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静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
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私もこうして生きてこられたのは、字が読めたからだ。

本を読むことができたから、知らない言葉は辞書で調べられたし、必要な情報を得て、工夫することができた。

字を読むことができなかったら、生きるための情報も得られずに野生の動物のように生きていたか、あるいは人知れず死んでいたかもしれない。


学ぶことで自分の未来を切り開く力を得たり、家業以外の選択肢や、自分の適性を知るきっかけにもなるだろう。


子どもも大人も学ぶ場があれば良いと思うが、日々の生活に困窮しない生活レベルまで領内の生活水準を上げねば教育については無駄になりかねない。


私の今後のプランも、いつまで私が関わることができるのか。


皆の賑やかで活発な会議風景を見ながら、なんだかとても寂しいようななんとも言えない気持ちになる。

この気持ちは何と言うのかわからないが、とにかくいつまでもこうして皆と同じ方向へ進んでいきたいと願う。


「それでは本日の会議はこれにて終了といたします。皆さま、お疲れ様でした。」


会議の終了を告げると、皆はエレナの周りに集まってハーブ園について質問や意見を交わしていた。

ゴールドガーデンの新たな目玉となるべく、様々な事業発展を目指したいのは皆同じ。

ハーブ園は観光にも、加工にも活用できる上に、国内ではまだ競合する事業者も無いため、参入後よりほぼ占有業者となり得る。

ハーブティーは人気が高いが、何せ効果効能に合わせると味が良くなかったりとブレンドが難しい。

加工もまた然り。

そのため単品では販売は何社か取り扱っているが、茶葉専門店はなく、国内のお茶会を催す令嬢の悩みの種だそうだ。

エレナのハーブティーは配合が絶妙で、老若男女問わずかなり受け入れられるだろう。

更には薬草としての効果も通じているからこそ、味だけでなく、気分や体調ごとに茶葉を選択ができるというのは女性だけでなく男性からも需要があるに違いない。

花を使った菓子もお茶と共に販売すればかなり人気が出るだろう。


そういった話題で盛り上がり、近々エレナ主催でお茶会を開こうと女性陣は更なる盛り上がりを見せている。

男性陣も参加したいようで、試験後の反省会という名目で集まることとなった。


さすがはエレナ。

既に人気者だ。

あの笑顔や話し方、態度など、人との距離を近づけられる魅力がある。

私に足りないところを学ばせてくれ、補ってくれる。

エレナのことを尊敬している気持ちは常にあるが、皆に囲まれて皆を笑顔にするエレナに、少し羨ましいと思う気持ちが芽生えた。

私は皆を笑顔にするのは難しい。

少しずつ、私自身の笑顔や感情は出せるようになったが、やはりエレナのような素直さが私には足りない。

どうしても気持ちを表に出す前に、頭で考えてしまいがちだ。

エレナと過ごす時間が増えることで、私も人間らしい、女の子らしい考えや行動ができるようになるだろうか。

大人にならざるを得ない私の立場と、私の生い立ちと、私らしさの探求と。

私の内面はちぐはぐで中途半端だ。


公私を分けつつ、年相応の女の子としての暮らしも楽しめたら良いのに。


だが、ゴールドガーデンやテッドのことを考えると、私が幸せになるのは自分の役目を果たしたからだと思うのだ。

私はわがままだ。

近頃は特に自分のわがままな考えを認識して、自己嫌悪に陥る。

テッドが大変な時に、エレナとの楽しい時間を堪能したり、私ばかりが楽しく幸せな時間を過ごすなんて。


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