表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
68/398

68


そしてどれほどの時が経っただろうか。

目も開かないくらいに泣き腫らし、段々と涙が枯れてきた。

エレナは一旦退室したと思ったら冷たい布巾を持ってきてくれた。


「クレア様、そのようなお顔ではエドワード様にお会いできませんよ?目元を冷やしてくださいませ。」


優しい声でそう言って、布巾を手渡された。

ひんやりと心地よい。

このひんやりとした感触に、心も落ち着きを取り戻す。


もう泣くまい。

テッドの前でも泣くまい。

明日はテッドの見舞いに部屋を訪ねよう。


そう心に決め、その日は休むこととした。


翌朝、やはり早起きな私が目覚めたのは空がしらばみ始めた頃だった。


薄明かりの中で日が昇っていくのを眺めるのが朝の楽しみだ。

これからどんどん日が昇って、明るくなる。

私たちの未来もそのようになることを毎朝願うのだ。

闇から解放され、さわやかな光を受け、新たな1日を始める。


テッドの部屋を訪問するのにまずはオリバー殿経由で訪室の許しを得よう。

突然訪ねて動揺させないようにせねば。


テッドとの再会に向けて計画を立てる。

どうしたらテッドに感謝を伝えられ、謝罪ができるのだろう。

そして、どうしたら償いとなるのだろう…。


オリバー殿に会いに行こう。

日も昇り、室外も人の気配を感じ始めた。

オリバー殿とテッドは私の城に住んでいる。

色々と打ち合わせをしたりするのに都合が良いからだ。

それに、婚約者と舅ということもある。

そのため城内にテッドもオリバー殿もいるのだ。


しかし、起床時間などまでは把握していない。

まだ休まれていたら…と思うと中々訪ねることができない。

でも早くテッドを見舞いたい。


意を決してオリバー殿の私室を訪ねることにする。

オリバー殿とテッドの私室は隣同士なのだが、テッドの私室を素通りして、オリバー殿を訪ねるというのは初めてかもしれない。

いつもはテッドと共にオリバー殿を訪ねている。

オリバー殿の私室のドアをノックすることすら色々な意味で緊張する。


ドアを3回叩く。


「どうぞ。」


オリバー殿は起きているようだ。

はっきりとした声であり、寝起きのような緩慢さもない。

入室の許可を得たため、ドアを開く。


「おはようございます、クレアです。早朝よりのご訪問大変失礼します。実はお願いがございまして、そのご相談に参りました。」


オリバー殿は顎鬚を撫でて少し考えているようなそぶりを見せる。


「テッドのことですな。いらっしゃると思っておりました。ですが、今は私ともあまり会おうとしません。最低限の会話しかしないくらいです。いえ、正確には会話すらありませんな。あれはただの返事です。」


予想通りということで早くから起きていてくださったのだろうか?いつも早起きな可能性もあるが。

それはさておき、今は人と接すること自体に消極的なようだ。実の父親でさえも受け入れられないのか。

テッドに深い心の傷を負わせてしまった。

罪悪感や悲しみが私の顔に出ていたのか、オリバー殿は慰めてくださる。


「クレア様、重ねて申し上げますが、決してあなたのせいではないのですよ。あなたのために行動したのは事実ですが、あなたのせいでは決してない。そこは間違いのないようご理解ください。」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ