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昼食後もエレナのハーブティーをオリバー殿と頂き、オリバー殿にハーブ園の話を提案する。
「実は、このエレナがハーブに大変詳しく、この通りハーブティーも自分で用意してくれるのですよ。私の家庭菜園の場所からスタートして、ハーブ園を作り、ゆくゆくは観光やハーブティーの流通もしていけるくらい力を入れていけたらと思うのですが。いかがでしょう?」
オリバー殿はお茶を飲みながら感心している。
「そうでしたか。複数のハーブを合わせてあり、香りも良く、味も良い。ハーブティーは中流階級から富裕層までかなりの需要がありますが、流通しているのはブレンドではなく単品ばかりです。エレナ殿のブレンドティーは特に女性うけが良いと思います。それに、健康志向の強い方向けに効果・効能ごとに売り出すのもありでしょう。観光面もその時期の花々を楽しめるようなハーブ園があれば賑わいますね。その隣にカフェを作るのも良いでしょう。」
オリバー殿もかなり乗り気だ。
あとは土がハーブ栽培に合っていれば良いが。
「突然ですがオリバー殿、絵が描ける方のお知り合いはいらっしゃいますか?実は私の従姉妹のアイリーンの顔を私は存じ上げません。肖像画までいかずとも、似顔絵を描いて見せていただきたいと思いまして。私が誘拐された時に若い女性が来たのです。名乗りませんでしたが、その正体を知りたいのです。」
私がそう言うと、オリバー殿は考え込む。
「たしかにアイリーン殿の肖像画はおろか、オズワルド一家の肖像画は全て処分していますからね。画家に声をかけてみましょう。顔を知るものを連れていけば描けると思います。」
これで私の頭の中が少しでもクリアにできれば嬉しい。
解決するかわからないが、あの女性がアイリーンかどうかがわかるだけでも私の気持ちはかなり違う。
証拠が無いためひたすらにもやもやした気持ちしかないもの。
食後に私が過ごしていた離れと、その横の家庭菜園へエレナを案内した。
「ここで私は食べるためのものを育てて生きていました。今では懐かしいとすら思えます。ここでハーブを育ててください。この離れも自由に使って休んだり、道具を置いたりして構いません。必要なものがあれば遠慮無く教えてください。特に肥料などはどういったものが良いか、土もどういうものが良いか教えてくだされば用意します。」
そう言うと、エレナは口を手で押さえて泣きそうな顔をしていた。
「ありがとうございます。土作りから始めて、ゴールドガーデンでの栽培に合うものを検討してみます。しかもオリバー様とのお話も伺いましたが、庭の一角を使わせていただけるだけで無く、ハーブ園までお考えとは驚きました。私、頑張ります!」
エレナのやる気は十分だ。
「私も楽しみなのよ。これが成功すれば、あなたの美味しいハーブティーが更に美味しくなるんだもの。それに、ゴールドガーデンに更に特産品ができるのは有り難いことだわ。オリジナルのハーブティーが作れればかなりの強みよ。」
私の家庭菜園は貧相ではあった。でもここのお陰で私は食糧を確保できた。
色々と感慨深い場所。
ここが私の命をつないだ。
ここがエレナの夢に繋がると良いと思う。




