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段々と日が昇り、すっかりと明るくなった。
1日が始まるようで、ドアがノックされる。
「クレア様、失礼致します。朝食をお持ちいたしました。」
エレナが朝食を運んで来てくれた。
「クレア様、おはようございます…えぇっ!?目というか、お顔がパンパンにむくんでいらっしゃいますよ?!お加減よろしく無いのでは?医師を呼びましょう!」
私の顔を見るなりギョッとして慌てふためいている。
あれだけ泣きはらしたのだ。
浮腫むだろう。
「エレナ、落ち着いて。どこも体調は悪くありません。体調と言うより、心の方が調子が悪いようではありますが、自業自得なのです。とにかく、病気ではありませんから安心してください。心配してくれてありがとう。いつもいつも、本当にありがとう。」
そう言うとまた涙が溢れてきた。
「…。」
エレナも困惑しているようで、無言だ。
あのおしゃべりの明るく賑やかなエレナが黙ってしまうなんて、よほど困らせてしまったようだ。
「ごめんなさいね、気にしないでください。」
これ以上エレナを困らせてはいけない。
ゴールドガーデンに帰ろうか。
いや、帰れない。テッドの安否も不明だし、私のことを受け入れてもらえないと思うのだ。
「クレア様、私…むくみを取りやすくするハーブティーをお持ちいたしますね。すぐに戻りますのでお待ちくださいませ。」
エレナはそう言って足早に退室し、部屋にはまた私1人になった。
10分程経過したか。
再びドアがノックされた。
ハーブを自分で煎じたりしているのかしらなんて呑気に考えていたら、入ってきたのはマーティン王太子殿下だった。
「クレア、エレナから様子がおかしいと報告があった。どこか具合が悪いか?」
また人に心配をかけてしまった。
しかも殿下はお忙しいだろうに。
私なんかのために駆けつけてくださったのか。
申し訳ない。
また涙が溢れてきた。
泣くまいと涙を堪えるも、次々に溢れるため止まらない。
「すみません、殿下。体調は問題ございません。お忙しいのにわざわざありがとうございます。本当に申し訳ございません。」
そう言いながら泣き続ける私を見て、殿下は何も言わずに抱きしめ、また胸をお貸しくださる。
「クレア、すまなかった。1人にして。今日は一緒にいても良いか?」
優しい声だ。
「いえ、殿下。私なんかのためにお時間を頂くのは申し訳ないです。私は大丈夫です。」
「クレア、謝るな。謝る時に声が詰まり、震えている。そんなに自分を卑下するな。昨日も申したはずだ。私はそなたを愛している。私の愛する者に『なんか』とはなんだ。それに、勘違いするで無い、私がそなたと一緒に居たいのだぞ。ダメか?」




