第8話 天使の糸
「そうだわ、折角ならあの子達にも、戦ってもらいましょう…!」
何かを閃いたのか、リアンは、自分自身の手を何回か叩く。
リアンが自身の手を叩いた瞬間、背中から細い糸が出ている人々が、ゾンビのようにぞろぞろと、現れてきた。
人々の目は、白目になっていて、小さい子から老人まで、老若男女問わず、糸が出ていて、全員の糸は、1つの太い糸となって、リアンの右手と繋がっていた。
「私の傀儡人形よ…!…皆、あそこに居る子達も、仲間にしてあげたいから、捕まえて頂戴ね〜」
「…」
恐らく、天使であるリアンの能力で、傀儡人形となっている人々は、無言で何度も頷きながら、俺らに襲いかかってきた。
「取り敢えず、背中から出ている糸を切れば、開放できるんじゃないか?」
薙刀を振り、傀儡人形となっている人々を寄せ付けていない、零が糸を斬るのを提案してきた。
「それが良いな……貰った!」
瞬時に、俺のことを襲ってきていた、男性の後ろへ回り、糸を刀で斬ろうと試みたが、何か違和感を感じ、斬るを止めて、男性と距離を取る。
「なんで、斬らないんだ?」
唯一武器がまだないケイトが、人々を避けながら聞いてきた。
「…糸を斬ったら、あの人らは、傀儡人形ではなくなる…そうなると、向こうの戦力が減る…だから、普通なら援護か何かをするのに、余裕な顔をしているのに、疑問を持ったんだ…」
「確かに…普通なら何かをしても居はずだ…」
余裕そうな顔で、こちらを傍観しているリアンに、疑問を抱いたので、斬らなかったことを伝えると、他のメンバーも疑問に思ったようだ。
「ふふっ…気づきましたか…折角なので、教えてあげますよ…」
微笑みながらも、上から目線でリアンは、糸の秘密を教えてきた。
「私の能力は、見ての通り、糸…普通なら弱いと思われがちですが、私の糸は特殊でしてね…私自身と人の魂に結びつけることが出来るんですよ、そうすれば…人を自由自在に操れる…と言うわけです…」
「…もし、糸を斬ったらどうなるんだ…?」
「勿論…!死にますよ…?」
真剣に聞いている俺たちに対して、リアンは、ヘラヘラとしながら、説明してきた。
「何かしらの方法で、魂との繋がりを斬ると、魂自体にダメージが入ります…魂自体に少しでもダメージが入ると、魂が存在を維持することができなくなり、現世…いや、この世界自体から消えて無くなりますよ…」
笑顔で言い張るリアンに、少し恐怖心を懐きながらも、この糸を斬っては、いけないことを俺達は、理解した。
「哀れな人を助けたかったら、私を倒してみなさい…?…でも、私の所まで、行き着けるかしら…?」
操られている人々が、リアンの肉壁のようになるよう、集められる。
「クソ天使が…!」
操られている人々を傷つけることは出来ないため、何も出来ず、スキができるまで構えて待っていると、人々の間から糸が現れ、俺らに襲いかかってきた。
「なんだ、これ?!」
糸が腕に絡みついた零が、声を上げつつ、糸を切ることで、糸を振り払った。
それでも糸は、容赦なく、俺らに襲いかかってき、それぞれで糸の対応をしていたら、走って糸から逃げている、ケイトが推測を言ってきた。
「恐らく…人を操ることを出来る、糸だろうな…!…糸に巻き付かれても、直ぐには傀儡人形には、ならない…だから、僅かな間なら、糸に絡みつかれても大丈夫ってことだな…!」
今にも追いつかれそうだったので、俺に襲いかかってきていた、糸を切り刻み、ケイトの糸も切り刻んだ。
「ありがとさん」
「大したことねぇよ…」
礼を言われるも、糸の処理に集中したいため、返事をさっさと済ませ、糸の処理を再開した。
糸は、斬っても斬っても、襲いかかってきて、切りが無い。
一回、撤退することも考えたが、ここで俺らが逃げると、さらに被害が出る。
「…」
「グッ!」
操られている女性が、いきなり蹴りを入れてきたため、防御する時間がなく、腹に蹴りが入ってしまい、一瞬だけ怯み、糸が足に絡みついてきたが、直ぐに糸を斬ったため、難を逃れた。
無限に出てくる糸で、苦戦してるのに…操られている人まで来たら、流石に対処しきれない…数名を俺達に向かわせたので、リアンを守る人は、少なくなっているが…倒す方法が中々思いつかない…
俺が悩んでいると、自身の速さを使って、上手いこと逃げている俊が、俺の元に来て、
「作戦がある…………だから、時間を稼いでくれ…」
と、小さな声で、作戦の内容を伝え、実行するために、行ってしまった。
俊は、他のメンバーにも伝えたのだろうか、全員ができるだけ時間を稼ぐ為に、自分の力で上手いこと逃げている。
俺達は、俊を信じて、時間をできるだけ稼ぐことにした。