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絶望しやすい女

女の名前はリサと言うらしい。


二十四歳の独身女性で

ダメな男に心底惚れ込んでおり、

絶望の日々を送っているようだ。


そんなに絶望しやすい人間だなんて。


僕からすれば、涎が出そうなくらいに、

かなりの良物件と言える。



あの後、どうやって彼女を助けたかと言えば……。


ネクロマンサー的な肉体操作術で無理矢理、

強制的に彼女の心臓を動かし続け、


その間に彼女の肉体のみを時間逆行させて、

体から流れ出た血液をすべて

逆流させて元の体内に戻したのだ。


そしてそのまま

手首を切る前の状態まで

彼女の肉体は戻しておいた。


回復魔法なんてものは使えないけど、

悪魔なりの蘇生術ぐらいはあるもんさ。


こんな飄々とした態度ではあるが、

僕はそれなりに優秀な悪魔なんでね。



「……あなた……誰?」


自分のベッドで目覚めたリサは

開口一番そう言った。


「僕は、ベルゼ……

まぁ、はっきり言っちゃえば、悪魔だね」


「……あ、悪魔?」


人間にはありがちなんだが、

こういう場合、記憶やら意識が混濁していて、

正常な思考に戻るには少し時間が掛かる。


「あたし、死んだの?」


「いいや、死んでない、

僕が助けてしまったからね」


「……そう、

また死ねなかったのね……あたし」


徐々に記憶が整理されて

正常な思考に戻りつつある彼女は、

思惑通りに再び絶望してくれている。


よかった、よかった。


これで食事にありつける。


では……


――いただきます


何故自分が絶望していたのか、

語りはじめる彼女。


食事中に聞く、こうした身の上話は

最高のスパイスのようなもの。


絶望の背景を知ることで、

奥行きが出て、味わいも深まる。


いつもとは違った

唯一無二へと変質して行く。



彼女が語った絶望を

簡単にまとめるとこうなる……。


結婚を誓い合った彼氏と言うのが、

まぁまぁの人間の屑で


スイッチが入ると

手がつけられなくぐらい暴れて、

一緒に居る時は

ほぼ毎回のようにDVを受けている。


ギャンブルが大好きで

そっちこちに借金をつくっては、

彼女が代わりに返済をさせられている。


挙句の果てに女癖も悪くて、

しょっちゅう浮気ばかり。


まぁ、人間達が絶望に至るには

よくあることだよ。


居るんだよね、

ダメな男ばかりに惚れてしまう人間の女って。

そういう層はどこの世界でも一定数居るもんさ。



「ありがとう、あなたに話したら

なんだか気分がスッキリしたわ」


誰かに話しを聞いてもらったからじゃなくて、

僕が絶望を喰らったからなんだけどね。


まぁ、本人がそう思っているなら、

別にそれでいいけど。


「なんであたし、絶望して

死のうなんて思ってたのかしら……」


「なんだか、悩んでいたのが

馬鹿らしく思えて来たわ……」


「衝動的に自殺を図る人間なんて、そんなもんさ」


後になれば、

なんであの時は死のうとしたのか、

みんな不思議に思うものさ。


ただ、気づいた時には

すでに死んじゃってるから、もう遅いんだけどね。


「あなた、優しいのね……」


「まぁ、でも、悪魔なんだけどね」


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