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「クレア、素敵な笑顔になってるわ。こんな笑顔が見られるのならもっと早くこうすべきだったわね。すごくいい顔してるわ。」
エレナの一言で、自分が笑っていることに気づく。
「あ、私笑っていたのね。エレナが名前を呼んでくれて、話し言葉も…なんだか距離が近くになったようで嬉しくて。ふふふ。」
嬉しいという感情に気づいた瞬間、ふふふと笑いが漏れ、止まらなくなった。
エレナと2人で顔を見合わせて笑い合う。
「クレア、私はあなたが好きよ。親友として。私にできることは何でも言って。私に何でも話して。私は必ずあなたの力になる。誓うわ。」
力強くじっと目を見てそう言うエレナは、最も信頼できる相手であると確信した。
「そうするわ。エレナってば親友だけどお姉さんみたいよね。私には姉が居ないけれど、もし姉が居たらエレナみたいな感じかしら?」
わたしがそう言うと、エレナも頷きながら確かに、と笑った。
「クレアはね、しっかりしすぎているのよ。だからもっと甘えさせたくなるの。甘やかしたい!見た目がまず天使なんだもの。もちろん私の方が年上で、お姉さん気質なのは否めないわ。でもあなたを見ているとね、甘えて欲しいと最早願ってしまうのよ。」
「願うって何よ?甘やかしてくださるのはありがたいわ、お姉様!エレナこそ、私にできることは何でもしたいと思っているわ。遠慮なく言ってね。」
かなりリラックスして昼を過ごせたおかげで、会議時間が迫っても焦ることなく支度を終えた。
実は会議前はいつも緊張しているのだ。
何だかんだ言っても私はまだまだ子どもで、世間知らずで、人の上に立てるような人間ではないのだから。
いつ会議でなにがしかの失敗を糾弾されないか、揚げ足を取られて追放されないか、余計な心配ばかりしているのだ。この領内会議の参加者にはそのような者がいないことは重々承知しているのだが。
そもそも人と接する経験すら浅いため、大勢と意見を交わすというのは実際かなりハードルが高いのだ。
エレナに見送られ、会議室へ向かう。
いつもの緊張とはまた違った、適度な緊張感というべき気持ちと、いよいよ試験について形が整うのだとワクワクしているようで、楽しみな気分でもある。
会議資料を配り、参加者が揃うのを待つ。
先に来た方々から、
「今日の資料は大変読みやすいですね」
とのお声を頂き、中々好評なようである。
いよいよ全員集まり、会議をはじめる。




