

「大切な人です」

佐々木さんも、そんな顔するんだ。普段はあんなにクールなのに。誰かを想って笑ったり、恥ずかしがったりするんだ。その人に見せる笑顔は、きっともっと特別で素敵なんだろうな。羨ましいしいな。

「田中さん?」

急に名前を呼ばれ、私は顔を上げる。佐々木さんは、心配そうに私を見ている。

「あ、急に黙ってすみません。彼女さんと楽しんできてください」

「ありがとうございます」

佐々木さんは、いつもと同じ魔法の笑顔を見せた。でも、いつもみたいに元気が出てこない。

あぁ、魔法が解けてしまった。

待機室にナースコールが響く。私は深呼吸をして、利用者様のお部屋へ向かった。


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