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「何度でも言うが、貴女のせいではない。悪いのは犯人たちであって、皆被害者です。」
口々に慰めてくれる声が聞こえてくると、涙が目に溜まり始める。
こぼれぬよう必死に抑え、話しを続ける。
「すみません、ありがとうございます。エドワード殿の病状と致しましては3ヶ月間の療養が必要であるとのことから、この期間は領内の仕事からは外れ、休養に専念できるようにします。3ヶ月後の医師の診察結果次第で復帰か療養の延長かを決めていきたいと思います。これは私の中では決定事項ですので、検討内容ではなく報告事項といたしました。皆様から何かご質問などご意見はございますか?」
静かに皆首を振り、同意を得られたようだ。
「ありがとうございます。皆様にくれぐれも誤解のないようお伝えしますが、エドワード殿を特別待遇としてこのような対応をするわけではありません。皆様にも病気や怪我がありましたらば、医師の意見の元で療養していただくように致します。そのために担当部門も創設し、皆でカバーしあえるような仕組みを作っていくのです。議員選挙もこれから行いますし、誰かが居なければ混乱し、パニックとなるようなことのないよう安定した組織を作って参りましょう。今回は私も誘拐されてしまいましたが、例え私に何かあったとしても、領内が磐石なら領民も安心できます。」
こうしてテッドの療養については皆の理解を得られた。
「次にハーブ園の開園についてです。まずは白の庭からスタートし、ゆくゆくはきちんと整備して広いハーブ園を開こうと思っています。ハーブもお茶、食用、染料など幅広く利用できるものから始め、それらの加工も行い、ゴールドガーデンの特産となればと考えています。特にハーブティーはオリジナルブレンドで効果・効能や香りごとに売り出せばきっと人気が出るでしょう。既存のハーブティーは単品の販売ばかりです。ゴールドガーデンのオリジナルブランドでハーブ園を運営し、加工品もブランドとして売り出していきたいと思います。つきましてはハーブ園の責任者を王都からお呼びした私の友のエレナ殿として、作物などについては一任していきます。庭での栽培がうまくいけば、土地を整備してハーブ園を開き、その横に喫茶スペースのあるお土産屋などを開いて、ハーブを見たり、食べたり、加工品を見たり買ったりと楽しめる場所を作っていきたいのです。エレナ殿、皆様へご挨拶頂けますか?」
エレナを呼び、壇上へ誘う。
事前にメイド服から平服へ着替えを済ませるよう指示していた。ドレスでは大仰だし、私服ではカジュアルすぎるため、無難な物に。
「王都から参りましたエレナと申します。身分は平民でございまして、父は王都の商工会長です。この度ハーブ園の運営を一任いただけると言うことで精一杯努めさせていただきます。王都の商工会ともコネクションがありますので、ハーブの加工がうまくいきましたら流通する一助となりますことをお約束いたします。まだ実験的な段階ではありますが、現状では栽培は成功しております。責任者というには力不足ではございますが、ご指導・ご鞭撻のほどをよろしくお願い致します。」




