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静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
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「それと、エレナ。ここへ。」


エレナを呼ぶと、殿下は優しくエレナへ声を掛ける。


「エレナ、明日クレアは戻るそうだ。もしそなたが良しとするならば、クレアと共にゴールドガーデンへ行き、クレアの身の回りのことを手伝ってやってはくれないか?もちろん給金は今までと変わらず出すし、手当も付けよう。」


エレナはパッと満面の笑顔で私を見つめ、殿下へ頭を下げた。


「クレア様の元へ派遣ということですね。慎んでお受けいたします。お手当ては特には不要でございます。期間はいかがいたしましょうか。」


エレナは2つ返事でゴールドガーデン行きを承諾してくれた。

王都出身で、ずっと王都で暮らしてきた彼女が、迷わず他所の地へ行くと決めた。

彼女の想いを有り難く受け止め、更に頑張ろうと思う。


「期限は特に決めずとも良い。エレナの都合で問題ない。就労条件はクレアと相談して決めると良い。」


「殿下、何から何までご配慮ありがとうございます。エレナの給金は私が支払います。エレナ、ありがとう。あなたが側にいてくれるなら心強いわ。明日の昼に私は発ちますが、あなたは支度があるでしょうし、仕事の引き継ぎもあるでしょう。整い次第にゴールドガーデンへ来てくれたら嬉しいわ。急がなくとも良いですからね。来る時には連絡を入れてくださいね。」


2人へ感謝をし、支度をとエレナを返した。


まだまだこれからたくさんの壁と向き合わねばならないだろう。今回のようにたくさん泣くこともあるだろう。

悲しみも、怒りも、不甲斐なさや無力感、その他色々な感情もまた出会うだろう。

悪いことも、良いことも、そのときの気持ちも、たくさんの新たな自分との出会いがあるだろう。

あとは政務をこなす上で多くの出会いや別れもあるだろう。

今まで以上に多くのことや人に出会い、成長していけたらと思う。

いつか愛についても知ることができるだろうか。


「殿下、私は殿下のことを尊敬しております。これからもどうぞよろしくお願い致します。」


殿下は困ったように笑い、言う。

「クレア、いつかそなたの心を引き寄せられたらと願うばかりだ。忘れるな。私はいつでもクレアの味方だ。いつでも来るが良い。しばしの別れだ。私の頼みも聞いてくれるか?」


いつも励まされる。有り難い。


「私にできることならば何でもおっしゃってください。可能な範囲でお応えいたします。」


「しばらく会えない寂しさを紛らわせるために抱きしめさせてくれぬか?そなたの温もりを感じたい。男の下心だ。」


そう言って笑う。私もつられて笑った。


「先ほどまでたくさんお胸をお借りしておりましたのに。ではまたお借りいたします。これからも強くいられるよう勇気をください。」


そうして抱きしめ合った。

温かく、そして、人の鼓動を聴くことの心地良さを感じた。


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