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静寂と沈黙の彼方の喧騒  作者: あい。
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道筋をはっきりと示しながら話されるためとても腑に落ちる。腑に落ちるというよりも、心の中に染み込んでくるようだ。


「成果が上がればそう言えるでしょうが、結果失敗してしまったら取り返しがつきません。失敗したら皆が不幸になります。」


募る不安を口に出し、答えを求める。


「そうだな。失敗はできない。だからこそ皆で話し合い、手を取り合い、よりよく前へ進むためにことに当たるのだ。やらなければ現状維持かそれ以下にしかならぬ。成すべきことを模索し、検討し、行うことは尊いことだ。それを1人でやっていくのは危険だが、皆で同じ方向を見据えて歩んでいけば間違いなく現状よりよくなるはずだ。15歳だ。そなたはその歳で自分の成すべきことを考え、行うことを選べた。それは並大抵のことではないぞ。私は15では剣術に没頭して民の暮らしやら国の行く末やらを考えたことは無かった。」


殿下はこれほど人へ気遣いでき、周りのことを考えられるお方であるのに、そんなことは俄かに信じられない。

各方面へのコネクションもかなり強い。

昔から様々なことを成し遂げてきたのではないか。


「クレア、15歳は立派な大人だ。しかし、大人たちから見ればまだまだ子どもなのだぞ。子どもが自分のことをそっちのけで大人のすべきことを成すとは、中々容易なことではないぞ。尊敬に値する。」


殿下は物凄くべた褒めして私を励ましてくれるおつもりなのだろうか。

少しずつまた自信を付けていきたい。

私は1人ではないのだ。

相談できる人もいる。

力を貸してくれる人もいる。


「殿下、なぜ心が弱ると全てが悪い方へ向かおうとしていくのでしょうか。思い込みもでしょうが、色々なことにネガティブな思考となり、自身の無力さや愚かさに自己嫌悪して更に悪い方へ考えてしまいます。これを断ち切るにはどうしたら良いのですか?心がこんなにも暴れることは無かったので初めてなのです。悪い感情に支配されるということが。」


私以外の人々は心が揺れ動いたり、揺さぶられたりすることはよくあるのだろうか。

マイナス思考になることはあるのだろうか。

負のループを突き抜けて断ち切るすべはあるのか。


「それは私も経験していない。そもそも悪いことを考えるということはある種のリスクマネジメントでもある。ということは、そうならない対策も検討可能ということだ。ただ何となく罪悪感や無力さ、愚かさを感じるのは考えるだけ無駄だが、なぜそう感じるのか、考えるのかを掘り下げてみれば、最悪のミスのイメージが出来て対応のしようがあって良いのではないか?

私でもまだ経験していないことを15歳で経験するだなんてクレアは経験値が高いな。ゴールドガーデンの未来は明るいだろう。」


殿下も窓辺に立ち、外の風景を2人で眺める。

往来を眺めているうちに、心が穏やかになってくるのを感じた。


「殿下、私は正しいのでしょうか。」


「それは民が決めることだ。少なくとも、自分ために動く者は多いが、人のために動く者は正義なのではないか?」


「それでは殿下は正義ですね。いつも誰かのために行動されているように感じます。」


「買いかぶりすぎだ。クレアといる時の私はクレアのためと言いながら、あるのは下心だ。そなたに好かれたい。そなたを手に入れたい。そんな自分勝手な理由だ。それにより周りがどう思おうと関係ない。そなたがが楽しめたら、幸せなら、笑ってくれるなら、それが私の正義だ。下心しかないのだぞ。」


ふざけるようにそう言うが、目は真剣だ。



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