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伝説   作者: 海堂直也
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第一部  向かう

確かな証拠は無いが、綿々と語り継がれている事こそが何より。


伝説と言うモノは、どれだけ人が想いを馳せるかにかぎります。


「それが本当だったら凄いな!」


『どこまで本当か分からないけど、大学の先生とかも来てたみたいだし、小さい頃はそんな話をよく聞かされた気がするんだよね。』


「何だよ、肝心な所が頼り無いな。」


『4歳の頃の記憶だからなぁ。そんなに細く覚えてないよ。』


「よし!確かめに行こう!」


『はぁ?無理だよ!ダムの底の話だって言ったろ。』


「近くに温泉あるんだろ?ツーリングがてらにさ!な!」


昭和初期、ダム建設により移住を余儀なくされた村、彼はそこにルーツを持つ。 そこは、仏堂があり、武蔵坊弁慶の薙刀岩融・白紙の勧進帳・が隠されている。と村人達は伝えられて来た。


弁慶は、岩手県平泉町中尊寺・神奈川県鶴嶺八幡宮に墓はあれど、生き延びて、この地に隠れ住み、僧として留まり、男手の少なかった村で、重宝されたと信じられ、お寺の住職が子孫だとか、1番広い畑を持つ地主さんが子孫だとか、相撲大会で連覇した家系がそうだとか、兎にも角にも、弁慶縁の地であると、誰もが自負していたそうで…


「思ったより早く着いたな。」


『先ずは温泉だな。』


「とりあえず聞き込みだろ。」


山間の秘湯。自身のルーツに初めて足を踏み入れたというのに、余韻に浸る暇もない。さてはて、何処で誰に何をどおやって聞いたものか。町役場にでも行ってみようか、それとも等と考えていると、友人から宿帳の記入を促される。


公式文書でなければ略字で記入する自身の名前を、珍しく旧漢字で記した。


【おや。よくこの字が書けるねぇ。この辺の血筋の人かい?】


宿帳を見た旅館の主人が嬉々とした表情を覗かせる。それに呼応して彼はまた別の字を書いてみせた。


普段の略字、戸籍上の旧漢字、本来使っていた字、彼の家は代々三種類の苗字を教えられる。


『曾祖父はダムに沈んでいる村の出身だと聞いています。』


【あぁそうかい。じゃあ、弁慶の墓でも見に来たか!】


「お!あるんですか!弁慶縁の品々が!」


二人は驚きと喜びを隠せない。ネットで調べても、弁慶とこの土地を繋げるものは何も出てこなかった。村だけの秘密、曰く付き、本物の匂い、否が応でも高まる期待と不安のツーリングに、旅館の主人から出た弁慶の名、まさかの当選である。


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