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静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
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「ではクレア、名残惜しいが私は戻る。明日は見送れないが、気をつけて帰るのだぞ。護衛をつけるからな。安心すると良い。」


バタンと扉が閉まると、途端に静かな部屋がとても広く、寂しさを感じた。

しかし、胸の中なのか、頭の中なのか、からだの中に殿下やエレナ、テッドやオリバー殿など、身近な人たちの姿が浮かんで来た。


今日の幸せ。

私は1人ではないと改めて気付けた。

良くも悪くも色々な感情を持っている私は、生きた人間だと実感した。全ての感情を受け入れて、それを出し切ろう。受け止めきれない時には誰かに支えてもらっても良いのだと知ることができた。

私は前へ進んで良い。自分以外の人のためにと信念を持っている限り。ただし、周りの意見もきちんと受け止めて進んでいこう。そう思える。

エレナがゴールドガーデンに来てくれることになった。本当に嬉しい。

人の温もりを知った。体温も、鼓動や肺の音、生きていると実感できる。安心できる。抱きしめられるというのは心地よいのだと知った。きっと両親が現在の頃は抱きしめてもらったのだろうが、私の記憶にはその温もりは無い。

テッドは重傷だが無事だというのも嬉しい知らせだ。

明日再開したらきちんと謝ろう。私の不始末でテッドに迷惑をかけた。迷惑なんて一言では済まないような被害だが。

誰かと飲むお茶は美味しいと再確認できた。

時間によって変わる街の表情を見て楽しむことができた。


考えること全てが感謝に繋がった。

昨夜のように別の方面の不幸を考えて辛くなるということはない。

またそれを考えて辛くなることがあるだろう。

でもその時は周りに頼ろう。

1人で受け止められずとも、誰かと一緒なら受け止めていけるだろう。


今日は早くゆっくりと眠れそうだ。


良い夢を見られると良いが。


静かな部屋で横になっていると、自分の鼓動や呼吸音が聞こえる。

生きている。

私は生きている。

先ほど感じた殿下のそれと同じに聞こえてくる音に安心する。

人間らしさの無かった私も、やはり人間だ。

他の人間と同じように体温があって、心臓が動いて、息もしている。感情もあり、喜怒哀楽がある。

これからどんどん同世代の女の子に近づいて、追いついていきたい。

失った時間の分、これからの時間が充実するように、やれることを努力を惜しまず頑張っていこう。


ゴールドガーデンに戻ったら、みんな私を受け入れてくれるだろうか。

テッドは許してくれるだろうか。

またみんなで笑いあえるだろうか。



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