第5話 物語の始まり
「グオォォォ!!」
竜は、再び尻尾を勢いよく、当てようとしてきたが、迅が放っただろう弾丸によって、軌道を反らされた。
「グルルル…ガァァ!!」
軌道を反らされたのが、気に触ったのか、竜は、俺達を無視して、尻尾を使い、瓦礫を迅達がいる方向へ向かって、吹き飛ばしたが、瓦礫は、途中で不自然に方向を変え、別々の方向へ飛んでいった。
『一応、瓦礫は片付けたぜ…!』
通信機の声からして、恐らく、俊が瓦礫を吹き飛ばしてくれたのだろう
『迅が持っているレールライフルは、レールガンのスナイパー版と思ったほうが分かりやすいだろ…レールガン同様、電気の力で撃っているから、反動が少なくし、威力を上げれる…そして、俊が履いている、ライトニングシューズは、鉄狼のパワーグローブのように、使用者の脚力を上げれるが…両方とも、最大出力が未設定だ…くれぐれも、最大出力を出さないようにな!』
ケイトの説明が入り、最大出力で使わないよう、2人に釘を刺す。
「グガァァァ!!」
竜は、頭突きを繰り出してくるが、鉄狼に受け止められる。
「今だ!良太!!」
「うん!」
鉄狼の合図と共に、大剣を持った良太が、後ろから竜の背中に大剣を刺し込む。
「ガアァァァ!!」
悲鳴を上げながら、暴れ始めた竜から、少し距離を取る。
大剣は、背中に刺さったままで、そこから、大量血が出血している。
このまま、行けば失血死するだろうと、思っていたが、ケイトから連絡が入った。
『おい!、逃げ遅れた人が、お前らの近くにある黒の軽自動車の中にいるぞ!』
ケイトに言われ、辺りを見渡してみると、黒の軽自動車が確かにあった。
近づいて見ると、赤ん坊と母親と思われる女性が、頭から血を流し気絶していた。
幸い、竜は、痛みで暴れているため、救助できる。
「鉄狼、頼む!」
「任せとけって!」
鉄狼が運転席側の扉をこじ開け、まずは女性を救出し、後ろでチャイルドシートに居る、赤ん坊も救出する。
「俺が安全な場所まで運ぶから後は、頼んだぞ」
そう言い鉄狼は、女性を抱えつつ、赤ん坊を乗せたままのチャイルドシートを片手で持って、安全な場所まで、連れに向かったが、偶然、竜の尻尾が、鉄狼のそばにあるマンションに当たり、瓦礫が降ってきた。
「危ない!」
先に気づいた俺が、鉄狼の元まで走り、刀を鞘から抜き、構えた。
一度、呼吸を整え、瓦礫を石サイズぐらいまで斬り、難を逃れた。
「悪いな…」
「問題ねぇ…ほら、気をつけていってこい!」
「嗚呼…!」
鉄狼を見送り、竜の方を見る。
暴れていた、竜だったが、冷静さを取り戻したのか、口を半開きにし、何かをため始めた。
『不味いぞ、竜のやつ、最後の力を振り絞って、ブレスでそこら一帯を吹き飛ばすつもりだ!』
解析をしてくれたのか、ケイトが全員に向かって、そう告げてくれる。
『…俺がなんとかする…』
そう言ったのは、零だった。
『俺の魔法で、アイツのブレスを相殺してやるよ』
「…任せるぜ、零!」
「嗚呼…!」
零の心強い言葉に俺は、賛成した。
「グ、グガァァァ!!」
溜め終わったのか、竜がブレスを思いっきり放つ。
『…フリーズレイ!』
通信機から、零の声が聞こえてきた瞬間、ブレスの反対方向から水色の光線が飛んできて、ブレスとの押し合いを始めた。
最初は、ブレスが少し優勢だったが、直ぐに光線に押し返され、その勢いのまま光線は進んでいき、竜の顔に直撃した。
「ガアァァ…ァァ…ァ……ァ……」
光線に当たった竜は、顔から凍り初め、光線に当たってから数秒後、竜は、叫びながら氷漬けとなり、動きが止まった。
「勝ったの…か?」
ふと、そんな声を漏らしてしまう。
正直の所、この結果は予想外だった。
勝てるとは、思っていたが、こんなにあっさり終わるとは、思ってなかったのだ。
俺と良太が、何も喋らず氷漬けとなった竜を見ていると、
『全員、そこから離れろ!レヴォルトがヘリを飛ばして、竜を氷漬けにした者を探してる!…急いで離れないと、後が面倒くさいことになるから、早く離れろ!』
ケイトから、レヴォルトが俺達を探していると、通信が入り、俺達は瓦礫を使って、姿を隠しながら、藤花まで向かった。
◇◇◇◇◇
琉希達が竜を倒してから、数時間後、氷漬けとなった竜の周りには、レヴォルトの調査団が、色々と情報収集していた。
「……一体全体、誰が竜を倒したのだ?」
調査団の団員達が、色々と調べているなか、1人の男が、氷漬けとなった竜を見上げていた。
男は、中世風の甲冑を全身で纏っており、顔は見えない。
「レイア様!…こんな物が、竜の背中に刺さっておりました…」
「なに?」
調査団員が持ってきたのは、良太が竜の背中に刺した大剣だった。
大剣を持って、眺めていた男は、
「…この大剣を技術班に、渡してこい!」
「はっ!」
大剣を持ってきた団員に戻し、レヴォルトの技術班に渡すよう、命令をした。
「…善か悪か…見定める必要があるな…」
男は、竜に背を向けて、レヴォルト本部と繋がっている簡易型ワープホールを潜った。
そして、ゴッドスレイヤーが竜を倒したことにより、彼らの物語が始まったのである。