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「そこまで考えてくださっているのですか!本当に不甲斐ない息子で…。しかし、あいつももう自分のことは自分で考えられる年です。婚姻も、その後も自分で考えられるでしょう。また今後の経過を見ながら相談していきましょう。」
そして執務室へ行き、それぞれの仕事にとりかかる。
「失礼いたします」
エレナがお茶を用意してくれた。
「おはようエレナ。昨日はよく眠れたかしら?これからよろしくね。」
「おはようございます。おかげさまでふかふかのベッドで気持ちよく眠れました。よく眠れすぎて、危うく寝坊するところでした。こちらこそよろしくおねがいいたします。精一杯努めます。」
さわやかなフレーバーのお茶をカップに注ぎ、机に置いてくれる。
そういえばエレナとハーブ園について話をせねば。
「そういえば、エレナの庭ですが、私が以前家庭菜園を作っていたところがあるのでそちらにと思います。あとで案内しますね。」
「ありがとうございます!嬉しいです!自分の好きなハーブを育てられるなんて夢のようです!」
花が満開になるよりもぱっと満面の笑みでそう言うエレナは、心から嬉しそうだった。
エレナの庭はエレナの希望があれば拡大していくことも良いと思っている。
エレナがその気ならハーブ園を作り、栽培して販売するのも良いだろう。
ハーブティーの需要はかなり高い。
…それに。ハーブ園を開いて流通させていくことで、利益云々以上にハオマとの繋がりがあるかもしれない。ハオマが今どこで何をしているかわからないが、薬草関係の仕事をしていればきっとハーブ園の存在を知る。
また、ハーブ園の取引先やその他の関係者からハオマの情報を得られるかもしれない。
「エレナ、楽しみね。私にハーブティーを教えてくれる約束忘れないでくださいね。楽しみです」
やることリストにハーブ園事業展開を追加しよう。
見た目も美しければハーブ園は観光にも向く。
問題は、ハーブの栽培に土が適しているか。
私にはそこはよくわからないが、エレナや農業の部門に相談していけば良いだろう。
そういえば次回の会議の日程が有耶無耶であったと思い出す。
試験まであと2週間ほどだ。
受験票作成など諸々の進捗も確認せねば。
各村長も招き、最終確認をしよう。
テッドの穴はなんとかなる。
各部署の名称も決めよう。
「エレナ、お使いをお願いできるかしら?オリバー殿に次回の会議をそろそろ日時を決めねばならないので、調整してくださいとお伝えください。オリバー殿の進捗に合わせての日時で構わないこともお伝えくださいね。」
エレナは深々とお辞儀をすると、
「承知いたしました。では早速行ってまいります。他に何かご用はございますか?」
と、他の用事の有無まで確認してくれた。
「今のところは大丈夫よ。ありがとう。」
「では失礼いたします。」
エレナが退室すると、静かな部屋とさわやかなハーブの香りが残る。
この静けさはあまり好きではなかったが、ハーブの良い香りのお陰で、落ち着いた良い気持ちになれる。




