表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
9/398

9


そして、私の頭を悩ませることはまだある。

王太子マーティン殿下のことだ。


時候の挨拶はもちろん、毎月季節の花の花束が届くし、パーティー毎にご招待を頂いている。

領地の内情が不安定なため毎回の参加はできないし、正直に言えば独りでいる時間が長すぎたため、賑やかで華やかな世界はまだ馴染めずにいた。マナーも自信がないため、できるだけそういった場は避けたいのが本音だ。

主要な催しや、繋がりを持ちたい相手が参加されるようなものには出席している。

ほとんど欠席させて頂いているのだが。


王太子殿下も特に無理強いはしないし、欠席だと労りのお手紙をくださったり、私が手がける事業について(例えば治水事業ならば治水に関する)本を贈ってくださったり、その専門家の紹介をしてくださるのだ。

お忙しいのに「私のための」贈り物。若い令嬢としての装飾品などではなく、本当に私が欲するものをよく考えてくださっていることに感謝している。


エドワード殿との関係も悪くはないが、男女としては何もない。

婚約したのは気のせいかと思うほどだ。

デートもしていなければ手を繋いだこともない。

2人きりで会うというのがデートというのならば毎晩仕事終わりに私の部屋で2人きりで逢瀬を重ねている、と周囲からは見えよう。

会議にかける前に方針を確認したり、新たに問題がないかなどを話し合っているだけで、何も艶っぽいようなことはないのだが。

エドワード殿の誠実さはオリバー殿譲りなのだろう。

言葉には出さないが、1年は恋人のようなことはせずに私の気持ちが固まるのを待ってくださるようだ。


お2人とも私にはもったいないようなできた方々だ。

人間性を尊敬している。

お2人とも誠実で優しく、未熟な私を支えてくださっている。

早く一人前の領主として周囲からも認められるよう頑張りたい。



そんなことを考えていると、部屋のドアがノックされた。エドワード殿だろう。

「クレア様、失礼致します。」

相変わらず礼儀正しい。

「エドワード殿、私たちは婚約していますし、もう『様』を付けるのはやめませんか?クレアで結構ですよ。エドワード殿は未来の旦那様ですもの。」

私がそう言うと、エドワード殿も反論する。

「クレア様、私はあくまでも『現状婚約者内定』の立場に過ぎません。ここの領主はクレア様、あなたです。仮に婚姻を結んだとて、領主はあなたのままで、私はただの配偶者なのです。強いて言うならば貴族の仲間入りするくらいで、私自身の身分はあなたよりも下なのです。クレア様を呼び捨てににはできません。」

誠実すぎてかなりの頑固者。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ